貴族学校での生活⑥
数日後、エリリ義母さんから奴隷達が到着した事が手紙で届く。一族の名前は魔人種族が墨鴉、獣人種族が黒檀と決まりました。ですので、ボクア一族のギカク・コクタン一族のヤツフサになります。魔人種族なら鬼種だけでなくバンパイヤ種も同じです。義覚やヤツフサ達はエリリ義母さんとカインに良くしてくれているようでお礼の内容も書いてあった。老夫婦は最近体調を崩しているらしく、タイミング的にも義覚達は良かったみたいだ。以降はギルドを通じてそれぞれが仲間を増やしてくれるとありがたいね。
さて、今日は魔法の授業を受けてます。俺は使えないけど、黒耀が風魔法を使用するので普段は参観日のお母さん達の様に教室の後ろで立っているが今は俺の横に座って授業を受けている。驚いた事に黒耀さん意外に真面目に授業を受けてます、たまに、質問もしてるのよ、ほへ~意外やね。ただ思ったことがあって、この世界の魔法ってなんか変なんよね・・・なんていうんやろ限定的って言うんかな。ん~想像力が足らんっていうか・・・例えば風魔法はハンカチを浮かしたように自分を浮かすって言うのは無いのよね・・・出来ひんのかな?あとで黒曜に聞いて試してもらおう。
授業も終わり、この後はギルドに向かいます。実は、王都に来てから行くのは初めてですな。手紙は寮で出したり受け取ったりで行く必要がなかったし奴隷商人やヴェラ嬢と食事やお茶なんかで行けなかったのよね。ギルドに行く目的は冒険者登録通称ギルドマンになる為です。この世界には、商人ギルドや冒険者ギルドは商人課、冒険課となってます。建物も前世で言う市役所見たいな感じですね。王都のギルドだけあってめちゃめちゃでかいけど。
「冒険者登録は以上になります。他に用事がなければ、お帰り下さい。」
「ギルドマスターに会いたいのですが、都合が良い時間や日にちはありますか?」
いつもの如く、ヴェラ嬢から預かった案内状を見せてギルドマスターとの面会をお願いする。しばらくの沈黙後、受付のお姉さんが奥に行ったのでそのまま数分待っていると奥に案内される。
「はじめまして、シンガ・ド・ムートン君。ギルドマスターをしておる、ノワールと言うよろしくの・・ああ、いやいや、本当にそうなんじゃ。亡くなった母親が好きでの、付けられたんじゃよ。」
へ~そうなんだ?とノワールと名乗るスキンヘッドで多分、袈裟が似合うと思うお爺さんを眺めていたら、何故か言い訳をするみたいに言われた。
「ギルドマスターにお願いがあります。実は、僕がギルドマンとして活動するに当たり、懸念事項があります。それの対応に協力頂きたいのです。」
以前から考えていた事があってさ。偶々、ヴェラ嬢のお陰で奴隷の件等がめちゃくちゃ捗りましたが、本来はこちらの手順で行く予定だったんだよね。
「ふむ、すまんがのシンガ君と呼ばせてもらうが・・・これは、大丈夫かの?なかなかに大変だと思うのじゃがの」
「ですが、今後もギルドマンとして活動するなら憂いを絶つのに有効かと考えまして。」
俺の提案を聞いてノワール爺さんが苦い顔して見てくる。そりゃそうだ、俺が提案したのは、殴られ屋みたいなことだからだ。つまり、今後、ギルドマンとして活動するうえで必ず2種族との関りが今以上に出てくる、そうなった場合、いくらあの根性悪が禁止と言ってても何らか危害を加える奴は出てくるだろう。だったら、手合わせと言う項目で殴られてやればいい。もちろん、条件は付ける。場所はギルドの訓練所で手合わせ料を頂きますし怪我した治療費は相手持ち、一日3組、1分間とさせて頂きます。まぁ、ボコボコにされるやろな、でもそうすれば少しは溜飲も下がるし、自分たちが殴りたいなら他の奴の暴走も止めるでしょ・・・そうですよね皆さん?
