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俺はお嬢様が恋をしたことに気付いていない  作者: 海原羅絃
第4章 クリスマスとお嬢様
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第五話 過労

 水曜日木曜日とバイトを切り抜け金曜日はお休みの日。それにクリスマス会まであと一週間と迫った。日にち的には土曜日だけれど木曜日は祝日でお休みだけれど俺はこの祝日を利用して一日中バイトにつぎ込もうと思っていた。

 資金的にはまだ少し足りない。ぎりぎりまでやらなければわからないけれど、このまま生活費など下げるわけにはいかないしかといってこの状況でいけば間違いなくクリスマス会の前にあのネックレスは購入できない。

 だからこそ、今の時間帯よりも長くシフトを入れようと思う。

 土日ならその事は必要ないと思うが平日は一時間二時間延ばしても多少大丈夫だろう。

 祝日の日に入ればちょうどいい額になるかもしれないから祝日に買いに行けばいいだろう。イブの日は終業式だけれどさすがにクラスの方も忙しくなるだろうからバイトどころではなくなるかもしれない。

 なにせ他クラスの連中まで参戦のクリスマスパーティーらしい。

 どうせなら学年でやればいいと思うけれど場所が見つからないのが難。人が多ければ体育館でいいと思うがスペースなどの配慮からして一学年を収納するスペースなんてギリギリと言っていいほどしかないと部活にて春富から聞いた意見を一刀両断した俺はどうせなら参加者数を絞って抽選で選んだ方がいいといった。

 もちろん反対したものもいなかった。

 しかしそれだと不公平じゃなーいと無理強いな行為をしようとしていた人にはさすがに言われたくない文句である。

 という訳で金曜日に『青春乙』の方で応募した一年二組クリスマス会の参加者募集箱と書かれたわら半紙を意見箱の上にセロハンテープで張り付け放課後に票が集まるのを待った。

 ちなみに対象は一学年の生徒のみ。昇降口など公にさらすようなことをすれば間違いなく学校内で騒動が起きるだろう。

 たとえば三年生。

 年明けて数週間が経てばすぐにセンター試験。俺の通う学校は私立だから必ずしも全員が推薦で大学などに入るわけでもない。

 センターでも入る人も中にはいて、中には海外留学が決まっている人も・・・・・・なんてありえねえな。

 例外。と言えども進学校だからそういないけれど進学をしない生徒もいるはずだ。

 たいていその人たちが面白がって入ると思うんだけれどそれはさすがになかった。

 その集計が今日行われる。

 現在、メンバー全員鈴川邸に集まっていた。

 今日のバイトはお昼過ぎから夜にかけてなので午前中ここにいても、余程な事でない限り呼び出しはない。

 当然、俺はびりけつで鈴川の家に到着して皆から居た堪れない文句を浴びさせられた。もちろん一番の暴言を吐いたのは鈴川以外の何者でもない。

 「っていうかご意見番箱って投票用の箱だったのかよ」

 「別に郵便ポストでもなんでもいいじゃない。意見が入るような物であれば何でも」

 もしこれが区役所とかの備品だったらどうするわけだよ。 

 なんてことはお構いなしにロックされた上蓋を取り、中から紙がどさっと出て来た。

 この数・・・・・どう見ても一学年の人数よりあるじゃねえかよ。

 一年の廊下にしか置いていなかった箱の中にどんだけ紙が入ってんだよ。

 中に二三年生のも入っているとか・・・・・・

 いやいや、いくらなんでも。

 だってあの応募用紙らしきものは学年分、一年二組を除く分しか刷っていないし紙の数が多いのも二三年生が入れるのもおかしいに決まっている。

 「あれ、同じ名前の人があるんだけれど」

 紙をあさっていた賀川が中から二枚を取り出した紙をまじまじと見る。

 しかしその紙は色が少し違かった。

 一年二組の学級長、春富瑠奈自作の応募用紙はつやつやの紙あるがもう一枚の方はわら半紙の様な、コピー用紙のような手触りだった。

 「なるほどな。こうやって自分で書いたものをプリントプリントプリントってLoopしていったわけだ」

 ループのところをていねいに英語発音してくれてありがとうな。けれどそれはもう必要のない言葉だと俺は思うんだけれど。

 そう思いながら俺は他の紙もあさっていく。同じ名前で且つ、違う紙がどこからともなくわんさか出てくる。

 よく紙がただでさえ不足しているこのご時世の中よくこんなことできるよなとついつい呆れてしまう。

 「参加できるのは各クラス6人まで。それ以上は認めないわ」

 鈴川の指示のもと、みんなは手を動かしていく。

 こんな地道な作業だったら午前中からバイトを入れておくんだったなと最初は心底そう思っていたが、さすがにやっていくうちになれてなんか楽しくなってくる気がする。

 俺は一年一組を担当としている。抽選の決定はこの通りだ。

 まず名前がダブっている紙は焼却。それがすんだら、適当に紙の山を持って机の上に置く。そこから一年一組のクラスと名前が書かれている人がいたらその人だけ取り出していく。

