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俺はお嬢様が恋をしたことに気付いていない  作者: 海原羅絃
第4章 クリスマスとお嬢様
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第四話 多彩な人々

第一章第一話を加筆いたしました。

 冬の早朝の朝日が俺の瞼を照そっとらしつけた。さすがにこの時期になると起きるのも辛くなってくるは嫌でもわかる。

 こうして目覚まし時計が鳴り響く中目を開けるのがやっとで体を起こすなんて後何時間たってからじゃないと起こせる気がしない。

 とか言っても時間は待ってくれない。

 そうしているうちに時刻は六時半を少し回ったところ。

 もうすこし遅かったら弁当を作る時間が確保できないところだった。俺は、眠たい目を擦りながらリビングへとおきる。

 ひんやりとした空気がリビング一体を駆け巡っている。

 暖房もついていないのでかなり寒い。

 窓も凍っていて結露するなんてことはおそらくだいぶ先になってからじゃないだろうかと思わせるくらいかちこちになっていた。

 めんどくさくも暖房のスイッチを入れ、朝ごはんを作るのと並行して俺は自分の弁当箱を出す。

 最近バイトを始めたせいか、寝不足気味な気がする。冬にこうやって眠くなることも有るだろうけれどなんか瞼が予想以上に重い。

 気分としては二度目をすこぶるしたい気分。

 けれどやるべきことがたんまりとあるのでそれが優先だ。寝るなんてやってられない。

 冬だから温かいものを食べたいところだから最近凝っているわかめスープの素を出してアツアツのお湯があるかどうか確かめる。

 そのあと冷蔵庫からご飯を出して電子レンジに入れて時間を設定してから温める。

 その間にいつも使用しているお弁当箱のふたを開け何を詰めようか迷う。

 正直詰められるようなものは今存在していない。

 別に断食とかそんな様な事はしていない。ダイエットでもない。ただ弁当を作るにあたっての材料が今家にない事が問題なのである。

 バイトを始めてまだ一日だけれど昨日は帰って来てからそのまま寝てしまった。これが続けば流石に買い物なんて行く時間も十分に確保できないだろう。そうなればコンビニで焼却寸前の弁当をもらう羽目になる。

 別にそれでもいいんだけれどそれが逆に長続きすると栄養が偏って大変なことになりそうである。

 とりあえず今日も学食で我慢するか。

 買い物は・・・・・・確か金曜日がバイト休みだったからその日に買い物に行けばいいか。

 今日が水曜日だという事を確認して俺は取り出したお弁当箱を仕舞った。

 わかめスープの素をお椀に入れ、お湯を注ぐ。

 わかめの匂いが鼻を通していい匂いを漂わせる。

 温められたご飯も適当におにぎりにして俺はテーブルへと持っていく。

 朝から質素であるが朝からカップラーメンといった食事よりはたいそうマシだという自信がある。

 「いただきます」

 両手を合わせて感謝の気持ちを込めて俺はおにぎりにぱくつく。

 塩だけというおにぎりだけれど案外これもうまい。これに他の具とか混ぜ合わせればさらにおいしいんだけれど。

 そんな気持ちを抱きながらもわかめスープを一口飲む。

 そういえば今日ロングホームルームがあったっけ。

 クリスマス会の事だとかなんとか話し合うとか言っていたような気がする。

 その日はなんとか休みにしたいな。

 確かクリスマスの日って休日だったような。

 携帯に入っているカレンダーで確認しようとしたら軽快な音が流れた。

 メールが来た時の通知オンに設定されたメロディだったのですぐさま通知バーを見ると鈴川からだった。

 朝からくるってなると相当な事なきがするんだけれど。

 恐る恐る受信画面を開いて俺は内容を確認する。

 【件名 クリスマス会】

 【本日の放課後、クリスマス会について話し合うわ。決定事項だから欠席はおろか遅刻早退も許されないわ】

 無理難題を押し付けられた。

 そういやこいつ俺がバイトしているっていうこと知らないんだっけ?部活の事も計算せずにシフトを入れなきゃよかったなんて今更後悔できない。というか部活の有無なんていつも適当なのにどうやって合わせるんだよ。 