「かなり危険じゃの・・・・分かった、許可しよう。ただ、わしも出来るだけ立ち合おうかの。なんせ、マルゴー公爵家の案内状を持っての登録者じゃし、なにかあれば、お互いこまるじゃろ。」
「ありがとうございます。ではさっそく、この後から始めたいのですが、告知等をお任せしても良いでしょうか?」
ギルドマスターが立ち会ってくれるなら最悪は回避できるしありがたい。告知等もお任せして早速、もっそいあった応募から3人から一人ずつ手合わせを行うことになった。・・・・考えがめちゃめちゃ甘かった事とヴェラ嬢達との絡みで気が緩んでいた。自分の存在がいかに嫌われているのか穢れの勇者が行った事がいかに2種族を傷つけていたかを再認識した。
「ぎゃあああああああああああああああ!!!!!」
【おい!シンガ大丈夫か!この、ちょっと待っていろ私がすぐに・・・この動け!ここから出せ!!】
俺の声が訓練所に響き渡る。一瞬で左腕が折られ、右目を潰された。手合わせ時は木剣で行っていたが熊の獣人でBランクギルドマンに関係なかった。両足を踏ん張り立ち上がろうとすると、胴を横なぎにされ吹っ飛び地面を転がる。口の中に砂利が入り、右目から流れる血が左の視界をも奪う。全身に走る痛みに力が入らずそのまま、地面に横たわる。レピには万が一相手を攻撃しないように魔法陣の中で大人しくしてもらっているが声の感じから暴れているのが分かる。
「そ、それまでじゃ!」
「ギルドマスターまだ時間はあるはずだ!まだ・・俺の時間だ。黒死病を患い絶望した妹の苦しみを・・金は払う!なぜ、助けたかった妹が自ら命を絶って・・・こいつを治すのか・・なぜだ!!・・おい!立て!この野郎!!!」
ギルドマスターの制止を振り切り、近づいてくる男が俺の背中に一撃を入れるとボギッっと背骨が折れる音が頭に響く、途中で意識は途切れていたと思うがその後も時間いっぱい俺は全身を殴られ血反吐を吐いた。聖王・聖女協会の聖女が回復魔法を使い癒してくれたが次の相手と対峙した時に木剣の先が震えているのが目に入り無意識に体が震えているのに気づいた。呼吸を整えようと息吹を行うが震えて出来ない、視線を相手に向ける。
(怖いよ・・でも、黒死病ステージ4の2種族はルクシオン砦から自ら特攻するんだろ・・もっと怖いよな。)
きっと、みんな泣いていたんだと思うよ。ルクシオン砦の事を聞いて、分かった気になっていただけで、居場所を作れたからってだけで・・目の前に立つ相手の目を見ると本気の殺意が込められているのが分かる。・・・大丈夫・・俺は大丈夫。みんなを恨まない、あの根性悪に俺にぶつけた痛みを必ず届ける。ああ、倍にして届けてやる。俺の容姿をワザと穢れの勇者と同じにした事を後悔させてやる。
始め!の声と同時に風魔法で腹を切り刻まれた。慌てて外に飛び出す内臓を抑えようとする両手が同じく風魔法で切断され地面に落ちて行く。どす黒い血が地面を染めて行くのを見ながら膝から崩れ落ちうつ伏せになった俺の頭が持ち上げられ相手と目が合う。少しづつ感じる死の気配を感じながら、猫耳のお姉さんから目が離せないでいる。
「これ、誰の提案か知らないけど、最高ね。・・・私は、両親がルクシオン砦から敵対勢力の陣地に特攻していく姿をこの目で見たのよ・・母が!父が!爆散するのを見ていた!お前が別人なんてどうでもいい!ああどうでもいいのよ!幾らでも、何回でもお金をはらうわ。だから、簡単に死なないでね?私からのお願いよ。」
そうか、そうだよな・・辛いよな・・・満面の笑みを浮かべるお姉さんが手を離し頭から地面に落ち踏まれた感触を感じた後に意識が途切れた。
次の相手は犬の獣人でお爺さんだった。目が見れなかった、この人はどんな過去があり、傷ついているんだろう。気づいたら地面に転がされていた。両足が踏み折られ、両腕も踏み折られていく。頭に足を乗せられてゆっくりと押し潰されていく。
