第十二話 定めそして・・・・・
気づけば60回も掲載していたんだ。
ってか読み直していて間違えたところあったから直そうと思っていてもどこだかすぐ忘れるパターンww
どうしてこう、女子という人物はバレンタインというイベントを迎えるとこうも迫力のある行動などに突破散るのだろうか。
女の子ではない俺には分からないけれどそれなりのプライドというものもあるのだろうか。
意中の男の子がいる女子にそれなりのライバルがいるのなら闘志はわく・・・・・はず。
けれど意中の男の子に一途でいて尚且つライバルは存在しないという点でも女子はそれなりに燃えるのだろうか。
その点については俺は何とも言えない。
だからこそ、それぞれの男性を思う女子は仲間どうしで普通チョコを作りあうのではないのか?
それぞれの人の好みに合わせて。
だけれど、その好みが分からなかったと考えたとする。
その時のパターンが俺の頭の中から浮かんできた。
①渡す本人に渡すことを知られてもいいから、どのようなチョコがいいのか聞く。
②友達経由でその人の聞くことになる。(しかし聞きに行くのを男友達であった場合、その時は尚更彼女がいない人だった場合、それなりの誤解を招くことになる。)
③好みなど聞かずに自分なりのチョコを作る。
④渡す人の家で泊まり込みでチョコを作る。
何故だろう。④の考えが自然と浮かんだのは俺の気のせいか。
にしてもこのパターンは俺の脳内での細胞がぐちゃぐちゃとひねりにひねったもので考えられた。
だから実際に女の子がそんなことを考えてはいないことも有るという訳で・・・・・・
にしても④はやはり実際に起きている事だからなのか。
・・・・・・・・
「なぁ、本当に俺ん家で作るのかよ」
台所でカタカタと音を立てている人物に声をかける。
もちろん俺の家には俺しかいない。たまに兄さんが帰ってくる程度。
けど、めったに帰ってこない兄さん以外に誰がこの家に転がり込んでくるかって?
俊哉だった場合まず決定的にありえない事が在る。
一つは台所に立たない事。
そして俊哉が俺ん家に来ると絶対俺はこんなに退屈そうにはしない。
なんやかんやであいつは暇つぶしに面白いゲームを持ってきてくれるから。
だとしたら誰かって?
決まっているだろそんな事。
神様の悪戯でも何でもねえよ。
だって玄関で出会って以降、30分くらいたっているぜ?
帰ってきたのが六時。
今はもう定番のニュース番組はやっているけれど今日は視る気分になれない。
見てもどうせバレンタイン特番とかその辺だろう。
俺には無縁なのかはたまた鈴川が俺の家にいる時点でそのジンクスは崩されたのか今は分からない。
とりあえずこの沈黙をどうにかしてほしい。
だってここ最近喋っていないんだぞ?どうすればいいんだよ。
鈴川も鈴川でよくそんな現況で俺の家に来れたよな。
てっきり獅子堂の家に来たと思ったのに・・・・・・・
「ついでに夕飯も作ってあげる?」
それは実に何日ぶりなのか俺は久しぶりに鈴川の声を聞いた。
べつにびっくりしたわけでもないけれど過剰に反応してしまったのは話していなかったせいなのか。
なんとも可愛らしいひよこの絵がプリントされたエプロンを着用していて何を言う。
鈴川の料理スキルを考えればまず俺が昇天を余儀なくされる。
でもチョコを作る時点で何かおかしくないか?
「そこまでしなくてもいいよ。でもなんで俺んちでチョコを作ろうと思ったんだよ」
念のため。
まさか俺の脳内で構想された四つのパターンの最終パターンだったらどうする?