 一通り済ませたら、そこからさらに一年一組の中から抽選が起こる。

 次々と参加者が決まる。

 思ってより楽かもしれないけれどこれの処分もそうだけれど集計がなかなかめんどくさい。

 まず結果を模造紙にかいて月曜日の朝に張り出さなければならない。

 待ち遠しい奴には待ち遠しい奴がいるかもしれないけれどおそらくここに応募してきた奴ら、俊哉から聞いた話だと鈴川のサンタコスが見れるからという訳で来たそうです。

 あとでビデオカメラとか装備している奴がいたら首の骨折ってやろうと思っていたくらいだ。

 「みんな終わった?」

 「なんとか」

 「待って・・・・・あと一人・・・・・・・・・ていっ!?」

 ぐったりと疲れ果ててしまった俺に異様な声を出す俊哉は最後の一人なのか紙を引っ張り出す。

 「だあああああああ!!他校だった」

 んなどうでもいいから早く帰って来てほしい。

 帰ってくれなければ俺も俺で大変。

 「お前で最後みたいだから早く引いてくれよ。寒くてしょうがねえ」

 いくら暖房が利いていても、足先まで必ずしも温めてくれるという訳ではない。そんなことを考えた人はとっくに旧石器時代に戻っちまうぞ。

 「何度でも言いたまえ、覇者は私なのだ!!!!」

 こいつ大丈夫かと駆け寄りたくなるくらい俺は恥ずかしかった。

 鈴川の家だからよかったものの、近所に聞こえる声や、学校内だと明らか変人扱いだよな。俊哉。

 そんな奴に彼女がいると知って驚愕したものの数は正直俺は目を瞑るしかなかった。だってあの数だぞ?

 よくファンクラブなんて作らずに陰でファンを募っていたよな。

 大胆かつ目立たない行動。賀川のファンにしちゃずいぶんと気の弱いところなのか。はたまた鈴川の好きなところを聞けば罵られるところと答え。奴はどうやら俺に殺されたいようなサインらしい。

 罵られるのが好きってさすがにそれが趣味の友達なら付き合ってられないっていうのも分かる。

 「全部集まったみたいだね。じゃあ、瀬原君から報告して」

 「一年一組は男子が全員。女子が約半数が応募。

 抽選の結果、一年一組・・・・・・・・」

 淡々とした声で俺は喋る。

 正直この結果は俺も気に入らなかった。

 抽選者の紙を変えたいのも山々だったけれどルールがルールであるため、そんなことをできるはずもない。

 だってそうだろ?抽選した人全員が男子だなんてどんな運の尽きだよ。

 ああ、神をどうか崇めたい。切実に。

 「と言う訳で六人全員男子。出席番号・・・・・・」

 ああ、なんか名前も聞き覚えのある名前がいっぱい。

 一年生の裏の間で結成された『鈴川蘭後援会』の連中が名前を連ねているのが俺の気のせいであってほしい。とりあえずこれ終わったらバイト行く前にコンタクトレンズ取り換えに行こうかな。

 「男子全員だなんて。瀬原君の男運がいい事」

 「お前それ嫌味か!?嫌みならこれ引いたのお前にしておいてやるから!!」

 もちろん、俺の子の叫びに反応をしてくれたのは俊哉だけ。

 肩に手を置いただけの始末だったけれどな。

 「じゃあ、続きやりましょ。三組は?」

 「あ、私」

 賀川が手を上げる。

 「えっとね、三組は男子女子共にほぼ同数。細かいところまで行けば男子の方が多いわね。

 ねえ、応募用紙の隅に『鈴川さんと夜を過ごしたい!!』って書いてあるけれどこれも含めたほうがいいのかな?」

 おい、大衆の前で言っているようなことを平気で書いている馬鹿がいるんかよ。

 意外とマニアックな行動だと思っていたんだけれどこれを聞いた本人は少しでも頬を赤らめたりと女の子らしい行動はないのだろうか。

 不可解だな。しかし。

 「それは無効票として処分しておいて。土に埋めるのもよし。金魚の餌にするのもいいわ」

 金魚って紙食うのかよ。ってかそれってヤギじゃね?