「ワシは孫の最後をルクシオン砦で見届けた。涙ながら笑顔を向ける孫の顔が忘れられない。老い先短いワシに・・・長生きしてねと・・・殺してやるわい!何じゃ!・・・離せ!ワシは長くないんじゃ・・・頼む後生じゃ、孫の仇を・・・後生じゃ!!お前達も気持ちが分かるなら・・・」
俺は痛みをこらえながら他のギルドマンに連れていかれるお爺さんを見ていた。治療室で治療を受けながら考える・・・俺がしたことは本当に合っていたのか、余計なトラウマを嫌な感情を刺激しただけなのではないのか・・ほかにやりようがあったのではないのか?・・・
「シンガ君落ち着いたかの?体の痛みはどうじゃ?・・・以降も続けるのかの?」
「僕がしたことは、余計な事だったんでしょうか?」
「残念ながら、わしにも分からん。そもそも、2種族と人間は寿命が違う。わしらにとって千年前は昔でも彼らはたった千年前じゃからの、中には当事者も生きておるから感情が収まらん者もいるじゃろの。」
ギルドマスターの言葉に、考え込む。長命種族だから、当事者も居るんだ。それは思い至らなかったな。何もかもが足りていない。と言うより簡単に物事を考えてないか?自分本位的と言うか希望的な事と言うか・・・・・俺転生者だから死んだ理由は知らないけれど、前世ではそこそこの年齢だったと思うし、働いていた記憶?感覚?もある。・・・・やられた、思考も現在の年齢に引っ張られる可能性がある。多少は前世の年齢に近い事が考えられている感じでも、違うと思ってる方が良いみたいだ。
「続けます。ただ、問題が多すぎて解決策が浮かびません。ギルドマスターならどうしますか?なにかアドバイスは頂けそうでしょうか?」
「ん~アドバイスの・・・敢えて聞かなんだがのそもそも、なぜこのような事をしようと思ったのかの?」
ギルドマスターの言葉に俺なりの考えを説明する。お金を稼ぐ手段の一つとして考えていた事。自分の力量UPを考えていた事。2種族と関る事で学ぶ事があると思っていた事。2種族の自分への恨みの溜飲を下げる事が出来れば良いなと思っていた事等、考えていた事を話す。
「なるほどの、一応考えてはいたんじゃの。なら、今一番分かるミスはの・・・・同情したことじゃと思うの。シンガ君、対峙した時、終わった時に君は相手に同情や憐れみを感じていたの。良かったね、自分を痛めつける事で苦しみを和らげる事が出来るでしょう?と僕が代わりに慰めてあげると僕も一緒にに悲しんであげると・・・・・・見下したのじゃ」
「い、いや違います!そんな事は・事は・・・」
(そうか、辛いよな。・・・この人の過去に・・傷ついているんだろう・・)
対峙まえや対峙後の自分の気持ちがよみがえる。ああ、俺はなんて・・独りよがりのガキだったんだ。そりゃ、こんなガキに恨みのある容姿と同じ相手に憐れみを向けられたらキレるよな・・・
「続けるなら、取り合えずこうしてはどうかの?お金を貰うではなく、クエストに同行しギルドマンとしての知識を指導してもらう、その後に訓練所にて手合わせを行う。・・まずは、相手と、自分の事を知ってもらうことが大事じゃないかの。・・・・後、隣の部屋でガチギレしてる使い魔とも良く話をするんじゃの。」
ギルドマスターの言葉に分かってて無視している方向にチラっと視線を向けると長さ30メートル越えの大きな蛇が隣の部屋でギチギチになりながら、こちらを窓越しに見ている。
(これは、アカンやつや。見たことないキレ方してはる。・・・どないしょ(泣))
「ありがとうございます。ギルドマスターのアドバイスのやり方に変えようと思います。・・・では、失礼します。」
ギルドマスターに挨拶して部屋を出る。レピが俺の影に入り、ギルドから外に出ると黒耀が立っていた。
「よ!お疲れ~この後飯でもどう?もちろんシンガのおごりで。」
