第一話 プレゼント
クリスマスとはイエス・キリストの誕生日を祝う日と一般で言われている。
それは12月25日に行われ、民族の間では太陽の再生をいわう冬至の祭りと融合しているとも言われていて、別称は聖誕祭、降誕祭とも言われている。
実際は恋人と街中をブラブライチャイチャしたり、家族と夕飯を共にして子供は寝ている間にサンタさんから贈られてくるプレゼントというものに胸を弾ませる。
しかし日本ではクリスマスは恋人と、アメリカでは家族と過ごすと少し変わった習慣を各国兼ね備えているらしい。
そして俺、瀬原蓮司は都内にある高校に通う一般の生徒。と自分で言うのも変ね。あなたは私とあってから変わったのよ。と同級生で俺の入った(正確には入らされた)部活の部長というより、会長に言われている身である。
少しその言葉に俺も追々疑問を持つが正直もうどうでもよくなってきたころだ。まず自分で自分の変わったところなんて相手から見なきゃ絶対わからないと思う。
話を戻そう。俺はここ最近のクリスマスは適当に過ごしている。別に一人で街中をふらついて荒れ集るカップルどもを見て某SNSで『ぼっちなう。余計に寒い』などしみじみに自分から悲しませるような行動はまずしない。というか当たり前だ。俺はマゾじゃない。
しかしだ。つい最近、俺の中学からの悪友が狙っていた女子を文化祭で告白したらその勢い・・・・というか付き合ってしまった。
中学校時代、「リア充死ねリア充死ねリア充死ね」と唱えていたあいつが今じゃ彼女ができてウハウハに違いない。
うう、弁慶の泣き所に一発蹴りを入れたい。
んなことを云ってもしょうがない。おそらく今年も俺はクリスマスはぼっ・・・・・じゃなくて一人だろう。
別に一緒に祝う人はいないわけだしのんびりと過ごしていようと思った。のは、ついこの間までの事。
俺のそんな願望は今日の部活動でかき消された。
現在、俺はある豪邸のある大きな棟の大きな廊下にそびえる大きな扉その中の大きな部屋の中央でパイプ椅子に膝を抱えて座っていた。
俺の周りにはあと7人くらいで同年代の人が同じようにパイプ椅子に座って雑談等している。
「まさに青春よ。クリスマスと言ったら青春しかないわ!!」
テンションを上げてパイプ椅子からドッと立ち上がったのは、わがクラスの学級委員長、春富瑠奈である。
ついこの前まで真面目さんキャラでいたのになんかキャラ変わっていない?設定間違えた!?
「そうわね、クリスマスと言ったらやっぱり街中に戯れるカップルをつぶす時だね」
俺の隣に座っているこいつは妙に物騒なことを軽々しく言う。
冬に本格的に入ってきたこの時期にクリーム色のカーディガンを着て下にはスカートにタイツという着こなしているのが我が部の会長、鈴川蘭。
それに、初夏のある日、屋上から突然降ってきた奴でもあり、俺の初めてを奪った張本人でもある。
別に奪われてから死ぬわけでもない。予約していた奴もいるわけじゃないし。
けれどこいつのやる事はいちいち派手で悪趣味で大胆すぎる。
もし友達か誰かにこの人を動物に例えるとしたら何?と聞かれたらこう答えるだろう。
悪魔。
いやマジで。こいつは悪魔だよ。神に誓ってこいつは悪魔だ。
学校一美女で校内ランキング1位を堂々と勝ち取っているこいつの本性は悪魔だ。悪魔だよ!!
デーモン。サタン。悪霊だ!!
