ヘルシー山賊団
「んふー、ポカポカで気持ちええのぉ」
「だな」
「寝ちゃいそうですぅ」
雲一つ無い快晴。
涼しげな微風を受け、馬車に揺られていると徐々に瞼が下がってくる。
セレナなんか既に船を漕ぎ始めていた。まあ、気持ちは分からなくもない。こんなポカポカした天気、昼寝にはうってつけだ。俺もちょっと眠い、セレナのおっぱいを枕にして寝たいものだ。
旅の仲間にミリィが加わった俺達は、ガロード山脈をゆっくりと登っていた。
山の中腹辺りまで登ったが、今のところ体調不良や魔物と遭遇するなどの問題は起きず順調に進んでいる。危惧していた山の天候も、全く荒れなかった。
「平和ですねぇ」
「平和だなー」
「平和じゃのぉ」
と、三人揃って和んでいる時だった。
突然、ポチが大きく嘶き足を止める。何だなんだと不思議に思って見てみれば、物騒な刃物を携えた野郎共が道を塞ぐように立ちはだかっていた。
「……何だあいつら、邪魔なんだけど」
「何を呑気な事を言っているですか平太さん。あれ、どうみても山賊ですよ、ヤバい奴ですよ」
「なんか臭うのじゃ」
山賊かぁ、やっぱそうだよな。
はぁ、次から次へとめんどくせーな。折角安らいだ時間を満喫していたのに台無しだよ。
「俺達ゃ泣く子も黙るヘルシー山賊団!」
「痛い目にあいたくなきゃ金目の物と女を置いてとっとと消えな!」
「ガキは邪魔だから連れてきな!」
「いや待て、幼女も置いて行くんだ」
「「えっ?」」
ヘルシー山賊団とか、体に良さそうな名前だな。それとどうやら、この山賊の中に一人変態ロリコン野郎が混じっているようだ。見つけ次第駆除しなきゃな。
「うぅーやばいのじゃ、どうするのじゃヘイタ」
柄の悪い山賊に脅えるミリィは、今にも泣きだしそうな瞳で見つめてくる。不安で恐いのか、俺の服の裾をギュッとつまんでいた。
対してセレナはというと、あくびを噛みしめながら耳をほじっていた。俺の実力を知っているからこんな態度を取っていられるのは分かるが、すげー腹が立つな。お前あっちに放り投げてやろうか。
「大丈夫だミリィ、俺に任せろ」
安心させる為にミリィの小さな頭に手を置き、わしゃわしゃと雑に撫でてから馬車から飛び降りる。
ポチが「お前、やれんの?」みたいな若干馬鹿にした感じの目線を送ってきた。そういやお前にはまだ俺の実力を見せて無かったな。
舐められる訳にはいかないので、俺もふんっと鼻で笑い「まぁ見とけよ」と目で送り返すと珍しくポチは「お、おう」と驚いている感じだった。
ふっ、決まったぜ。
「ヘイタは何をやっておるのじゃ?」
「し、見ちゃいけません」
俺はセレナ達を守るように山賊共の前に立つ。すると、彼等は逃げずにノコノコと立ち向かってきた俺の事を指でさし笑い出した。
「おいあの兄ちゃん、この数を相手にやる気だぞ」
「ひゅーカッコイイー!」
「魔物の餌にしてやる」
「抱かれたい」
「「えっ?」」
口を大きく開けて次々に嘲笑してくる山賊共。お前等絶対泣かしてやるから覚悟しておけよ。
それと、一人ホモも紛れ込んでいるようだ、こいつも見つけ次第駆除だな。
「何でもいいから早くかかって来い。こっちは先を急いで……はないな。取り敢えず、そこを通りたいんだよ」
「舐めた事言いやがって、テメエら、やっちまえ!」
「「おう!」」
先頭にいた奴が大声を上げたのを口火に、山賊達が一斉に襲いかかってくる。どれ、少し遊んでやるか。
「おら!」
「よっ」
「死ねえええ!」
「ほっ」
「きえええええ!!」
「ほいさ」
前方から迫る剣の振り下ろしを半身になって躱し、左右から薙いで来る鈍器なような物を、腰を下げしゃがんで避ける。背後から奇声を叫んで斧を振りかざす山賊の足を蹴り上げ転倒させた。
「な、何だこいつ!?」
「強ええぞ!」
今頃気付いても遅えよ。
俺が強いことを知ったのか、怯んで隙だらけの山賊の鳩尾に膝蹴りをぶち込む。
「ぼぅうえ!」
「て、テメエよくも!」
激高して飛び掛かってきた奴に、気絶した山賊を放り投げ、二人もろとも蹴り飛ばした。
「ゆ、許さねえ!」
「おらあ!」
怒声を上げる山賊二人の得物を弾き、驚愕に染まる顔をわし掴む。
「お前等、今から俺の武器な」
「「え、ちょっ待っ」」
腕を振り上げ、掴んでいた山賊をぶん回し、俺を囲っていた山賊共を次々と薙ぎ倒していく。あらかた片付けると、腰を抜かしている数名の山賊共に向かって仲間を返してやった。勿論、ボールのように投げ飛ばしたが。
「う、うぅ」
「痛えよ」
「お母ちゃん、助けて……」
「まっこんなもんか」
起き上がって来ないのを確認すると、パンッと手を叩き一息ついた。
「な、なんかビックリなのじゃ。ヘイタは強いんじゃのぉ」
「ああ見えて腕っぷしだけはありますからねえ」
ああ見えてってのは余計だろ。またアイアンクローされたいのか貴様は。まあ今はそれよりもこっちの後始末が先だな。
「んで、お前等どうすんの?」
「ひ、ひぃいいいいいいい!?」
「有り金全部置いて行くってんなら、見逃してやらん事もないぞ」
「立場が逆転してるのじゃ」
「平太さん悪どいですぅ」
「ヒヒン」
ちょっとそこうるさいよ、今いいとこなんだから黙っててくれないかな。
俺が顔を顰めて脅すように伝えると、山賊達は悔しそうに体を震わしている。
ん?戦るつもりなのか?
「「す、すいませんでしたぁああああああああああああ!!!」」
「お、おう」
やり返してくるのかと思っていたら、突然全員揃って土下座してきた。
何だこいつ等、変わり身早えーぞ。山賊としてのプライドはねーのかよ。
「へっ、そんなものとっくに野良犬に食わせましたぜ」
「いやーお兄さんがここまでお強いとは思いもしませんでした」
「ホントホント、まさに鬼も裸足で逃げるってやつですね!」
「その通りだ!」
「「あっはっはっはっは!!」」
「つー事で、俺ら帰りますんで、どうぞ通って下さい!じゃあ、お達者で!」
「おい待てこら」
「うげっ!?」
逃げようとする山賊の首根っこを掴む。笑って誤魔化してトンズラしようとしてんじゃねーよ。ただで帰す訳ねーだろうが。
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