ツレのノリで食事に誘われて思わず笑いそうになる。レピは影に入ったままで出てくる気配はない。黒曜に誘われるまま食事に向かい特に話もせずに食事をする。終わると、寮に向かい歩き出す。道中も会話は無くただただ、歩く。
「さあ、話しをしよう。シンガ、レピ。私達は仲間でしょ?失敗も成功も共に分かち合いましょう。」
寮の部屋に入ると黒曜が今まで見た事のない真面目な雰囲気で伝えて来た。驚いているとレピが影から現れる。2人と1使い魔でお互いを見やり沈黙が流れる。
【ふ~、シンガ。お前さんに、・・・いや、私の事よりお前さんの気持ちを聞きたいね】
「気持ちか・・そうだね。・・・・考えが甘かった、あそこまで嫌われているとは思わなかった。いや、命を狙われているのは分かっているのに、いつもレピが助けてくれていたから、危機感が無かったんだ・・・痛かった、怖かったよ、死ぬと思った・・・ぼんどうに、じぬどおぼっだ。泣」
当たり前だよ。めちゃくちゃ痛かったし怖かった、死ぬと思った。映画やアニメ、漫画で体を斬られたりなシーンを見てきたし、仮想敵である、祖父母に殺されてきたけど現実とはもちろん違う。訓練場の出来事を思い出せば体が震える。
【それで、どうするのかね。ギルドマスターに言われた通りにクエストをこなし、手合わせは続けるのかね?私はね、出来れば他の方法を考えて欲しいと思っている。ヴェラ嬢に頼れば良いじゃないか、安全で確実だと思うがね。】
「私は、シンガがヒモだろうが、なんだろうが食事が出来れば気にしない。・・・ただ、レピと同じく出来れば危険な事はやめて欲しいと思ってはいる。」
レピの言葉は黒曜に聞こえないので俺が、黒曜に内容を伝える形になる。二人とも今のやり方や、今後のやり方に注文があるとすれば危険の無い方法と・・・・そりゃそうだよね。しかし、いつまでもヴェラ嬢に頼る訳にはいかないし、多少の危険はギルドマンになればあるからね。
「僕としては、ギルドマスターのアドバイスに従って、クエストを受けて指導してもらうのは今後の為にも必要だと思う。知識や経験はお金で買えないからね。手合わせは、レピにも参加して貰って、致命傷はさける感じかな?どうせ、敵対勢力との戦闘も考えるとやっておいて損は無いでしょ?」
俺なりの考えを2人に伝えるとしばらくの間、静寂が流れる。
【私はね、シンガ。分かって欲しいんだが、お前さんの希望を出来るだけかなえたやりたいと思っている。思っているが、危険は出来るだけ避けたいんだ。知識が必要なら、ヴェラ嬢にお抱えのギルドマンに指導してもらえば良い。ダメかね?】
「レピの意見に同意する。それが1番安全で確実だと思う。」
「で、僕はヴェラ嬢が居ないと何も出来ない男になるっと(笑)問題が起こる度に、ヴェラ嬢にお願いする。そんな一生を送るのか~ヴェラ嬢が誰かと結婚したら僕は終わりだね(笑)」
2人の意見に自虐的に答えると、気まずそうに視線を剃らされる。
「それとさ、レピには相談してたけど。僕はムートン男爵家を継がないと思うよ。弟のカインに譲る事になる。僕は行商人になって世界を巡る。だから自分で問題を解決する力が必要なんだ。その為にも2種族と絡み、学ぶのは必要だと思う。」
【分かった。私としては、余り危険な事はしないで欲しいがね。シンガの言葉にも一理あると思う。】
「仕方がない、美しく大人な素晴らしい可憐な私も反対はしない」
俺の言葉に、しばらく考えていた2人が頷く。
取りあえず、今後の方針は決まった。明日からも気持ちを切り替えて頑張って行こう。
それとは別に改めて思うことがある。治癒魔法ってすごいと、あれだけの怪我がほぼ一瞬で治るのに黒死病には無力なんだ。人種族が掛からないのは何故か?・・・なにかカラクリが有るのか?
アンチョビです。
10話をお届けします。
駄文ですが暖かい目でのんびりと見守ってください




