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異世界の住人が皆チート過ぎてチートがチートになってない件について【リメイク版】  作者: よしみん
第四章 女神激戦

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シロ大炎上

オイラはアシヲ――佐藤A、ヤマト大国の総理大臣だ。


……何で総理大臣なんかになってしまったのかと言うと、まあ、色々あったのだ。


女神を倒したあと、オイラは初めての村の周辺をまとめ上げ、【イズモ大国】を建てて王様になった。

ようやく一国一城の主だ。やればできる子だったのだ、オイラは。

……まあ、おっさんだけど。


ところが、それから半年。


隣国【ヤマト大国】のエーコ女王が、妙に落ち着いた顔でこう言ったのだ。


「政治が忙しいから、王様辞めて、ウチの総理大臣やって。……断ったらミサイル打ち込みます。」


意味が分からない。


いや本当に意味が分からない。


その一言で、せっかく作ったイズモ大国はヤマト大国と合併され、オイラはいつの間にか王様から総理大臣へと降格……いや昇格……? させられてしまった。


姉御、これは酷すぎるっす。


だが、あの怖いエーコ女王には逆らえない。

逆らったらミサイルどころか何をされるか分からない。


そんなわけで今、オイラと妻のシロは、ヤマト大国の総理大臣官邸――通称【白い家】で、ようやく訪れた休日を過ごしていた。


崩壊しかけていた国を立て直し、さらに合併に反対する旧イズモ国民までまとめ上げるため、オイラは毎日二十三時間働いた。


そして、ついに手に入れた休日。


オイラはソファーに寝転がり、死んだように昼寝していた。


その横で、妊娠八ヶ月のシロがスマートホン片手に誰かと話している。


ぼんやりした意識の中で、ある言葉だけが耳に引っかかった。


「オレオレ、オレだっピョン!」


……ん?


オイラは薄目を開けた。


大きなお腹を抱えたシロが、やけに男っぽい口調で「オレ」を連呼している。


ま、まさか――!


あの有名な詐欺では!?


「そうだピョン! すぐに持って来るピョン!」


あわわわわっ!


お前、サメとかを騙すのは上手かったけど、犯罪はダメだぞ!?


ピンポーン。


しばらくすると、玄関のベルが鳴った。


「来たピョン! なかなか早いピョン!」


シロがぴょんぴょん跳ねながら玄関へ向かう。


いやいやいや!

妊婦なんだから飛び跳ねるなよ!


……というか、家に呼んだのか!

犯行が大胆すぎだろ!


オイラが慌てて起き上がると、目の前のテーブルに紙パックが置かれた。


そこにはでかでかと書かれている。


【人参オレ】


しかも、超滋養強壮!夜のお供に! とまで書いてある。


……何これ。


「あの、シロ様」


息を荒くしながら、兎魔人(バニーサキュバス)のクロが説明を始めた。


「シロ様のアドバイス通りに、人参魔人(キャロットマン)をすり潰したものに、牛魔人(モーマン)のミルクを入れてみました」


やめろ、その原材料の説明は逆に不安になる。


「人参魔人はジュースにするとエグすぎて飲みにくかったのですが、ミルクを入れた途端に甘く優しい味へと変わりました。流石はシロ様、人参に造詣ぞうけいが深い! ウサギの中のウサギ! プリンセスオブバニーッバニー!」


クロは顔を真っ赤にし、はあはあと息を荒げる。


「……おっと失礼。つい興奮して語尾にバニーを付けてしまいましたバニー」


いや、いつも付いてるだろ。


シロは満足げに頷いた。


「ふふふっ! クロぴょん、素晴らしいピョン! では飲んでみるピョンね」


そう言って紙パックを持ち上げ、ストローを刺す。


ジュルルルルルルルルゥゥーーッ!!


すごい勢いだった。


一気に飲み干し、空になった紙パックがぐしゃっと潰れる。


オイラもクロも、その飲みっぷりにしばらく言葉を失った。


「ど、どうですか? シロ様……?」


クロが、若干引きながら感想を尋ねる。


「ピョン……」


シロが呟いた。


「え?」


「ピョンピョン……」


その場にうずくまり、ぷるぷる震えながら、シロが「ピョン」を繰り返す。


「おいシロ! 大丈夫か!?」


「シロ様! お気を確かに!」


オイラとクロが駆け寄る。


するとシロの全身から、じわじわとオレンジ色の怪しいオーラが立ちのぼり始めた。


「うわ……!?」


クロが一歩引く。


シロはぶるぶる震えながら、突然叫んだ。


「うっ……ピョン、うっ、産まれちゃうピョン!! ピョン! ピョン!!」


「産まれるって赤ちゃんか!? い、医者を呼べ!!」


「はい!!」


オイラが叫び、クロが猛ダッシュで飛び出していく。


だがその後ろで、シロはなぜか目をらんらんと輝かせていた。


「ふふっ! ふふふピョン! この感じっ! 人参のエネルギーが身体中にみなぎるこの感覚! これで全身全霊で出産に打ち込めるピョン!!」


ちょっと待て。


それ出産前の妊婦のテンションじゃない。


「アーッ! ミナギルピョン! ピョンピョンピョン!」


「もうすぐ誰か来るからな、落ち着け!」


必死に声をかけるが、シロの目は完全に危ない。


八ヶ月って早産だよな?

