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BRAVE HEARTS  作者: 刹那翼
第5章 ブレイヴ・ハーツ
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それぞれの旅路へと 1/21

 俺は優勝後初めてチームルームに集まってもらった。氷牙以外、この真相を知らない。俺は口が固く開かないのがわかる。この最高の仲間達とのチームを……嫌なんだ。だが、男に二言はない。氷牙と交わした約束だ。


「……皆、突然集まってもらって申し訳ない。今日集まってもらったのは、俺から皆に言うべきことがあるんだ。このチームのキャプテンとして、最後の言葉だ」


 ニコニコしていた爽乃の顔は不安そうな顔になり、朗らかな顔をしていた椿の顔は淀む。そして、涼しげな顔をしていた恭介の表情は真剣な表情に変わった。


「……実は俺が倒れた時、俺が心の底で思っていたことを氷牙にだけ打ち明けたんだ。皆に話しても勿論良かった。でも、このチームの前のリーダーは氷牙だった。話が混雑するより、俺は氷牙にだけ打ち明けることを選択した。このことも本当に申し訳ないと思っている。氷牙は今のリーダーは俺だから、俺の好きにしろと言った。だから、今俺の決意を告げる。

 ……今日、この場をもって、『ブレイヴ・ハーツ』を解散する」


「……なんで、なんで早く言ってくれないんだよ。もっと、皆で一緒にもっと上を目指していけると思っていたのに」


 恭介が動転する。このチームを一番愛していたと言っても過言ではない恭介。表立ったことはしていないが、このチームの大黒柱。彼なくして、このチームは絶対に成り立たなかった。


「……恭介、正義を責めるな。恭介もわかっているだろ。俺も恭介を責めるつもりで言うんじゃないが、正義に闘うなと言ったのはお前だろ。それを踏まえて、この馬鹿キャプテンが無い頭で考えたんだ。許してやれよ」


「馬鹿は余計だろ。恭介、これは俺なりのケジメなんだ。チームメイト全員を巻き込むのは本当に申し訳ないと思う。でも、これ以外考えられなかったんだ」


 俺の考えを聞いた皆は黙り込む。次に口を開いたのは椿だった。


「私は、正義さんだけチームを抜けるなんて言うのは嫌です。なんていうか、私達が追い出したみたいな感じで。正義さんだけが抜けるなら、私も抜けたいです」


「椿ちゃんの意見に賛成」


「椿の意見を聞くと、確かにそうだな。正義だけの責任じゃなく、チーム全体の責任だ。だが、チームの皆に相談した上で決めてほしいよな。ちゃんと俺達はお前の意見は流したりしないし」


 椿の言葉によって、全員の意見が一致する。


「ごめん。過程を飛ばして結果だけを話されても困るよな。でも、これだけは言える。俺はこのチームで、『ブレイヴ・ハーツ』で良かった」


 俺はそう言った途端、脳裏に焼き付いた歴戦の記憶が走馬灯の如く目前を駆け巡った。

 完全敗北を喫した真霧との最初の闘い。これが運命の始まりだった。そして、初めての決闘。それは今でも親密な関係にある斎藤との出会いの場だった。それから、椿という新メンバーが加入した。紆余曲折の果てに得たのは、仲間との絶対に切れることのない絆だった。

 そして、チームの話し合いが完全に終わり、チームルームを出る。


「もう、この部屋ともお別れなんだな……」


 毎日笑いが絶えなかった部屋。一所懸命に作戦会議をした部屋。部屋に入ると、何かしらわいわいと盛り上がり賑やかだった。しかし今となっては空虚な空間と化している。何もない。

 氷牙は壁にもたれながら部屋を見ずにそっぽを向いている。恭介はなんとか泣くまいとしているが、ポロポロと涙が溢れ落ちている。爽乃と椿に至っては泣き崩れている。

 俺は、後悔していない。

 ……後悔は、していない。……してないはずなんだ……。


「……皆、ごめん。俺は、強がっていた。でも……実は、俺、ずっとこのチームでいたかった。俺はこの学園で最弱だった。でも、このチームだったからこそ強くなれた。本当に、本当に……最高のチームだった。だからこの部屋で色んな事をしてワイワイ盛り上がって、来年2連覇を目指したかった。なのに、なのに……本当に……ごめん」


 溢れ出す感情を制御できなかった。涙がボロボロと流れ落ちて止まらない。止められない。止まれよ。止まれって……。


「……はぁ。お前が、謝ることじゃねえだろ。お前は最後の最後までチームを導いてきたんだ。優勝に導いたんだ。俺達はお前を恨むことはできない。むしろ感謝しかできない。お前がいなけりゃ、いやこのチーム全員がいなけりゃ勝ち取れなかった栄誉なんだ。お前は本当に凄い奴だよ。胸を張れ」


 氷牙が俺を褒めるなんて夢にも思ってもいなかった。


「そうだよ……正義君がいなかったら、ここまで来れなかった。だから、謝らないでよ……」


 爽乃までそんなこと思っていたのか。


「俺達のことなら、心配するな。俺達だって思い残したことはない。これからは一人一人、自分の道を進んでいこう」


「勇敢な心、ブレイヴ・ハーツを胸に……ですよね」


 いつもの掛け声、『ブレイヴ・ハーツを胸に』。今となっては懐かしく感じる。


「今思えば、俺達はいつだってこのチーム名に支えられてきたな」


「あれ……?チーム名付けたの誰だったっけ」


「恭介じゃなかったか?」


「え、あれ?俺だっけ?」


「ったく、最後までグダグダだなぁ……」


「ホントですね」


 目から零れ落ちる涙。しかし、顔はいつしか晴れやかとなっていた。


「……これが俺達の勇気だよ」


 俺達は、光が、希望が満ちた未来への階段を、それぞれの旅路へと進んでいくのだ。


 もうすぐ、新たな仲間がこの学園に入ってくる。新たな時代が芽生え始めるんだ。

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