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俺はお嬢様が恋をしたことに気付いていない  作者: 海原羅絃
第3章 文化祭とお嬢様
35/80

第十話 体育祭及びその後

何処かで見たことのあるようなネタだと思いますけれど気にしないでください。

 各クラスの催し物は午後三時に終了する。そこから三十分の片づけに入り、十五分後には体育祭が行われる。

 俺は体育祭出場者なので片付けはできるだけやり、早めに教室を出ることにした。

 正直、走る方は久しぶりだけれどそこまで久しぶりではない。週に二、三回はランニングとかしているし、風呂上りのストレッチも欠かさずこなしている。 

 帰宅部のやつが何をえらそうにと思うけれど人間いつ怪我してもおかしくない体だ。たとえば強盗に襲われ逃げようとしたら突然肉離れ。なんて言うオチがあったらかわいそうだ。

 という訳で俺は更衣室で大野たちと着替える。

 「体育祭ぜってえ勝とうな」

 「もちろんだ」

 クラスメイトはそれぞれ足を回すなり肩を回すなり個人個人準備を整える。

 と言ってもまだ開会式も行われていないので準備運動は早すぎるけれど。

 誰もやる気が十分であることは確かだ。これは絶対勝たなきゃいけない勝負だからな。

 担任からも体育祭で学年一位を取ったら焼肉パーティーっていう事になっているし焼肉の為にも俺は燃える!!

 「時間だからそろそろ行こうぜ」

 揃いに揃って、俺たちは更衣室から退室してグランドへと向かう。

 うちの学校の体育祭、リレーだけの種目だけれどこれがまた盛り上がり、更に魅力?的なのがそのルールである。

 そのルールというのが三戦ルール。

 文字通り、一年から三年までそれぞれ順番通りにリレーが始まる。

 一レース目は1人トラック一周のレギュラーレース。

 二レース目はハーフ&ハーフ。

 スタートラインとゴールラインを各組ごとに分け半周走らせるという。

 簡単に言えば、トラックの中央線にスタートライン兼ゴールラインAとBがあり、均等に各クラスの走者は地点につく。

 仮に一組の走者がA地点から半周するとしたら次に走る一組の選手はB地点からスタート。

 さらに二組の走者がB地点から半周するとしたら次に走る二組の走者はA地点がスタートとなる。

 要はただの半周するだけのリレーという訳だ。

 ちなみにそれぞれの順位ごと、ポイントが与えられ学年別優勝など賞を贈られる。

 七クラスあるうち、一位には20PT。二位には10PT。三位は8PT。四位は6PT。五位は4PT。六位には2PT。七位には1PTというレートである。

 だから一番総合ポイントが高いクラスでも60PT。一番低くて3ポイントである。

 最後に三レース目は、借り物競争。

 いや、俺もこの種目を聞いた時は正直「え?」っていう顔になった。

 もはやリレーではなくなっているし、足の速さも最後の方はあまり関係なくなってきているのではないかと。

 借り物競争ってほとんど校舎内じゃねえかよ。

 でも改めてルールを見ると、借り物はグランド内に隠されているという事らしい・・・・

 宝探しかよって思うだろ?もはや借り物じゃなくて宝探し競争になりますね。

 そんなことを思いながら俺は自分のクラスの列へと入る。

 周りはガヤガヤしていておさまるのにも時間がかかりそうであった。

 「ずいぶんと気合が入っているじゃない」

 「ああ、鈴川か」

 一体今までどこに居たのやら、どうせ実行委員の方で忙しかったんだろうけれど。

 「実行委員は体育祭ではないのか?」

 「ほぼ体育委員に割り当てられているわ。いつまでも実行委員に頼りっぱなしじゃ生徒会も頭が上がらないでしょうね」

 さすがにここでは実行委員の出番はないか。

 それもそうか。時間の割り当てから何まで任せてしまうとこっちではもしかして疲労でもう起き上がれませんていう事態になったら終わるな。

 「まあ、あなたなりに頑張りなさいよ」

 「ちょっ!!お前、こんな大衆の面前でこんなことするなよ!!」

 平気で俺の腕に絡めてくるこいつを誰かひっぺがえしてくれ!!

 暑苦しいし周りからの視線が非常に痛いです!!

 まて!!周りの男子生徒が危ないものを用意し始めてますけれど・・・・・・これって俺に向けての差し金?そんなわけないよね?

