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平凡の、その先に。  作者: ちょむ
平凡な、日常。
1/9

平凡アイデンティティ

はじめましてな人も、お久しぶりな人も、こんにちは。ちょむでござい。

浮気したこの物語で息抜きになっていただければいいです。

よろしくお願いします。

 きっかけは、いつも突然だ。

運命的な出会いを果たしちゃうドラマだって、自分が成長したと感じることだって。ほら、言ってるじゃん。テレビという名の四角い箱の中でも。


「きっかけはーアジテレビ!」


 まあ、この場合のきっかけは何なのか良く理解できないけれどね。


 そんなことを考えながら、フッ素入りの歯磨き粉のついた歯ブラシで歯を磨く。朝のニュースを見ることに飽きてしまった私は、意味もなく歯みがき粉チューブの後ろ側を読み、目を開いた。



 うわ、この歯みがき粉、歯周病にも効くんだって、凄いね。さらに虫歯にも効くって?本当かな。いや、でも、私達にはそれが本当だと信じることしかできないわけで、まぁおそらくそれは本当のことなんだろう。そして、そんな万能な歯みがき粉を当たり前のように使い、かなりの安い値段で買っている私達は凄いのだろうな。



 洗面台へと移動し、鏡の中で冴えない顔をして歯ブラシをくわえる自分をながめつつ、歯みがき粉に惜しみない拍手を心の中で送る。すると、チラリ。鏡に人影が映った。



びくっ、と跳ねる肩。まままま、まさか、幽霊じゃないだろうか。いや、幽霊というものが存在するかということは、長い間考えられてきたことであるのだが、人間は死後の世界を知らないから、それを証明することは出来ない。…いや、今はそんなことを考えてる場合じゃないんだよ。だって今幽霊が………あれ?



「お姉ちゃん、遅刻するよ」


 振り向くと、少しだけ私に似た顔が呆れたようにこちらを見ていた。


 嗚呼、妹だ。小学四年生になるやたら生意気な妹。幽霊ではないことにほっと胸を撫でおろし、急いで口をゆすいだ。…よく考えたら、幽霊が出るのは夜じゃないか。いや、でも、幽霊は夜に出るというのは本当のことなのかってわけで……あぁ、やめやめ。


 ニヤニヤしながら遅刻だよーと憎たらしく言う妹にイライラしながら。


 …でも、怒らないよ。そんな大人気ない馬鹿なことしない。こいつより七歳も年上のお姉ちゃん、だし。



 はっとして時計を見れば、午前8時。私は制服のワイシャツの第一ボタンを開けたまま、やたら重いリュックをひっつかんで家を飛び出した。


「母さん、行ってきます!」


「いってらっしゃい!」


 バタンと閉めたドアの向こう、あんたも早くしなさい!と妹を急かす母の声がして口角が上がる。


 ざまぁみやがれ、妹め!お姉ちゃんに盾つくのが悪い!


 そう思った瞬間、ローファーをつっかけて転びそうになった。


 …妹の呪いだ。呪いとか、あんまり信じてないけれど。ただ単に私の不注意が原因なんだけれど。そもそも呪いの定義っていうのは……止めよう。また私の悪い癖だ。深く深く考えてしまう私の癖。考えることっていうことは、人より少し考えこみやすい私にとって邪魔なものなのだ。忙しい、私にとってはね。



 肩に食い込むリュックを背負い直して私は走り出す。今は学校に行かなくちゃ。走るのは得意じゃないんだけど。まぁ、全力を尽くそう。


 ダッシュすれば見えてきた、私の学校。


「今日はいけそうだな…!」


 遅刻をしないで済みそうだ。



 そう、これが、私、佐藤さとう りんの平凡で忙しい、いつもの朝なのです。



***



 ここでちょっと、私のことについて少しまとめてみようかと思う。


 私の名前は佐藤 鈴。すずって書くけど、『すず』じゃない。『りん』って読むんだよ。



 簡単に読めるように思う(実際簡単なんだけどな)私の名前は、大抵5割くらいの割合で間違われる。


 まぁ、別に気にしてないけど。いいんだけど。


 年齢は、青春真っ盛りの16歳。花の女子高生だ。かといって、私が花って訳じゃない。むしろ、雑草っぽい。例えるならそう、抜いても抜いても生えてくる別に花も何も咲かない雑草。どこでも、どこでだって沢山生えている雑草。そんなところかな。


 だって私、平凡だし。いや、平凡という言葉がどこからどこまでをさしているのかは難しいところだけど、私は自分を平凡だと思っている。



 え?何?もしかして、期待してた?

 例えば私が、何か能力を持っていて、とか。例えば私が、異世界でフラグをたてちゃう、とか。


 ないない。私はそんな凄い子じゃないんだよ。そこんとこ、よろしく。


 専業主婦の母、道子と、小学校教員の父、克明との間に産まれた、平凡、むしろ平凡よりちょっと下かもしれない、そんな子。勉強そこそこ、運動そこそこ。私はありふれた設定の、いわばモブキャラなんだ。


 通行人B、みたいな。いや、Cかな。いや、これは謙遜とかでなく。


 妹だって、そこそこだよ。…私より運動はできるけど。

…私をいちいちイライラさせるけど。



 妹の名前はらん

なんだろう、鈴とか全く関係ないじゃないか。まぁ、こんなところから両親のネーミングセンスが疑われるよね。


 強いて繋がりを言ってみるのなら、『り』と『ら』みたいな。

ということは、もし私にもう少し兄弟がいたとして、そいつらは『れん』だとか『ろん』だとか居たってことだろうか。


 ……れんはともかくとして、

ろんはないだろう。思い浮かぶのは、ハ〇ポタに出てくるあの子。


 話が逸れたね。まぁ、とどのつまり、私が言いたかったのは私が平凡なんだよっていうこと。


 能力なんてない、平凡な私。将来の夢は、のんびり生きること。欲を言ってしまえば、たくさんの本に囲まれて死にたい。


 婆くさい?うるさいなぁ。婆くさくたって何だって、これが私の夢なんだよ。平凡な日常があれば、それでかまわない。それが、私。


 私は平凡を愛しているのです。

 でも?だから?そして?語彙力が少ないから、どういう風に繋げたらいいか分からないや。

 でもまぁとりあえず、愛すべき平凡なこの日常が、ずっと続くと思っていたんだ。信じて、疑わなかった。




 アイツが、


「僕はミヤシロ ソウ。将来の夢は、世界征服。」


 来るまでは。







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