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EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season15 数字は嘘をつかない、嘘つきは数字を使う  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season15 数字は嘘をつかない、嘘つきは数字を使う
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プロローグ

[アスペクト・デザイン部/午後]



「これもまた坂辻(さかつじ)さんのデザインだってよ」

「すごいですね〜。さすがエース。社内コンペ、外しませんよね」

「ほんとだよ。次から次へと、よくアイデアが浮かぶよな」


掲示板の前に集まった社員たちの声が、ざわざわと耳に届く。


中央に貼られているのは、次回プレゼン用のデザイン案。


八木尾(やぎお)航(わたる)は、少し離れた場所からそのデザインを見つめていた。


(……まただ)


胸の奥が、静かに冷えていく。


(僕のデザインと、酷似している)


線の取り方。色の配置。余白の使い方。


偶然にしては、あまりにも重なりすぎている。


――これで何度目だ?

――1度や2度じゃない。


今まで、何も言わなかった。

言えなかった、と言った方が正しいのかもしれない。


だが今回は、違った。


八木尾(やぎお)は深く息を吸い、坂辻(さかつじ)陸斗(りくと)のもとへ歩み寄った。


「……坂辻(さかつじ)さん。少し、お時間いいですか」


坂辻(さかつじ)は一瞬だけ視線を逸らし、舌打ちをするように息を吐いた。


「何だよ。今忙しいんだけど」


「今回のコンペのデザインについて、聞きたいことがあります」


「……は?」


「そのデザインは、どこから浮かんだアイデアなんですか」


「なんでそんなこと、おまえに言わなきゃいけないんだ」


空気が、ぴたりと止まる。


「……あれは、僕が提出したデザインと酷似しています。

 今回だけじゃない。その前も、その前もです」


八木尾(やぎお)の声は、震えていなかった。


だが、抑え込んできた感情が、言葉となって溢れ出る。


「何度も、偶然が重なるとは思えない。

 あれは、僕のデザインを使った結果ですよね?」


「……」


「答えてください」


沈黙。


やがて坂辻(さかつじ)は、苛立ったように頭をかいた。


「……そうだよ」


八木尾(やぎお)は息を呑(の)む。


「おまえのデザインを、少し直して出した。

 そしたら、簡単に通っちまったんだよ」


「……なぜ、そんなことを」


「俺だって必死なんだよ!」


坂辻(さかつじ)は吐き捨てるように言った。


「だからさ……報酬、分けるから黙っててくれないか。

 俺の報酬の……3分の1……いや、半分やる」


「……報酬?」


八木尾(やぎお)の視線が、鋭くなる。


「今まで、いくらもらっていたんですか」


「だいたい……1本、10万くらいかな」


(……少ない)


八木尾(やぎお)は、心の中でそう思った。


「……いえ。報酬はいりません」


「は?」


「お金が欲しいわけじゃないので。いりません」


坂辻(さかつじ)は、戸惑ったような顔をした。


「その代わり」


八木尾(やぎお)は、まっすぐに坂辻(さかつじ)を見つめる。


「今回のプレゼン、必ず勝ち取ってください」


「……は?」


「そのあとで、全部ちゃんと確かめますから」


何を、どこまで、どうやって。


それは、まだ言葉にしなかった。


だが八木尾(やぎお)の中で、“確かめなければならない違和感”が、はっきりと形を持ち始めていた。

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