 「もう離さないわよ」

 「さりげなく可愛いこと言ってんなよ!!」

 「もう切り離さないわよ」

 「切り刻まれていたのかよ!!」

 しかも修復まで御丁寧にありがとうございますね。

 「ブルータス」 

 「そのネタはもういいよ!!何回目だよ!!」

 だめだ。これじゃあ体育祭始まる前に体力が全て吹っ飛んじまう。

 だれか、こいつを止めてくれ。 

 俺は助けを求める捨て猫のように大野たちを見る。 

 しかし完全無視。

 裏切り者っっっっっ!!

 優勝してもお間らの肉は俺の胃袋行だから覚悟しておけよ・・・・・

 と、そんな恨みったらしい言葉をもちろん彼らには届くはずがないのだけれど。 

 『生徒の皆さんは速やかに列を作り、その場で待機してください』

 「という訳だから応援するから頑張ってね」

 なんか勝たなかったら俺の弱みをどうにかするっていう風にしか聞こえないんですけれど気のせいですか? 

 役員の声がマイクを通して響き渡る。それに応じて生徒はどんどん列を作って並び始める。

 俺たちは一番最後尾へと並び会が始めるのを待つ。

 数分後、辺りは静かとなりそれを見計らってか役員の人が喋り出した。

 『開式の言葉』 

 同時に体育委員長らしき人が壇の上を上る。

 長い長い話ではないが何とも退屈な言葉を聞いて開式の言葉が終わり、次は校長先生のお話。

 「えー、諸君。この体育祭。燃えに燃えている人もいると思います。ですが、けがだけには十分気を付けてください。特に選手の皆さん。それを心の内に入れて競技に臨んでください」

 意外とオブラートな言葉で少し意外だった。

 校長先生って案外手短にすませる人なんだ。

 『それでは、これから競技へと移ります。選抜メンバーの方は各自指定の位置でストレッチ等してください。競技開始時間は今から10分後です』

 げっ、あんまり時間ねえじゃん。早く行かなきゃ。

 「蓮司急ごうぜ」

 「ああ」

 走って俺たちはスタート地点付近に行く。

 一年生が最初のレースだから早めの準備をしなくてはならない。けれど焦りは禁物だ。慎重に且つ、素早く。

 足のストレッチを俺は入念にする。

 「おお、張り切っているね」

 「俊哉か。お前も余裕そうじゃねえか」

 「こんなんで緊張していちゃあ本番どれだけ緊張すると思っているんだよ」

 それもそうか。駅伝やっていたこいつがいうんだ。これぐらいで緊張するなんて相当な奴だ。

 「お前アンカーなんだって?」

 「あ、まあな」

 そういえば俊哉もアンカーだったけ。なんかやりにくいな。

 『一レース目。フルダッシュリレー』

 アナウンスがそう告げると俊哉は俺に挨拶をして所定の位置に戻っていった。

 本当にやりにくいな。

 「よっしゃ、始まるぞ」

 「大野、最初が肝心だ」

 「任せておけ」

 本当に気合十分だな。こいつ。 

 クラスメイトもかなり俺たちに期待しているからな。その期待に応えてやらなきゃ・・・・・・

 うわあ。

 鈴川があからさまに何か企んでやがる。絶対あの顔は罰ゲームパターンだ。

 真面目に勝たなきゃ俺の命が危ない。

 「大野!!最初から飛ばせ!!」

 「当たり前のこと言ってどうするんだよ」

 「よーい」

 スタートの合図が上がる。

 パンッッッッッ!!

 号砲と共に一年生の第一走者が走り出す。

 よしっ!!出だし好調だ!!

