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BRAVE HEARTS  作者: 刹那翼
第5章 ブレイヴ・ハーツ
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未来を担う若者達 1/18

「……ここは?」


 周りを見渡すと、また保健室のベッドの上で俺は寝ていた。だが、今回は覚えている。俺は城ヶ峰とNOAHを真霧と倒し、その後真霧との決着を付けた。世界が崩れ行く中、重力魔法を使えるようになり、なんとか勝ち抜いたことを俺は覚えている。


「正義君、やっと起きた。おかえり。そして、おめでとう。貴方は勝ったんだよ」


 ベッドの前に座っていたのは、前と同じで駿河先輩だった。駿河先輩は優しく俺のことを抱き締めた。俺も駿河先輩の背中にゆっくりと手を回した。


「……駿河先輩、俺が勝てたのは、先輩のお陰です。先輩の言葉があったからこそ……」


「言葉……?」


「えーと、その、大好きだって聞いて、やるしかないなって……」


 俺は駿河先輩の言葉をそのまま思い出し、話している途中で照れ臭くなって、駿河先輩から手を放し顔を背ける。


「……バカ」


 その言葉を聞き、駿河先輩の方を見返すと、駿河先輩の顔は紅に染まっていた。俺はこの表情を見るまで気付かなかった。俺はこの女性に抱いていたのは、憧れだけではなく、恋でもあったのだと。手の届かない駿河先輩に認めてもらおうと、必死に頑張っていたのだとやっと気付いた。


「……俺、駿河先輩のことが好きです。俺と、付き合ってくれませんか?」


「……下の名前で呼んで」


 駿河先輩は俺が被っていた敷布団を取り上げて、真っ赤に染まった顔を必死に隠している。俺は息を大きく吸い込み、俺の中の全ての感情を目の前の女性に伝える。


「……雀さん。僕と付き合ってください」


「こちらこそお願いします」


 そうして、2人の間に照れ臭さによる沈黙が起こる。最初に口を開いたのは、雀だった。


「じゃあ、皆も正義君のこと待ってるし、外に出よっか。立ち上がれる?」


「はい、ゆっくりなら……」


 俺は言うことを全く聞かない体をゆっくりと動かす。そして、支えられながら保健室のドアを目指す。そして、自動ドアが開く。


「おお!MVPが目覚めたぞ!」


 俺は頭が真っ白になった。廊下中が大きな歓声に包まれていた。何が何だかさっぱりわからなかった。チームメイトと聖司が出迎えてくれるのかと思ったが、それだけではなかった。学園中の人が廊下に蔓延っていた。


「……良くやったな、キャプテン」


 氷牙が俺にそう言うと、チームの皆が頷く。


「皆、迷惑掛けて、ごめん。俺、勝ったよ」


 俺がそう言った瞬間に、チームメイトに揉みくちゃにされる。これ以上の最高の瞬間はなかった。

 その時だった。ある人物が俺達の目の前に現れた。それは意外にも城ヶ峰だった。

 険悪な雰囲気を感じ取った氷牙が俺を守ろうと俺の前に立つ。


「何の用だ」


「何もない。

 俺は、お前のことが全くもって気に入らなかった。だから何度もお前を退学にしようとした。冷姫を一度ログインできなくしたのも、退学手配をしたのも俺だ。理事長に頼まれてしたことだが、理事長のせいにしたくはない。実際に行動に移した俺が責任を負うべきだ。悪かった。

 そして、次は俺"達"が勝つ」


 俺は城ヶ峰との間にあった氷の壁が溶けるのを感じた。あいつも悪い奴ではないな。




「もう解っていますね、理事長。貴方はもう逃げられないと」


 私は豪華な扉を力強く開ける。その広い部屋の中で、いかにも高価そうな黒い椅子に座っているのは、虹村透理事長。

 子ども達が頑張ったんだ。後の処理は私がしなければならない。全ての証拠を集めた。NOAHを破壊する時に秘密裏に動いていた存在。そして、ボイスレコーダーである音声の録音に成功した。そして、理事長の前でその音声を再生する。


『NOAHの情報を盗んでいるのは、誰だ。まさか、『ラグナロク』に出場しているチームの中にいる、冷姫家の人間!

 私が殺したはずの冷姫霙が弟である冷姫氷牙に……!大空正義と共に退学処分にしておくべきだった!』


 私はそこで音声を止める。虹村理事長は観念したといった顔付きをした。


「何故、この計画を阻止する。財産を持った人間は、いつしか性格を腐らせ、そして地位の低い者を罵倒し、苦しめる。この計画の何が間違っている。いつか人工知能はその上層部の人間を蝕み、自滅させる。それの何が悪いのだ。私は世界へ問いかけたかった。お前達はそれで良いのか、と。世界を更生し直すべきなのだと。これが最後のチャンスだった。もう世界は人間の範疇を超えるスピードで進化している。これ以上は人間の手に負える範囲ではない。今こそ我々人類が創り出した英知に飲み込まれて、再認識すべきであるのだと。その機会を何故自ら奪う?」


「もう少し方法があったはずです。霙という関係のない人にまで殺害し、手を血の色に染めた。確かにあなたの言いたいことは私にも理解はできます。でも、やり方が間違っていた。あなたはただの殺人者だ」


「世界が阿鼻叫喚に包まれて、ようやく人は理解できる。それまでは可能性だけをただ列挙するだけで、行動は伴わない。それに果たして意味があるのか?答えはわかりきっているだろう?」


「人を動かすのは、恐怖だけじゃない。それは今回の決勝でわかったでしょう。

 それに、今回のラグナロクであなたも身に染みてわかったと思います。彼らにとって、夢というものがどれだけ偉大かを。そして仲間という存在が、絆という何よりも強くて透明な力が、彼らをどこまでも成長させるとあなたも気付いたでしょう。

 彼らは『ラグナロク』へ出場することを夢見ていました。そして、仲間への恩返しとしてラグナロクを優勝すること。

 大人の世界を知らない子どもは黙ってろってのが、大人の理論なんだろうけどさ、たまには子どもの可能性に賭けてみてもいいんじゃないですか?

 きっと彼らなら、世界を変えられる。私はそう信じてますよ」


「……そうだな。私の完敗だよ。

 私の子どもの頃を忘れていた。ただ一心不乱に今を生きていたあの日々を。

 今を生きている者は未来だって変えられる。

 君になら、任せてもいいかもしれないな。この学園を。

 頑張りたまえ、大空正義君。そう彼に伝えておいてくれ。そして、城ヶ峰君には君を利用して悪かったと」


 虹村理事長はその言葉を残し、この学園に2度と戻ることはなかった。

 これで、本当に全て終わったんだ。霙、霙の魂はちゃんと継承されて、願いが叶ったよ。満足かい?

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