 とりあえず適当は返事で俺は携帯を操作し送信する。

 そしてすぐさま返信メールが。

 【件名 Re Reクリスマス会】

 【瀬原君て日本語が読めないのかしら?決定事項だから欠席は絶対できないはずだって私は言ったはずだわ】

 言ったんじゃなくて文面でうったんだけれどな!!なんて些細なことを指摘したとしても意味がない。何が何でもバイトを優先しなくてはならない。

 しらばっくれてこのまま無視しようか。いや、それは一番やってはいけない選択肢だ。

 何せメールの相手はあの鈴川だ。俺以外の男子にメアドを要求されても断り続けてきたあの鈴川だぞ(俊哉情報)そんな奴のメールを俺が無視なんてしたらあいつがいう事なんて決まっている。

 第一候補として昼の放送で「瀬原君が破廉恥なメールを送り強要された返事を送っても無視されました」「瀬原君が私を嫌いだと言ってメールを一方的に無視してきました」

 ・・・・・・いや、俺が考えること全部が第一候補だな。そもそもあいつの言う言葉は大体俺にしてもいない事やしてもいない罪を擦りつけている。

 今度あいつのアドレスを変えるときにデビルとかサタンとか分かりやすいものを入れてやりたいくらいだ。

 そう思っていたらまた鈴川からメールが来た。

 【件名 趣味が悪いね】

 【瀬原君てまさか中二病だったりする?だとしたらいい小児科医を紹介してあげるわよ】

 こいつ中二病を本気の病気だと思っていやがる。まあ、便宜上、治療法など一切存在しない謎の病気だからな。怖いものだ。今の医療技術じゃ解決できないものもいっぱいある。

 ってか小児科行けば治るもんだなんて知らなかったな。

 んなわけあるか。

 お遊びはここまでかな。そろそろ学校に行かなくてはならない時間だ。鈴川には悪いがお前がいくら車でも俺は一般庶民だから毎日来るまで送り迎えで学校に行くなんてリッチな事なんてできねえからな。