 このまま行って・・・・・・・・

 大野はおそらく、差が開く瞬間を一瞬たりとも見逃していなかっただろう。そんな判断何処でしているのか俺が分かるわけがない。

 だが間違いなくスピードが上がっている。群を抜いて大野がトップに立つ。

 そしてバトンは陸上部の遠藤へ。遠藤もコーナーでどんどん加速していきさらに差を広げる。

 「よっしゃ!!このままいけ!!」

 クラスからも大歓声が届いているのがわかる。確かにこれならいける。

 さらに遠藤から楠川へ、楠川から清田へ。しかしここで下の組の走者が追い上げてくる。

 最下位とは半周差をつけているものの、二位とはどんどん差を詰められている。

 「ああ!!清田頑張れ!!」

 そして、清田から吉岡へ。

 バトンを渡そうとした瞬間、タイミングが合わなかったのか吉岡の手からバトンはするりと抜け地面にカランと音を立てて落ちる。

 このあいだに一体何秒もの時間が過ぎたのだろう。

 すぐ後方にいた組は俺たちを抜きそのまま走り出す。 

 それでも吉岡は走り出す。 

 そして坂本へと渡され新谷へと。

 ここで二位に追い上げするがその一位が三組。 

 このまま新谷が追い上げを見せてもどのみち俊哉と一騎打ちすることになる。

 ぜった的に回避できないこの状況。どうにか切り抜けるには・・・・・・・・こいつよりも先にリードしてゴールするしかない。

 「勝負はもらったぜ」

 「カッコつけても何もやんねえぞ」

 「お前から何にも欲しくねえよ」

 ったく、勝負になるとやっぱり前が見えなくなる。こいつはやっぱり体育会系の人間だな。 

 新谷が追いあがってくる。そして。

 俺が新谷からバトンを受け取るのと俊哉がバトンを受け取るのはほぼ同時だった。

 俺は地面を思い切りけり上げる。先に内側を狙わなきゃ後で苦労するだけだ。しかし、俊哉は正直言って早すぎる。本当に部活に入っていない奴の足の速さなのか俺も驚きがたい事である。

 二組と三組から大声援が湧いてくる。

 もちろん、校舎を揺るがすほど。

 ああ!!なんで学校のトラックってこう長いんだよ。もっと短くしろや。

 なんて文句を言っていても早くなんない。最後の最後で俺はそのコーナーをかける。ここからあとは一直線。もうここしか勝負はない。

 その直線。ごくわずか。極数秒。それはまるでスローモーション映像で見たようなシーンだった。一コマ一コマ。観客にはそう見えた。

 だから誰が一番乗りなのかもわかる人は分かるかもしれない。

 俺は三組の旗が揚がるのを確認してから負けたことを実感した。  

 「おい、まだ終わってねえぞ」

 あおむけに寝転がり俺は汗がだらだら状態の俊哉に手を引っ張られながらも起き上る。

 「完全に負けだ」

 「何言ってんだよ。まだ一種目終わっただけじゃねえかよ」

 「そうだな」

 あー、悔しい。悔しすぎる。

 大野たちにタオルなど受け取られながらも俺は心の中で呟く。

 二レース目は二組の圧勝だった。

 三組にバトンミスが二回もあったのが幸いだったのか悠々と一位で切り抜けられた。

 そして最終種目。

 ここまでポイントを総算すれば一組が4PT。二組が30PT。三組も30PT。四組9PT。五組6PT。六組14PT。七組3PTとなっている。

 借り物競争が始まる。

 先頭の大野は順調の滑り出し。更には楠川が三位と落ちるが新谷、吉岡、清田が巻き返し一位に。坂本、遠藤ともに平行のままでアンカーの俺を迎えた。

 第一レース同様、俊哉と一騎打ちの形となる。

 「さて、決着をつけようぜ」

 「おう」

 遠藤が借り物を役員に見せてOKをもらい俺にバトンを。

 三組の人も同じように俊哉へと。

 俺と俊哉の最終ラウンドが始まった。

 アンカー専用の借り物の封筒を取り、その場で封筒の中を見る。

 えっと・・・・俺の借りて来るものは・・・・・・・

 『え?』

 声が重なった。

 その人物は俊哉。俺と同様借りて来るものが意外だったのだろうか。けれど俺が借りて来るものはもはや借り物ではない。

 寧ろ借り人(・・・)と行った方が的確。

 「お前何?」

 「これ」

 俺が見せたものは例の封筒の中に入っていた紙切れ。そこにはこう書かれていた。

 『クラスでかわいいと思う女子をお姫様抱っこして連れてくる』

 どうやら俊哉も同じらしい。

 これなんかの嫌がらせじゃないでしょうね?違いますよね。

 案の定鈴川の手の込んだことかと思ったが知らないような顔をしていた。

 そりゃあそうだよな。これはどうみて体育委員がやったようにしか・・・・・・

 けれどあたふたしている場合じゃあない。俺行く!!

 と言ってもかわいいと思う女子って・・・・・・・

 1人だけ心当たりの女子が思い浮かぶ。

 また男子生徒に反感を買いそうだけれど・・・・・事実が事実だ!!