ってか今の状況からしてもう④のパターンしか見えねえだろ。
そう思ってくると身震いがしてくる。
「別にいいじゃない。私がどこでチョコを作ろうが」
鈴川はああ答えるけれど実際は嘘をついていない。
何故ならあいつんちの厨房は誰かさんによって再起不能になってしまったからである。
本来なら賀川の家などでやればいいだろ?とか言うけれどなんだかややこしい事態に起こりかねないので言わないでおく。
まあ俊哉も俊哉で何気楽しそうだったからな。
「それよりもよくこんな高いチョコ買ってこれたわね」
「それ高かったからそのまま渡すなよ」
敢えて、誰とは言わずに。
「わ、私はそのままでなんて渡さないわよ。ちゃんと工夫して自作をその人に渡すわ」
何というか。初心というか可愛らしいというかこいつには似合わない表情をする。
頬を染めた鈴川を見るなんて久しぶりなもので。
もうここまで来たら一目瞭然。
俺でも信じられない事だけれど本当にいいんだろうか。
俺は今獅子堂とは戦いをしている。
こいつをかけた戦いを。
何とも人をかけに持ってくるのはさすがに悪いけれどこれが現実だ。
しかも・・・・・・
鈴川の初恋が俺というのは果たして本当の話なのだろうか。
一見嘘にも見える。
しかし、いくら言葉がウソのように聞こえても獅子堂の目を見る限りまんざら嘘でもないように見える。
会話が途切れ洗い物などの音が聞こえる。
おそらく俺の夕飯を作ったのだろうか。
また、チョコを作り終わったのかその材具を洗っているのかもしれない。
そんなことを考えていてもどうしようもできない。
ただぼうっとしているだけ。
そんなとき、携帯にメールの着信が来た。
携帯を開くと、俊哉からだった。
【件名:どうだ?】
【そっちはどんな様子だ?こっちはこっちで凄い。いや、チョコじゃない。利華が学校では見せてこない仕草をするんだぞ!!】
・・・・あっそ、
ってかそれがどうした?
というか賀川が学校では見せてこない仕草ってなんだよ。
どのみちお前にしかわからないだろ?
頭を押さえていたら再び俊哉からメールが届いた。
【件名:ところで】
【で、蓮司の方はどうなんだ?】
どうもしない。何のイベントも発生しないですよ。
お前は何を求めているんだか。
イベント・・・・・・・・・・・・ね。
ソファに頬杖をついている俺の口からはため息という疲労感が出てくる。
横目で鈴川を見ればまだ台所にいる。
鼻歌しながら火などを扱っている。
時間がたつにつれていい匂いが俺の鼻に入ってきた。
もしかして・・・・・・・本当に作れているのか?
だとしたらそれは奇跡に近いぞ。
でもこんなところで奇跡を使って神様は怒らないのだろうか。
そう思って立ち上がると鈴川の前には鍋がありそこにはビーフシチューらしき食べ物が。
・・・・・・・マジかよ。
あの鈴川が・・・・・・・
すると、こっちに気付いた。
「何よ。変態」
料理を作っているところを見ただけで変態よわばりされた人前へ出てきなさい。なんていう(アナウンスが脳内で響いている。
正直今のは痛かった。
でもあの鈴川が料理しているんだぞ?
チョコならまだわかるけれどビーフシチュー。ビーフシチューだよ?
ハヤシライスではないからな。
そんな鈴川を見て俺は動揺を隠せない。
動揺しかまずないんだけれど。
「さっきから見らているとやりにくいんだけれど」
「・・・・・ああ、悪い」
思わず立ち上がっていた俺は再びソファに腰を掛ける。
うーん、これは何なのか。
「お前って料理出来たんだな」
「失礼なこと言うんだね。私は料理ができるようになりましたわよ」
そりゃそりゃ上昇したもので。
「でもいいのかよ。チョコづくりならまだしもこんなおいしそうな物まで御馳走になって」
「だって私、今日はここで瀬原君の家に泊まるのよ?お客ならばそれくらいの振る舞いはしなきゃ」
前回来たときは明らか逆の立場だったけれどな。
でも本当人間変わる時は変わるよな。
半年でこんなに上達するんだ。
「まあ、私の手料理で死なないでね」
どんだけ殺人能力高いんだよ。
普通だったら気絶とかだと思うんだけど。
「じゃあいっただっき・・・・・」
まーすと言いたいのだけれどその前にスプーンをひったくられた。
・・・・・・・このパターンは前回もあったような内容な・・・・・
あったのなら夢の中としておこうかな。
そのひったくられたスプーンの持ち主は鈴川。
この状況は・・・・・・・・・・・
「はい、あーん」
「・・・・・・・・・」
とりあえずどう反応してかいいか分からない。
でもここって反応するところ?