 なんて心の中で訳の分からない事を語りいつも履いている靴を履き、ドアノブをひねるといつもと見慣れない光景がそこにはあった。

 「これでゆっくりとお話しできるわね」

 間違いなくこれは作り笑い。唯一判断できるのは俺だけかもしれない。自慢じゃないけれど。

 けれどこの顔は間違いなく何かあるのサインだ。

 ああ、穴があったら猛烈に入りたい。違う意味で。 

 結局俺は鈴川の家のリムジンの中で始業開始ぎりぎりまで街をぐるぐるとまわって鈴川の詰問にめんどくさい顔させてもらえず嫌な思いが記憶にさらりと残ったのだった。








 その日の五時間目。全学年共通してロングホームルームの時間がある。

 毎月この時間に何をすればいいのか、各学年で決められたりもすれば、決められず自由な時間になる時もある。

 一年生はどちらかと言えば後者だ。決められたことをやるよりきめられたこと以外、つまりは自由時間の方が多いわけだ。 

しかし、三年生はセンター試験に向けて準備があるので俺たちも二年後には同じ道を歩むことになる。

 嬉しいのか嬉しくないのかとりあえず早く終わってほしいと思いがなぜかいつも以上に込み上げられていた。

 「さあ、みんな、クリスマス会の準備はいいか!!」

 「いぇーい!!」

 なぜかクリスマス会をやる事に既に決まっていたようだ。

 担任の上尾(通称、アゲセン)がかなりの放置プレイでいると思うんだけれど。職員会の方では通っているんかよ。

 それに俺の記憶では前回のロングは作文書くだけで終わったような気がするんだけれど気のせいであるのかそうでないのかさっぱりと分からない。

 こういうと事が団結力がいいのかどうか分からない。

 「それじゃあ大まかな日程は鈴川さんの方で決めてもらったから」

 鈴川も春富と同じ立場なのかよ。

 鈴川が丸まった用紙を持って教壇の上へあがろうとすると、クラスの男子から何回や歓声が聞こえた。

 「待ってました瀬原の嫁!!」「鈴川さんは瀬原と過ごさないの?」

 他にも25通くらい俺の耳まで聞こえてきました。どこからそんな情報を流したのだろうか検討をつこうと思えばつける。 

 しかしもう手遅れだ。

 さすがに鈴川の話となると全校に伝わるのは時間の問題。

 ああ、先が思いやられる。

 ちなみに張り出された当日の日程はごらんのとおり。

 『12/25の夕方四時から夜の八時までクリスマスパ-ティー。午後の一時からクリスマスツリーなどの飾りに料理作る人とグループに分かれての活動。

 三時半には一通り終了。それから休憩などを挟んで上記の時間からパーティーを開始。

 持ち物はクリスマスプレゼントに係で必要なもの』

 と書かれていた。

 なんとも言えない計画表。午後の一時からパーティーの準備となるとほとんど半日働く状態になるという訳か。

 重労働なのか果たしてそうじゃないか。

 俺の役割にもよるな。

 「という訳だけど異論ある奴はいる?」

 委員長の春富がそう聞くが異論を出す奴は誰ひとりいない。という事は満場一致でこの案は決定だ。 あとは役割分担と言ったところか。

 「それじゃあ、役割分担をしたいと思いまーす」

 ずいぶんとマイペースだな。

みんなクリスマスとなるとこうも興奮するのか。

 役割分担と言っても料理できるやつ出来ない奴を分ければいいだろ?

 なんて言ったら料理グループが男子俺だけになっちまう。

 別にハーレム狙いそんなこと言ったわけじゃないぞ。

 たださえ鈴川の事で学校中広まっているのにまた変な噂が広まったらどうするっていうんだよ。

 責任とれる奴なんて絶対存在しねえ。

 「じゃあ、料理係の係長は瀬原君でいいわね?」

 「いやいや、よくねえだろ。なんで俺は係長なんだよ」

 「男だから?」

 それだけの理由で?しかもなんで疑問形なんだよ。最近俺の周りのやつら疑問形つけすぎだろ!?

 「それじゃあ誰を料理長にすればいいのよ」

 いつの間にか呼び名が変わっているんだけれど気のせいとしておこう。

 「お前らで決めろよ。その方が公平でいいだろ」

 「じゃあ、瀬原君で」

 「おい、だから」

 「瀬原君料理長でいいですかー?」

 おい、人の話聞けよ。

 しかし俺が制止させる前にクラスのやつらは満場一致。くそ、認められてくねえ。

 「あきらめなさい。これがあなたの役目なのよ」

 「分かっているけれどさ。なんで怒っているんだよ」

あきらかに口調が強い。

もしこいつが怒っているとしたら余程の事だな。

 「別に私は怒っていないわよ」

 いや、普通に怒っているし。怒っている感満載ですよ。

 「じゃあ、クリスマスプレゼントの方は各自用意しておくように。あ、別に全員上げてもいいけれどご自分の財布とちゃんと相談してね。係の方で買って貰うものもあるから」

 「じゃあ、料理の方も自腹かよ」

 「まあ、ほとんどはそうだね。でもみんなでちゃんと割り勘だから大丈夫だよ」

 大丈夫じゃねえよ。バイト代が完全にそっちに流される。

 まだ十分な資金が確保できてねえのにこんなところで全部洗い流されちまったら今までの苦労がどうなるのやら。

 なんとしても準備までに買わなければいけないな。

 とりあえずノートを広げ俺は計算を始めた。








 なんとか鈴川に事情を話せて部活を休むことができたけれど本当にこれよかったのだろうかと俺の心の声はそう聞く。よかったんだ。あいつを幸せにできるのならあいつと一緒にいられる時間が削られたって。

 なんてカッコいいこと言っても鈴川から何ももらえやしねえのは分かりきっている。

 それでも俺は今一生懸命にバイトに励んでいるのは間違いなく事実と言い切れる。

 という訳で本日はバイト二日目。

 店長から教えてもらった裏口(店長曰く選ばれし者がくぐる扉らしい)

