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俺はお嬢様が恋をしたことに気付いていない  作者: 海原羅絃
第2部 第1章 進級と記憶とお嬢様
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第二話 再会

 春があければ夏が来る。夏があければ秋が来る。秋があければ冬が来る。

 そして、冬があければ春が来てまた夏が来るというこの四つのパターンは今も変わらぬまま。

 春が来れば、出会いもあり、別れもある。

 それは、回避せぬ出来事でもある。

 時は四月の七日。これぐらいの季節になると、大抵の学校などは入学式というものをとり行う。

 しかし、在校生にとってはあまりうれしいものでもない。

 どちらかと言えば新入生。

 胸を膨らませ、新たな地へと踏み出す。

 真新しい制服に身を包めば君も今日からこの学校の生徒となるなど、最初は優しそうに見える校長もそう言うはずだ。

 でも、新しい出会いだけが春だけではない。

 別れもある。

 別れと言っても色々なパターンもある。

 それぞれの道を歩む人もいれば、歩まない人もいる。

 人生に日常の二文字がどれだけの意味を持っているのか。

 俺はそれを知らない。

 たとえ経験していようと、俺の眼の前にあるものはすべて非日常でしかないと思う。

 すぐ傍に、あいつがいても非日常。

 しかし、あいつがそばに居なかったらそれは何と呼べばいいのか。

 現実?幻実?果たしてどっちなのか。

 知る者は誰も居ない。

 知っている人はいないはず。

 これから何が起こるかすらわからない。

 俺はそんな風に思いながら、春一番の風が吹き付ける笹野川学園の正門に立っていた。

 今日は入学式と始業式を兼ねた日。

 在校生は午前の11時に登校し新入生はその前に入学式を済ませる。

 本来なら、二年生になったところで大体のイベントと言ったら転校生が来るだとか担任が誰とかになるわけだけれど、わが学園には何と、世には珍しいクラス替えというイベントが存在する。

 というわけだから俺は今生徒昇降口横に張り出された大きな模造紙に記載されたクラス表を見る。

 ほとんどの場合、と言っても漫画の中での話だけれど一年の時に大いにかかわってきた人たちと同じクラスになるとか・・・・・・

 「・・・・・・・・」

 案の定、間違いではなかったようだ。

 俺のクラスは一組だ。

 しかし、その下、その上をご覧いただけると分かる。

 「あ、いたいた。・・・・・・おい、何ぼさっとしてんだよ。教室に行くぞ」

 見間違いではないかともう一度クラス表を見ていると、後ろから袖を引っ張られる感触が伝わった。

 どうみてもこの声、これはやつ以外何物でもない。

 「どこ行くんだよ!!」

 「教室って言ってんじゃねえかよ。同じクラスだから別にいいだろ?」

 「だからってもう少し遠慮っていうものがいるだろ?なんで人がじっくりとクラス表を見ているところを邪魔するんだよ!!」

 悪友、俊哉は聞いているのか聞いていないのかわからない素振りをしながら俺を引き連れて教室へといった。

 とりあえずクラスのやつらの名前とかは把握できたし、あの部活の全メンバー(・・・・・)もそろっている事だし、今年は今年で色々と忙しくなりそうだな。

 しかし、階段も上らないのになんでこんなに教室につくのが遅いんだろうか。

 そんな風に考えていると、教室へと到着。

 俺は俊哉に引っ張られてきただけなのでそこまでつかれていない。

 しかし、俊哉に至っては息がかなり荒い。マイコ・・・プラズマ何とかになってもおかしくないくらい咳をしている。

 「ほれ、ついた」

 「着いたじゃねえよ!!」

 結局何がしたかったのか俺にもさっぱりわからない。

 「で、何がしたかったんだよ」

 「いや、知らない間にインキャラになってしまった蓮司君を助けてあげようと、すこしでも友達と多く話せるためここへ着させました」

 達成感たっぷりで言われるとさすがにむかつく。

 「でも他のやつらはいるんだろ?」

 「もちろんさ、今年のクラスもなかなかいい方だと俺は思うぞ。利華と一緒なだけでも俺幸せだからな」

 「よかったな幸せで」

 俺は今幸せになってもそうは感じないはず。

 俊哉を責めるわけでもないが今はそれなりの原動が足りていないという事になってしまう。

 全メンバーがいるという事は・・・・・もちろんあいつも名前には入っている。

 「こんな所でも立ち話はなんだからさ、教室に入ろうや」

 俊哉がそういうのと同時に俺は俊哉に背中を押され、教室へと足を踏み入れた。

 ここでなら、ドアのひく音が聞こえ、教室にいる生徒の視線がその線へと蹴られるという何とも悍ましい事を想像してしまう。

 「いいから早く行けよ。俺も寒くてたまらねえんだから」 

 背中をおされ俺は教室へと入る。

 その中はとても新鮮で同じ普通教室とは思えないくらい弾け立つ物が違かった。

 ちなみにこのクラスのメンツはほとんど顔を知っている。

 だから、クラスが違くてもそれなりの顔を見る。

 俺は自分の席の番号へと席に着く。

 始業式が始まるまで、残りわずか。俺はその間ぼうっとしているのであった。






 



