ep1 神様になんかなりたくない!
ep1
「はぁ!?神様大学には進学しないじゃと〜!?」
部屋にジジイの怒声が響き渡る。
「っせえな!でけえ声出すなよ!!」
「お前がわけわからんことを言うからじゃろ!!」
目の前でキレてるジジイは神様。
来月俺が卒業する予定の天使学校校長でもある。
「わけわからんってなんだよ!!俺はソッコー現場で叩き上げの"熾天使"になるんだよ!」
「熾天使だぁ!?神様の方がよっぽど凄いじゃろ!!」
「あー出た職業差別!!良いのかなぁ、一端の神様がそんなこと言って〜」
「うるさいうるさい!!お前が悪い!」
「意味わかんねえよ!」
「あの……」
「「ぁぁん!?」」
話を聞いていた大天使ミリュエルが眼鏡を上げた。
「このままでは話が平行線ですね」
「ミリュエルや〜。お主からもこの阿呆に何か言ってくれえ。神様大学の推薦を蹴って天使になるなど、考えられんよなぁ!?」
「大天使の立場から言わせてもらいますと、神様のその発言は確かに天使を見下しているように聞こえますね」
「だよねぇえ〜!ミリュエルさんはやっぱり話が分かるなぁ」
「い、いやいや!そんなことは無いよ!?ミリュエルにはものすご〜く助けてもらっとる!じゃが……なあ?せっかくの推薦じゃし……」
「やーいやーい」
「ただ……」
「アナタも、外の世界を知らない分際で"ソッコー熾天使になる"など、片腹痛いも甚だしいですね」
「えっ……」
「ハッキリ言って、そんな舐めた気持ちなら熾天使どころか、はたまた大天使どころか……」
「一等天使でさえ夢のまた夢。大人しくシコシコ勉強でもして神様になった方が身のためですよ」
「……舐めてなんかねえ」
「へぇ〜?舐めてないのにソッコー熾天使になるなどとのたまったので?」
「あぁ。俺は覚悟を持ってソッコーで熾天使になる。ならなきゃいけねえんだよ!!」
■■■■■
『約束だよ?』
「え?」
『私と……一緒に戦うの』
「え、僕が?」
『そうだよ。だってアナタは――』
■■■■■
「約束……しちまったからよ」
「ふむ……。そこまで言うのなら、その覚悟。見せてもらいましょう」
「え?儂を置いて話進めないで?」
「どう見せるってんだ!」
「今、下界のとある街に悪魔の反応が複数体集まっています」
「え、ミリュエルちゃんそこは……」
「1年あげましょう。1年の間に悪魔を一人、地獄に送り返したら認めてあげましょう」
「え、ちょ。勝手に、ねえ」
ミリュエルは再度眼鏡をクイッとする。
「まぁ?悪魔一人祓うのは一等天使でさえ数年かかることもありますし。ごめんなさいと言うのなら――」
「約束だな!大天使に二言はねえぞ?1年以内に悪魔を祓えば、俺を天使として正式に現場配属してくれんだな?」
「えぇ。そのときは二等天使からスタートでも良いですよ?」
「へへ、おもしれぇ。一人と言わず、全員地獄へ送り返してやるよ」
「ふふふ」
「へへへ」
「ねぇ。神様無視しないで?儂、神様よ?」
◆
「待ってろよ悪魔〜!!」
声をあげて部屋を出ていく背中を見送りながら、ミリュエルは眼鏡をあげた。
「行って……しまいましたね」
「いや『行ってしまいましたね』じゃねーわ!何勝手な約束してんの!?」
「いやー、つい」
「ねええぇ〜。どーすんのよ!もし万が一悪魔を祓っちゃったら、どーすんのよ!?」
「いやいや、たった1年で祓えるわけないじゃないですか。逆にこうでも言わないと、彼は納得しませんって」
「ちょっと待ってよぉ。怒られるの儂よ?アイツを神様にしろって"アティナ"に言われてんだから!!」
「アティナ様には、1年だけ待ってもらえば良いじゃないですか」
神様は頭を抱える。
「待つわけないじゃなぁ〜い!そもそも天使学校でさえアイツ、飛び級させろだのなんだの無茶言ってたのよ?」
「あら、神様頭頂部が少しお剥げに……」
「誰のせいだよ!!」
「うわぁあ〜ヤダヤダヤダ〜〜。アティナに会いたくないよぉ」
「あ、そうだ」
ミリュエルは眼鏡をくいっとする。
「神様も下界に行けば良いじゃないですか」
「下界〜?」
「今回の措置は特例ですし、そんな彼の監視役〜とか適当な報告書あげれば通るでしょ」
「でもなぁー。そんなことしてもアティナから逃げられるわけじゃ無いし……」
「アティナ様、今は下界への立ち入り禁止になってますよ」
「え、そうなの?」
「はい。どうもまた正式な稟議を上げずに人間同士の戦争を起こさせたらしくて」
神様は少しだけ考えて、拳をぽんっと叩いた。
「……あり、じゃな」
「とりあえず、支度しておきますね」
「よーし。アティナが来る前に……」
いざ、下界のバカンス。
日本へ!!