いっそ悪魔同好会でも作ってやろうかと思う。こいつの本性が丸わかりだ。
どうせなら祓魔師でも呼んできてやろうかと思う。
たとえば奥〇君。
「さて、瀬原君の偏見な考え方は無視して話を進めましょう」
だれだ。俺の心の呟きをこいつに教えたのか。
そいつも一緒に悪魔同好会に入れるぞ。
「確かにクリスマスは青春を掴むのにうってつけの時期よ」
クリスマスって青春する時期なのかよ。あ、サンタさんにプレゼントをお願いするのか。なるへそなるへそ。
「具体的な案が欲しいわね。やる事が大胆すぎてもそれはそれで困るわけだし」
指で顎を摘まみながら春富は真剣に考える。
クリスマスって大抵あれだろ?料理食ってツリー飾ったのを見てサンタにお願いして布団に入るだけだろ?彼女はおろか家族がたった一人だけの俺にとって街中でいちゃラブするなんて考えはとてもじゃないが思いつかない。
「じゃあ、強制的に意見を言ってもらうしかないわね。じゃ、瀬原君」
「じゃってなんだよ。じゃって」
「邪?」
「そっちかよ!!邪はお前だろ?」
「んちゃ?」
「おおとりさあああああああああああああああああああああああああああああああああん!!」
思わず発狂してしまった。
思わず。
「で、案はないの?」
こいつ・・・・・・人のこと散々からかっておいて。
しかしこんなところでそんなこと言ってもしょうがない。
「俺としてはクリスマスパーティーっていうもんやってみたかったんだよな。確か中一の頃俊哉と二人で近くの・・・・」
「だあああああ!!賛成賛成賛成!!」
と、俺が思い出話をふとしようとしたところで中学時代の悪友こと俊哉が賛成の手を上げ発狂する。
あ?こいつ何焦ってんだよ。
俺が頭の中で?を浮かべていると、ああ。と心の中で相槌を打つ。
ふと見た先には怖い目で俊哉を見ているあいつの彼女、賀川利華がすごかった。
(何あれ?鬼の形相?)
(嫁を怒る姑の顔)
(お前もう子供いたんだ)
(いるわけねえだろ)
(そういやお前、中一のクリスマスに俺ん家でエロ本鑑賞していたよな)
(ばっ、こんなところでそんな話だすなよ)
(いいじゃん。アイコンタクトなんだから)
(さっぱり意味わからん)
(で、確かお前貧乳派とか言っていたよな?)
(いつの話をしているんだよ)
(去年は爆乳)
(おい)
(今はなんだ?)
「俺はいつまでも貧乳派だよ!!」
「あ」
「え」
アイコンタクトで話していたことがとうとう口に出てしまった。
賀川のジト目がどんどん増していく。
ああ、俺は知らねえぞ。貧乳はステイタスさん(俊哉のネット上の名)
「俊君。あとでお話しあるからね」
「は・・・・はい」
震える声で俊哉は返事をする。
ははっ、自業自得だ。
「瀬原君。あとでお話しあるから」
ははっ。俺もか・・・・・・・・・
え?共犯容疑で逮捕?
俺は無罪ですけれど。
しかし彼女の目は本気だった。
すいません。女を甘く侮っていた俺たちが悪かったです。と俺は心の中で深く反省しつつ、彼女の後の罵倒にふんぞり返るのであった。
◇
クリスマスが近くなるにつれて1年の終わりも近くなるが実際そう言った感じがしない。正月も年が明けても「ああ、もう明けたのか」とくらいの感想しかない。
それとは関係はないが、この時期だとクリスマス感謝セールや年末セールにとあちらこちらで商品の値引きなどが行われいる。もちろん俺の住む町もそれはある。けれどまだクリスマスまで2週間まである。こんな早くからクリスマスセールなんてものがやっているはずがない。
まあ、ケーキ位なら少しくらい値引きとかされているかもしれないがワンホールとか正直一人で食べる量じゃないくらい承知済みだ。ってかワンホール一人で食う奴とかいるんかよ。
そんなことを思いながら俺は夕暮れの町中にいた。
買い物に行く途中で俺は近くの大きなデパートへと向かっている。
今日は生姜焼きでも作ろうかなと思うくらいなんか腕がいいように感じる。もちろん、直感だが。
そんなわけで俺は肉や生姜焼きに必要なものを買いそろえる。
「えっと・・・・・あとは醤油とかまだあったからいいとして、明日の朝飯もどうするかだな。食パン切らせていたから買っておくか」
パンコーナーに言って俺は8枚スライスの食パンを籠の中に入れる。
ある程度必要なものは買いそろえておいたので、あとは会計を済ませるだけ。
俺は空いていそうなレジに行き、籠を台の上に置く。
「袋はお付けしますか?」
「あ、あるので結構です」
世の中エコの時代。レジ袋なんて不要。世はマイバッグ!!