 うむ。店長はどうやらかなりの中二病だな。こりゃあ鈴川に教えてもらった通り小児科医を紹介したいいかもしれない。

 ・・・・・・俺はあほか。そんなことで治ると思う訳がない。

 けれど店長のあの恰好はどう見ても中二病にちかいよな。

 「こんにちわ」

 扉を開けるなり、中に入ると事務室には茶髪でメガネを変えた女性、早見詩乃さんがパイプ椅子に座ってお茶を飲んでいた。

 俺のこの時間帯は俺を含めて四人の人たちが働いている。

 その中の一人がレジで働いている早見さん。無口でおっとりした人だが、現在売れっ子の漫画家らしい。

 漫画家っていうと相当大変だよ。この前読んだ漫画だと漫画家になれるのはほんの一部だっていうし一部では博打っていう風にとらえられているってあったし。

 色々と大変なんだな。

 自分のロッカーから制服を取り出して男子更衣室へと入る。

 上着を脱ぐ前に携帯を取出し棚に置くとランプが点滅していることに気づき開くと鈴川からメールが来ていた。

 マナーモードにしていたから来ているかどうか分からなかった。

 きた時刻はついさっき。それほど時間がたったわけでもなかった。

 とりあえず内容はどうでもよかったのでどうでもいい返事で対抗する。たぶん今日の夜も電話がかかってきそうだな。

 制服に袖を通し、ボタンを締める。

 制服自体半袖なので持参してきたヒートテックの長袖で何とか寒さをしのぐ。

 店内も多少の冷房は聞いていると思うからそこまで寒くはないと思う。

 着替えを持って更衣室を出る。

 事務室にはまだ早見さんは休憩中だった。いいのか。レジを開けていても。

 まあ、店長がいるだろうし大丈夫だと思うけれど。

 そんなことを思っていた時だった。

 「瀬原君は笹野川学園の生徒なんだね」

 突然後ろから刀で斬られたような感覚でかけられた言葉。

 当然、話しかけて来たのは早見さん以外の誰でもない。

 珍しい・・・・というより喋っているところなんて初めて見た。レジの近くにいてもあまり声を聴かないしてっきり人見知りかと思ったけれど・・・・・・・・

 「ええ、自分は笹野川の生徒ですけれど」

 「そこの理事長のお孫さんて笹野川に通っているんじゃん?」

 え、早見さんて鈴川のこと知っているんかよ。

 まあ、ここら辺のお嬢様ならいやでも名前くらいは聞くだろう。

 けれど・・・・・・・それがどうしたんだよ。

 まさかだと思うけれど・・・・・・

 「同じ学園の生徒ならどうにか私と会わせてくれることできないかな?」

 やっぱりそうきたか。

 「すいません。僕鈴川さんと一緒の学校なのは確かなんですけれど他人を鈴川さんと会わせられるほど大きな存在じゃありません」

 ほんとは一緒に弁当食ったり行き帰りを共にしたりなんて口が裂けても言えない。まず言ったらここがどうなることぐらい俺も分かる。

 「でもそこまであいたい理由ってなんですか?やっぱり漫画とかですか?」

 「そうね、今お嬢様が正義のヒーローになって悪の魔法使いを倒す漫画を少年少女向けの漫画雑誌で書いているからその題材として」

 ・・・・・この人も中二病なのか。しかも妄想だし。

 やっぱりこのコンビニ変な人がいっぱいいるなぁ。真面と言ったら矢幡さんくらいしかいないな。

 「お気持ちは分かりますけれどさすがの自分でもこれは無理な事です」

 申し訳ないが違う意味で無理なのである。

 「そうですね。無理強いなこと言ってすいませんでした」

 頭をぺこりと下げ、早見さんは持ち場へと戻った。

 「やべっ、俺も仕事しなきゃ」

 材料費でバイト代が削られないうちに俺も持ち場へと戻った。

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