 「じゃあ、追加としてもう一枚後で引いておく」

 「よろしくね。じゃあ、次四組」

 え、男子何人とか報告しておかなくていいのかよ。ずいぶんと適当な会長さんだな。

 「えっと、四組は男子が2人で女子が4人。名前は出席番号8番大垣昌平・・・・・・・」

 報告したのは田中と佐藤だった。

 それに昌平も出るのかよ。色々とややこしくなりそうでめんどいな。

 こりゃあパーティー中はギャラリーでのんびりとしているかな。

 「五組」

 「五組はね。票としての集まりはいいんだけれど無効票が多くてね。『アイラブ鈴川さん!!』とか『myAngel☆鈴川さん』とかいろいろと書いてあるのが入っているんだけれどこれもいいよね?」

 おい、なんでそんなことを易々とかけるんだよ。お前ら馬鹿かよ。五組のやつら馬鹿かよ。とうとう 鈴川が話をしなくなって何らかの恐怖心におびえているのかよ。

 しかも明らか犯罪じみた言葉がいくつか入っているんだけれど気のせいかな?

 「どこでもドアでアフリカ大陸に連れて行かせといて」

 即座に鈴川はそう答えた。

 何処でもドアとか。お前も大丈夫かよ。

 「それじゃあ、六組」

 「六組は男子五人の女子一人だ」

 「偉い方よった人数だな。やっぱりこれじゃあ何かと不憫があるんじゃねえか?」

 「大丈夫よ。こんなことも有ろうかと名前が長くてしかも書き順が多い男子は即刻排除するわよ」

 何を根拠に言ってんだよ。俺がそう聞くとこう帰ってきた。

 「ラブレターをもらっときにお返事を書くのに困るからよ」

 え、お前ってラブレターちゃんと返す派だったんかよ。俺はてっきり読まずに資源ごみに出すというイメージしかわいてこなかったんだけれど。

 ちゃんと書くんだ。意外な真相を今知った。へぇ。

 なんて平凡な考えでいたら何故か急に睨まれた。

 今からでもあなたののど元を噛み切ることはできますよという猛烈なオーラ。

 しかも周りのやつらは気づいていない。

 怖い・・・・・お前はどこぞの侍だよ。

 「余計な話はいいとして最後、七組」

 「俺だ。えっとね。七組はテストで毎回上位を獲得している大河原君がいるよ」

 ただそれだけかよ。

 ってかどうでもいい情報ありがとな!!