◆
日本 神無川県肌野市
「ここが悪魔の反応が複数あるっていう日本の肌野市か」
「はい。この街に少なくとも三体。悪魔の反応があるそうです」
「悪魔ね〜。勿論会ったことないけど……ってミリュエルさん!?何でここに!?」
「アナタのお目付け役です」
「儂もおるぞ」
「神様も!?!?」
「はい、これを着てください」
「え、なにこれ?」
「禍津高校の制服です」
「……?」
「今日からアナタはこの街で"天使 太郎"として禍津高校に通ってもらいます」
「え、何で?普通こういうのって動きやすいフリーターとか、よく公園に居る何をしているか分からないオッサンとして下界に降りてくるんじゃ?」
「やれやれ。ちゃんと千里眼で見ましたか?」
「千里眼?」
「悪魔の反応は、この禍津高校を中心として発生しています。だからこそ、アナタには転校生として潜入してもらうのです」
「潜入……」
「神様の力で全員記憶改竄しても良かったんじゃが」
神様は自分の髭を撫でる。
「儂がお前の父。ミリュエルが姉としてこの街に引っ越したことにすれば、話が早いじゃろ」
「えぇ……」
「ちゃんとお父様と呼べよ?」
「おえぇ……」
「あ、私は呼びませんので」
「ちょっとミリュエルちゃん!?」
「そっちのほうが、思春期の姉っぽいでしょう」
「ん、んん。確かに」
「なんかめんどくせぇな」
「ま!お前は正式に天使配属されたわけじゃない、特例じゃからな」
「儂らがお前の監視役として同行するってことで、なんとか許可を取ったんじゃ。感謝してほしいもんじゃわい」
「んー、それならしょうがねえか……ありがとう」
(嘘じゃけどな!!)
「それに、下界の欲望に負けて"堕天"しないか。も重要です。天使として、規律を守った行動をするように」
「……はーい」
「ふふ。安心してください。悪魔を祓って正式に天使として配属されれば、あとは自由です」
「……!そうだな。ソッコーで悪魔を祓ってやるぜ!」
こうして、天使になりたい少年"天使 太郎"の日本生活が始まる。
果たして太郎少年は無事に悪魔を祓えるのか?
そして天使になれるのか!?
★
「オィ!!!あのジジイどこ行ったんだよ!!?」
「え、えっと、その、それは……」
「モゴモゴしてんじゃねえ!!」
「痛っ!イタタターース!!」
「さっさとジジイを出せ。というか、私の可愛いエンジェルを出せ。神様学校に行かせるのも面倒くさくなってきたんだ」
「"アティナ"様!やめて!引っ張ったら抜ける!髪の毛が抜けまーーース!!」
「私がアイツは預かる。……最初からそうしとけば良かったんだ」
「そ、そんなこと言われても!!神様は今、下界に行ってまーーースううああ」
「……ア゙ぁ?」
「あの少年を連れて!!下界に行きましたーーーる!!」
「下界、だと?どういうことだ?」
「ひ、ひぃ。私は、私は関係ないのでーーす」
「さっさと説明しろッッ!!!」
ギョエエエェエエ………