 ◇








 放課後、昨日同様に俺は病院へと足を運んだ。

 学校帰りは今年度一回目となる。

 それまでは空いている日になったり、休日などに行っていた居たのに今日にいたってはとなっていた。

 ロビーもそこそこ人がいて俺は、すでに暗記した鈴川のロック番号などをいちいち受付で教えてもらわずにエレベーターに乗る。

 鈴川のいる病室へと向かおうとするが一つ思い出す。

 「そういや、今日集中治療室だったな」

 週に一度、集中治療室で検査を受けている鈴川。

 今日はその日であるため、病室に戻ってくるのは今日の夜辺りだろう。

 俺はその間、待っているか帰るかだな。

 けれど、俺は当然、帰らない。

 少しでもあいつの顔が見たいから。

 いつ目が覚ましてもいいように俺がそばにいてやらなければならないと思ってしまう。

 毎日来るのも図々しいように見えるけれど俺の精いっぱいの行いだ。

 とか考えながら歩いていたためか本来行くはずであった集中治療室とは違う、鈴川の病室へと来てしまった。

 はて、どうするものか。

 このままめんどくさいから病室で待っていれば夕方には来そうだけれど・・・・・・・

 面接時間も決められているからそれを考えれば今日は退散した方がよさそうだな。

 ドアの前で立ち尽くしていた俺は帰宅しようと踵を返すと・・・・・・・・

 一人の少年と目があった。

 この場合、同年代と的確に表した方がいいのだろうか。

 いや、名前の方が的確か。

 「久しぶりだな・・・・・獅子堂」

 「まだ二か月ちょっとしか経っていないけれどな」

 相変わらずの表情で話す獅子堂。

 獅子堂玲音、鈴川の元クラスメイトであり、元彼。

 そして、俺と戦った相手でもある。

 「・・・・・・まあ、こんなところで立ち話もなんだから屋上行くか」

 「・・・・・・」

 あまりの驚きの展開だったのか、俺は静かにうなずいた。

 六階建てのこの病院は大学附属であるため、それなりの敷地も存在する。 

 ぶっちゃけて言えば、笹野川学園高等部の敷地のおよそ三倍はあるだろう。

 その一角にある、屋上へと俺らは足を運ぶ。

 俺たちがいた階は二回の中央棟。屋上はここから階段を経由していけるが、手軽さを求めて六階までエレベーターで行く。

 そこからは階段を経由していけば着く。

 屋上は、夕暮れの日に染まっていて、あと数時間、数十分としないうちに日が沈むだろう。

 「向こうの学校はもう入学式は済んだのか?」

 フェンスに寄りかかっている俺は空を見ている獅子堂に聞く。

 あれ以降からこうして親しく話す自分もまさかこうなるとは予想もしていなかったのは誤算であったのだろうか。

 「昨日始業式で今日が入学式。在校生はどうせ暇になるから今日は自由。で、昨日の夜の便でこっちに来た」

 えらい急な話だな。

 でも、大富豪の息子であるこいつならやりかねない事の一つでもあるからな。

 「最近調子はどうなんだよ」

 神妙な表情で聞いてくる獅子堂。

 けれど、どうにもこいつの言葉の意味が理解できない。

 最近調子はどうと言われても普通としか答えようがない。

 「あれからってなんだよ」

 「あの日からに決まっているだろ」

 あの日、2/14 バレンタインデー。そして・・・・・・・・

 「その顔を見れば相当しんどかったようだね」

 どうやら、今俺がした顔をはそういう風に見られていたらしい。

 しんどかったか・・・・・・・

 確かにあの日以降、俺は身も心もボロボロの状態だった。

 何が起こったのか、いったいどうなったのか掌握できないでいたままだった。

 それでも後後気付いたことで、今でもわかるのはあの時、鈴川は俺に何を言おうとしたのか。

 そして運転手を盛大に殴りたかったこと。

 でもどちらも知ることはできないままだった。

 運転手の方は脳挫傷で即死。

 運転手も懸念の判断で避けたのだろうか。

 警察の調べによると、居眠り運転で事故を起こす寸前に起きてハンドルを切ったらあの電柱に突き刺さった。

 ようは、居眠り運転という訳だ。

 「正直おれも今は現実を受け止められない」

 こいつも同じのはず。

 でもそう言えるのなら何をすればいい?

 まだ意識を失っている状態、半ば植物人間だ。そんな人をお前は大切にできるのか?

 なんて聞かれているようなことだ。

 「俺はまだやり残したこと・・・・・・そんなものがある」

 「やり残したことね・・・・・・・」

 どうしたんだ。なんだか獅子堂もさえない顔をしている。

 やり残した部分に何か引っかかりが感じるのだろうか。

 「そういえばお前にいわなきゃいけない事が在った」

 思い出したように獅子堂は拳に手をポンと置いた。

 「いいか、よく聞けよ。俺は一度しか言いたくないからな」

 勿体ぶるのはあまり悪くないようだからな。

 「鈴川は、意識戻っても・・・は戻らないかもしれない」

 「・・・・・・・」

 この言葉で、俺はこれから鈴川と接せればいいのかただ呆然とそこで立っているだけだった。

 

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