遠話?電話?
〜篠崎卓弥 視点〜
今家にはフィオちゃんとルイとエリーしかいない。本来は隆司が居るはずだったんだけど、就活対策の面接があるとかでどうしても全員家を出なければ行けなかった。
かといって、こっちに来てまだ1ヶ月ぐらいのあの3人を放ったらかしにしておくのはいろいろとまずいから、講義終わりに速攻で家に帰る。
「ただいまっと」
「あ、タクお帰りなさい」
玄関に入るといきなりフィオちゃんが待っていた。…いや、なぜか電話を片手に持ってる。
「あ〜代わるわ」
「お願いします…」
電話の取り方とか知ってたか?とか色々思う事もあるけど、とりあえず代わっておく。
「もしもし?お電話代わりました」
「わたくし、東和教材の者です。そちらに…」
「いらねぇよ!」
相手が話してる途中だったが無視して電話を切る。こういう奴の話は聞くだけ無駄。
「えっと、まだ話してる途中みたいでしたけど」
「いいのいいの。ああいうのは百害あって一理なし」
「意味はよくわかりませんけど…わかりました」
まだ文字を覚えてるとこだし、こっちの諺とか言ってもわかんないだろうな。
「それよりも、電話の取り方知ってたっけ?」
「電話というんですか?リュウがやってる事を真似しただけなんですけど」
いつまでも玄関先にいても仕方ないし話ながらリビングへと向かう。
「成る程な。でもこっちの事分かってねぇと詐欺に遭うかもしんねぇから、俺らが居ないときに電話には出なくてもいい」
「分かりました。気をつけます。…あの、これは電話というんですよね?」
「そうだな」
「さっき話を聞いていた人の声、全く知らなかったんですけど」
そりゃぁそうだろうな。隆司や由希や春香ちゃんはわざわざ家電にかけてこないだろうし。
「まぁ、電話ってのは番号さえ分かってれば、遠くにいる知り合いでもない奴からでもかかってくるからな」
「遠くの人と話す。…遠話の魔法みたいですね」
魔法ってのも便利そうなもんだな。
「魔法ってのがよくわかんねぇけど、似たようなもんだろうな。媒介が魔法か機械の違いだけだ」
「でも家にしかないのは不便ですね。持ち運ぶには重そうですし」
「いや、こんなのもある」
フィオちゃんに見せるためにポケットからだしたのは、勿論携帯電話。金がかかるから最新のとまでは行かないけど、それでもまだ新しいやつだ。
「これは?」
「携帯電話っつってな。持ち運び出来る電話といろんな機能のついた機械だ」
フィオにスマホを見せる。貸した所で使い方なんて分かんないだろうし。でも1度くらい試させてもいいか。
「試しにかけてみるか?」
「いいんですか?」
「ああ、でも電話に出れるかわかんねぇから、全員にかけてみるか」
誰が一番出れそうか考えてみて、始めは由希が出れるんじゃないかという結論に至り、電話帳を開いて由希にかける。
「ほら、耳にあててみな。」
「はい。……あの、誰もでませんよ?ずっと音がなってます」
そりゃぁかけて直ぐ出れるほど携帯いじってるわけじゃないだろうしな。出ない可能性もある。
「もう少し待って、それでも出なかったら次は隆司にかけてみるか」
「はい、…………」
『もしもし?卓弥どうしたの?』
「本当にユキがでました!」
『え?フィオ?なんで?』
くくっ、そうとう慌ててるな。俺の電話からいきなり、それもフィオちゃんが出れば驚きもすると思うけど。
「よっ。フィオちゃんが電話知らないつーから、試しにかけさせてみたんだ。てなわけで、フィオちゃんと話してやってくれ」
『それはいいんだけど、メールかなんかで連絡しなさいよ』
「んなことしたら驚かないだろ」
『驚く必要がないわよ。…まぁいいわ。フィオに代わって』
わかった。といってフィオちゃんに渡す。
「えっと、本当に声が届いてますか?」
『もちろん。それでどう?初めて電話使った感想は』
「さっきも思ったんですけど、凄く声が聞こえやすいです。全然疲れませんし、遠話より便利だと思います」
『さっき?』
あの電話についてのことだろうな。…1度全員に話した方がいいかもな。
「フィオちゃん」
少し呼んで由希に伝えて欲しい事を伝える。
「わかりました。あの、ユキ。“その件については夜に集まって話す。”だそうです」
『そう…わかった。あたしはもう終わったしこれから帰るよ。じゃぁ』
由希が電話を切ったのを確認してフィオちゃんに隆司と春香ちゃんにもかけてみるかと提案する。
「ご迷惑でなければやってみたいです」
というわけで2人にも電話をしフィオちゃんに体験してもらう事にした。