 俺は急いで自分のクラスのテントへと行く。

 「す、鈴川!!」

 「何?」

 ええい!!ありのままに!!

 俺は鈴川の手を引っ張りその勢いでお姫様抱っこをする。

 その光景にグランド中から口笛なりなんなり。けれどブーイングの方が多いのは俺の空耳としておこうか。

 よし、これで俊哉に・・・・・

 俺が勝ち誇ったと思ったら横から俊哉が来た。

 抱きかかえているのは賀川利華。 

 ・・・・・なんか物凄い光景になりましたね。

 「あら、利華。奇遇ね」

 「蘭じゃない。どうしたの?顔なんか赤くして」

 「え?私?か、顔なんて全然赤くないし」

 「あ?熱でもあるのかよ鈴川」

 「あるわけないでしょ。お酒の飲みすぎよ」

 法律に反することが最後にあったんですけれど・・・・・・

 「蓮司!!俺は負けねえぞ」

 「あ?俺だって負けねえよ」

 こういうとき鈴川がもっと軽かったら・・・・

 「ちなみに私の体重は標準以下だからね」

 やべ、口が滑った。

 「利華もずいぶん嬉しそうじゃん」

 「べ、別にそんなことないよ」

 赤くなってますよ。お嬢さん

 「いっけええええええ!!」

 「やべ!!鈴川、スピード上げるぞ」

 「そのままどこかへ攫って」

 ちょっとは黙れええええええええ!!

 そんなことをしながら俺は初めての体育祭を楽しんだ。







 あれから、俺と俊哉は同着となり、二組と三組の優勝となった。

 そんな文化祭初日の帰り道。俺は鈴川と共に家路をたどっていた。

 登校の時はリムジンであったが帰りは歩きがいいという鈴川の要望。

 という訳で二日目の材料の手配をした後俺たちはこうして校門をくぐった。

 行動沿いを歩いているとうちの学校の生徒がちらほら見られる。普段ならいったん離れて歩かなければ誤解が生まれるが今日にいたっては鈴川が俺の腕を握り締めて来るのでそんなことは無理。

 いったいどうしたのか。そんな事、俺が知っていたらとっくにこんな風に悩んでなんかいない。

 いや、いつもこうやってしてくるんだけれど今日にしてはなんか様子がおかしい気がする。メイド服でも着て頭がおかしくなったんじゃねえのか?お姫様抱っこされて頭をどこか撃ったんじゃねえのか?

 なんて考えるのは何処の馬鹿だ。そんなわけあるか。

 さてさて、いつ、こいつからの今日のメイド服にお姫様抱っこの質問攻めが来るのか俺は脳内でシュミレーションすることにした。

 しかし、それを阻むように。

 「ねえ、今日・・・・どうだった?」

 上目づかいで鈴川は聞いてくる。

 まるで、ダンスの発表会を終えた美女のように。

 これなのか・・・・・・これがお前が持てるわけなのか?

 なんかキラキラしているし口元も妙に緩くなってしまう。俺なに考えているんだよ!!

 いや、確かにこいつは可愛いよ。何度も俺に可愛い姿を見せて来たよ。けれど・・・・・・この表情はどこか違う。

 「なあ、何かあったのか?」

 「え?急にどうしたの?質問と違くない?」

 やっぱり変だ。テンパっているようにも見えるし・・・・・・

 「なんかあったんなら相談位しろよ。俺も満更お前を信用しているわけなんだし」

 こんなことを言うのもなんだけれどこいつには悲しい思いをもうさせたくないと思う。留学の件にいろいろあると思う。こいつにはもう悲しい思いをさせたくない。

 たとえ、こいつがどこへ行こうと。

 「まさか、瀬原君て悩みを抱えている女子の弱い人?そんなんじゃ軽い男って言われるわよ」

 「いつもの調子ならいいだろ。じゃあ、いくぞ」

 「え?どこに行くのよ」

 「決まってるだろ。俺んちで飯食えよ」

 とりあえずこいつと楽しい時間を過ごすか。

 「もー」

 ったく、鈍感な子ね。と鈴川はあきれながら言うのであった。

 こうして俺の文化祭初日は幕を閉じたのだった。

やっと文化祭にはいりましたよ。長いようで短いですね。あと・・・・4.5話で終了ですかね。

最近忙しいですけれどこうやって温かい目で見てくだされば自分も光栄です。

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