なんて空からマイバッグが舞い降りてくるCMをつい最近見たのでそれに合わせて仕草をこなしてしまったため、店員が驚いている。
「んんっ。すいません。カードでお願いします」
「分かりました。では、領収証です」
俺は領収書を受け取り、買ったものを順序良く詰めていく。
籠を指定の場所に戻し俺はデパートの食用品コーナーを出る。そのまま帰ろうかと歩きながら考えていたが店内をふらついているとあるものが目に止まった。
アクセサリー屋。
もちろん。ダイヤの指輪とかあるに違いない。ホントならば俺がここに立ち入る、いや、それ以前の問題だけれどある思い付きで少しばかり興味を持っていた。
時間はそれほど食ってはいないから俺は店の中に入ることにした。
中は華奢な装飾で彩られていておそらく一般人で入っているのは俺くらいであろう。もちろんだ。ここは確かテレビにでも出てた有名なブランド物のアクセサリー店。
ダイヤモンドとか普通に取り扱っているらしい。
俺は数々の商品棚を凝視するがとても俺の財布の中身じゃ重すぎる値段の物ばかり。
「これじゃあなぁ」
頭を掻きむしってもお金が出てくるなんてまずない。
「お客様、何かお探しですか?」
なんてしているうちに店員に声をかけられた。
やべ、別に買うものなんてねえのに・・・・・なんていえばいいんだよ。
ここは「あ、今日は買わないんです」なのか商品を見て「これなんかどうですかね」いやいや、金持ってねえのにそんなこと言えるわけねえ。
なら、「彼女にプレゼントするものを」ってぶっちゃけて言うのか。ってか俺彼女いねし!!
「あのー、お客様?」
俺が脳内一人ボケ突っ込みをしていたら店内に変な顔で声をかけられた。
うわ、めっちゃ困ってんじゃん。
こうなったら・・・・・・・
「すいません。今日持ち合わせがなくて商品だけ見に来たんで」
「そうですか。ですが見て頂くだけでも十分結構ですよ。もしお気に入りの物があったのならばこちらで確保いたしますのでお客様がお買い求めになるまでこちらで待っていただけますよ」
「え?ホントですか?」
これって職権乱用にならないのか。いや、おそらく乱用だな。だってこの女の人店長っていう札つけているし。
やっぱり職権乱用か。うーん。企業っていうのは難しい。
でもそちらでそうさせてくれるのならそうさせてもらおうかな。
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます」
「いえ、こちらもうれしい限りです」
うーん。やっぱりあういうのが営業スマイルなのか?なんか鈴川に似ているような気がするんだけれど・・・・・でもあういう笑顔を鈴川に毎日してもらいたいんだけれど・・・・・
そんなことを想像するとなんか自分が情けなく思ってきた。
うん。まずあいつには作り笑いしか似合わないっていう事が発覚した。元からだけれど。
とりあえず俺は陳列されている商品を一通り見ていく。
そういや鈴川んちって意外と普通の物が揃っていたような気がするな。別に特別高級なものなんておいていないわけだしお嬢様にしては案外倹約しているんだな。
意外だな。案外。
そんなことを思っているとふと目に止まるものが。
それは天使の羽の形をしたネックレス。
あいつがつけたら悪魔の羽だけどな、なんっつって。
けれどこれ以外にも他にもあいつが似合いそうなものあるよな。鈴川って黒とか似合いそうだけれど黒のアクセサリーなんてめったにないしそれをカバーできる形のものがあればいいんだけれど。
「あの、すいません」
「はい、なんでしょうか?」
「クリスマスにプレゼントするとしたら何がお勧めですか?」
「あら、彼女さんですか?いいんですねえ。ロマンティックで」
なんでロマンチックの部分が英語発音なんだよ。しかも綺麗じゃねえかよ。っていうか彼女じゃねえし。
「それでしたらこちらなんてどうでしょう?」
そう言って見せてもらったのが四つ葉のクローバーの形をしたネックレス。
「これかぁ」
でも似合いそうなものだな。
「すいません。これ確保していただけませんか?」
「分かりました。お値段の方はこちらになります」
値札を見せてもらうと100,000¥と記されていた。
うん、今月の生活費とか考えて今100,000ある。もう少しで兄さんから生活支給費が来るからそれに合わせて50,000あると考えてあとの50,000はバイトでもしようかな。
「分かりました。じゃあ、12月24日に買いに着ます」
「はい。また何かありましたら当店に立ち寄ってください」
俺は店長の女性から書類の様なものをもらい店を出ていった。
よし、さっそく家に帰ってバイトでも探すか。
破格の条件のところで!!