大丈夫か?

いやでも兎は一ヶ月で産むし、兎人ってどうなんだ?


そんなことを考えていて、オイラはあることに気づいた。


「あれ……?」


嫌な予感がした。


「そういえば、八ヶ月前って女神と戦う準備で忙しくて、オイラ家に帰ってなかったような……?」


シロが、びくんっと固まった。


それから、ものすごく怪しい目でこっちを見る。


「ア……アシヲぴょんの子だピョンよ?」


声が震えている。


「えっ!? まさかオイラの子じゃないの!?」


オイラが問い詰めた瞬間、シロの瞳がかっと見開いた。


ぷるぷる震えていたかと思うと、突然立ち上がる。


「こっ、この子はアシヲぴょんの子だピョンよ!? 疑うならこの家に火を付けるピョン!!」


「何でそうなるんだよ!?」


完全に話が飛んだ!


しかも人参パワーでシロの押しが強い!


「この子がアシヲぴょんの子なら、貴方の超幸運も受け継がれている! ならば燃え盛る中でも立派に産まれて来るはずです! ピョン!」


「いや! 確かに色々あっても他力本願で助かってきたけど、オイラは幸運っていうか悪運だからね!? だからって家を燃やす必要なくない!? この家、国家予算で建てたから! 放火とかマジでやめて!!」


発狂したシロにずんずん押され、オイラはそのまま玄関の外へと追い出された。


バタンッ!!


扉が閉まる。


総理大臣官邸専用のセキュリティでがっちがちの家だ。

内側から閉められたら、もう絶対に入れない。


そして次の瞬間。


家の中から、もくもくと煙が立ちのぼり始めた。


「うわあああああっ!!」


炎が上がる。


「あーっ!! 白い家が! オイラの白い家が燃えてるー!!」


違う、国の白い家だ!


「国民の血税で建てたのに……シロー!! 大丈夫かー!?」


バババババッ!


頭上から音がした。


見上げると、ヘリコプターが飛んできて、その中から白衣を着た鳥魔人(ガチョウマン)が飛び降りてきた。


白衣を着た鳥魔人――天才外科医スクナビコナである。


(外国語)『この天才外科医スクナビコナが来たからには大丈夫だ! この酒を飲めばどんな病やまいもイチコロよぉ!……うわっ! アチチチチッ! マジ熱い! 救急車を呼んでくれぇ〜!!』(外国語)


何を言ってるのか全然分からないまま、スクナビコナは酒瓶を片手に、翼で滑空し――そのまま燃え盛る屋根に墜落した。


「…………」


何しに来たんだろう、この人。


その時、クロが戻ってきた。


「アシヲ様! お医者様を呼んで来ました! ドクターヘリですぐ来るそうです! って、お医者様が燃えてる!? わーっ! 火事バニー! 大変バニー!」


「いや、呼んで来てほしかったのは産婆さんだからね!?」


外科医じゃないんだよ!


いやまあ、火傷治療には必要そうだけど、本人が燃えてるし!


「そ、それよりシロ! 大丈夫か!?」


すると。


ガチャリ。


燃え盛る玄関の扉が開いた。


「お待たせ……何とか産まれたピョン……」


シロがふらふらと現れた。


その腕には――赤ん坊が四人。


「四つ子!?」


シロがその場で倒れそうになり、オイラは慌てて駆け寄って支える。


シロはにこっと笑って、四人を見せた。


「ほら、この子達、アシヲぴょんソックリだピョンよ?」


「あ……あぁ……」


見れば、たしかにみんな愛らしい。


「本当にソックリだな……」


オイラは涙を流しながら答えた。


感動しすぎて、その時のオイラはまったく気づかなかった。


四つ子のうち、一人だけ妙にイケメンで、しかもオイラに全然似ていないことに。


その後、白い家の焼け跡から、黒焦げで瀕死の天才外科医スクナビコナが発見されたらしい。


だが彼はそこから奇跡の回復を遂げ、最先端の医療技術を広め、酒造技術を進歩させ、さらには四天王リーペに頼らなくても電子機器を生産できる科学技術まで確立して、国の近代化を一気に進めた。


その結果、オイラの仕事はさらに増えた。


そしてオイラは、過労で死んだ。


……あれ?


オイラ、何のために頑張ったんだろう?


なんか、おかしいなぁ。


オイラは現実世界に転生した後、異世界での経験を活かし、現実世界でも総理大臣となって様々な偉業を成し遂げるのだった。

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