 「まあ、こんなものね。ちなみにこの人たちには夕食代とかいろいろな経費は払わせるからね」

 悪魔だ・・・・こいつ悪魔すぎるだろ。

 当然のことだと思うけれど金をとるのはいかにも悪人らしいことだな。

 色々な経費が何かと怖いな。裏が知りたい。

 「あとは私と瑠奈と利華でやるようにするかわ男性陣は帰ってもいいわよ。あ、林君は利華のところまってあげててもいいわよ」

 「おう、分かった」

 裏切りやがったあいつら。

 仕方ない。少し早いけれどバイトにでも行くとするか。

 そそくさと部屋を出て俺は冬の風が強く吹き付ける中バイト先のコンビニへと向かった。

 いつもの裏口のドアノブに手を取り、扉をひき開ける。

 「こんにちわー」

 「あら、瀬原君じゃない。今日はまだ早いわよ」

 「いえ、ちょっと用事がいつもより早く引きあがることができたので」

 「熱心だね。あ、今人手足りているからそんなに慌てなくていいぞほら、こっち来て暖取な」

 そそくさと促された俺は椅子に腰を掛ける。

 このタイミングで言った方が一番なのか。

 シフトを増やす件について。

 「あの、店長ちょっとお願いしたいことがあるんですけれど」

 「なんだ?私にできることなら何でも言ってくれ」

 なんか言いづらそうだ。俺の勝手なわがままになりそうだしもし・・・・・・・

 なんて考えていたら余計にダメだ。俺は一大決心。というよりかは少し楽な表情をして店長のいちごさんに言った。

 「木曜日まで、バイトのシフトすこし増やしてくれませんか?」

 俺の質問に店長は少しよろめきそうな表情をする。

 「増やすっていう事はどういう事だ?時間の事か?」

 「時間です」

 「理由は・・・・・と言っても聞いているからわかるんだけれど」

 「理由は・・・・・・・どうしてもクリスマスにプレゼントを渡したい人がいるのでそのために働かなければならないのです」

 この説得で納得してくれるだろうか。分からない。一か八かだ。俺は賭けに出る。

 しかし店長は何も言わずで席を立ちあがりロッカーから紙を一枚出してくる。

 その紙は俺の前に出される。

 よく見ればシフト変更票と書かれていた。

 「ここに追加時間を入れろ。それから期間もしっかり書くんだぞ」

 「え・・・・いいんですか?」

 「別にダメだっていう理由はないだろう。こういうのはしっかりと受け止めてやらなければいけないんだ」

 「店長・・・・・・」

 さすが奥さんもいない人がここまでやってこれたなと思う。俺は今一番に尊敬している。

 「そうじゃなきゃ嫁さんや子供たちに尻敷かれちまうからな!!」

 グッと、親指を突き立てて俺に言う。

 あ、店長奥さんも子供さんもいたんだ。

 いや、大失態大失態。

 兎にも角にも、店長のおかげでバイトのシフトを増やすことができてよかった。







 休みが明け、時は水曜日。

 正直体はだるかった。

 土曜日日曜日は九時からバイトが始まり帰ったのが結局十時過ぎ。更に平日が十一時に帰って来てねたのが夜中の二時くらいだった。

 さすがに昨日おとといも学校を遅刻しそうになったり授業中寝そうになったりと最近生活リズムがくるっているせいか、はたまたバイトが忙しくなってきたのかかなり疲れている。

 今日は違う。昨日やおとといとは違う疲労感。

 波のように俺の体にぶち当たるようにどっと押し寄せてくるこの倦怠感。

 足も重いし呼吸をするだけでも肺がつぶれそうでどうしようもない。

 人が多いと分かっているのに、混んでいると分かっているのに今日も一段と人だかりが多い気がする。

 同じ人が何人もいる・・・・・・

 幻覚か。そうなのか。

 問いかけても答える者はいない。

 学校につき、千鳥足で教室へと向かう。

 長い長い階段を上ってやっとこ教室に着く。

 引き戸もいつもなら簡単に開くのに今日は力が入っていない。思いっきり力を入れてやっと動くくらいだから。

 教室に入ると生徒が何人もいる。

 声は聞き取れるけれど理解はできない。

 顔は知っているんだけれど誰という認識ができない。

 「お、おはよ蓮司」

 俺に声をかけてくる人が1人。いや、実際には三人に見える。

 だめだ。目がぼけてはっきりと見えない。

 けれどこの声が誰のかは30秒ほどたってやっと認識できた。悪友の俊哉だ。

 朝からこいつは元気だなとぐるぐる回っている脳内で俺はそう呟く。

 「それでさー、・・・・って、蓮司?どうしたんだよ?顔色なんか悪いけれど大丈夫か?」

 「ああ、大丈夫」

 喉に針が刺さっている感じだ。痛くて声も真面に出せない。

 なんだよ俺。どうしちまったんだよ。

 そういや昨日のバイトもこんな感じだったな。家に帰って寝れば治ると思ったんだけれど治んねえじゃねえかよ。あの頭痛薬不良品かよ。

 机などに補助されながら自分の席に行こうとする。

 俺が席に近づくと同時に鈴川が席に着くのが分かる。

 この前席替えしたから奴とは近くなった・・・・・なんてどうでもいいこと考えている暇なんかじゃない。

 俺はゆっくりとゆっくりと自分の席へと歩み出す。

 「今日はずいぶんと遅いのね」

 鈴川の声が聞こえる。しかし何を言っているのか理解できない。

 故に返事のしようがないのである。

 「ちょっと・・・・・寝不足でな」

 やっとこ会話が続き、俺が席へ着こうとした瞬間。

 おれの思考は完全に止まった。

 椅子が倒れる音に机が盛大にずらされる音が教室中、いや、廊下まで届いたのかもしれない。

 「瀬原君!?」

 「おい、蓮司!!大丈夫か?おい!!」

 何度も俊哉は蓮司の体を揺さぶるが起きる気配がない。

 「利華!!救急車呼べ!!大野は先生に知らせてこい」

 「分かったわ」

 「急ぐ」

 二人はそれぞれ動き出す。

 「瀬原・・・・・君」

 突然の出来事に呆然とするしかない鈴川。

 今見えるのは苦しそうに呼吸をしていて、顔も真っ赤でいる瀬原蓮司の顔だけが見えた。

第五話にしては少し重すぎる話だったかな?

おそらくこの話は相当短くなる。

という訳で番外編も考えています。

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