「まてっ、これはどういうあれなんだ?」
本来言いたい言葉が出ない。
あれとはつまりあれだ・・・・どういったシチュエーション?
そう、それだ。
「あら、どっからどうみても『はい、あーん』でしょ?」
「その言葉から俺はどう解釈すればいいんだよ」
「大丈夫、あなたなら理解できるわ」
「無理だ」
「私はあなたを守るもの」
「セリフぱくったよね?思いっ切りぱくって来たよね?」
とりあえず碇シ〇ジ君に土下座しろ。あとファンにも。
「という訳だからはい、あーん」
今ので解釈なんてできるわけねえよ!!
とりあえず何回目か分からない俺の断末魔が、今度はリビングから解き放たれた。
ああ、死ぬかと思った。
とりあえずあのビーフシチュー一杯まるまるあいつの手で食わされるなんて・・・・・・
人生一生の不甲斐なきこと・・・・
俺はソファにぐったりと倒れこみ、静かな空気の余韻に浸っている。
鈴川というと、洗い物をしている。
チョコ制作の方は一段落したらしい。
あとは水曜日か木曜日に最終段階に入るとのこと。
ロボットの制作をしている人に見えてきたのは気のせいなのか。
まあそれはないだろう。
とりあえず俺はテレビをつけ、それなりの番組を見る。
再び俺たちの間に沈黙が流れる。
うう、ここでまた会話の話題を出したいところなんだけれど・・・・・・
一体何を話せばいいんだよ!!
なんだ?思い出話でもしてろってか?んなもの一番禁題なことじゃねえかよ。
鈴川から切り出したとしてもましてや俺からなんて・・・・・・
いや、でも俺から切り出さなきゃいけないんじゃないのか?
こうして自然と思い出話に浸っていき、徐々に鈴川の初恋の人物を聞く。
うん、我ながらいい作戦だ。
ん?でもストレートでもいいな。
わざわざ遠回しに聞いたらかえって不自然だしな・・・・・
難しいな。会話って。
あほなやつとは毎日やっているけれどこうして真面目な人となると余計だ。
「な・・・・・なぁ」
「どうしたの?」
やべ、ストレートに来ちまった。
・・・・・こうなったら。
「お前ってさ、初恋の男子とかいなかったりとかしなかったのか?」
「・・・・・急にどうしたのよ」
「いや、なんかチョコ作っているところを見る限りあまりにも緊張してなさそうに見えるからさ。中学校時代の女子なんてみんな男子にチョコを渡す人が初めてのやつが多くてさ、なんだか顔が強ばったような感じになるんだよ」
嘘ではない。
単に経験を織り交ぜたことを言っただけだ。
これで鈴川がどう反応するか。
「そうね・・・・・私には初恋の人がいたわ」
洗い物をしていた手が止まり、鈴川は手を拭き始める。
「そのひとはどこからどう見て優しくて、でも時には優しすぎて誰かを自分の身で守ろうと必死となる人。けれど・・・・・・何も言わずに遠くへ行ってしまった人物でもあるの」
チクリ。
俺の胸に棘が刺さったような感触が伝わった。
引っ掛かりがある。
鈴川の言葉に間違いがある事ではない。
その逆。
あまりにもつながっているようで気持ちが悪かった。
誰の事なのかも鮮明には分からないものの知っている人のようで心残りがある。
一体誰のことを云っているのか。誰に向けていっているのすらごちゃ混ぜになってきた。
まるで自分に言っているのかのように
「こんなさびしい話をしていてもあれだから今日はもう寝ましょう。さあ、さっさとお風呂入ってきなさいよ」
分からなかった。ただそれだけのこと。
風呂に入ってもそのもやもやは取れず上がればさらに湯気が立つようにモワモワとしてきている。
一晩寝れば何か分かるのか。
決してそうでもない。
決してそういう風に感じられない気がする。
鈴川が隣で寝ていれば尚更。
一緒の布団でなくても同じ床で寝ているのだから。
はたしてこのもやもやは一体いつになったらとれるのだろうか。
そして、答えは・・・・・いつ知るのだろうか。
人生の蓮を司る日はいつになるのだろうか。
蓮と”定め”は何の関係もありません。




