短くて長い最高の旅路 1/17
「撃ってこいよ。第1席。ほら、俺に対して怯む理由がないだろ。俺は最弱なんだから」
「ほざけ、雑魚がァッ!」
あいつが煽り耐性皆無で良かった。再び、金色の雨が降ってくる。
「お前の、魔法無効化属性を宿した、剣と剣がぶつかり合ったら……さぁどうなる?」
俺は二本の向かってくる剣を、空中で体を捻らせながら掴み、体の回転に任せた二刀流で全ての剣を薙ぎ払う。N極同士またはS極同士の磁石を近づけたように反発し合って、お互いが触れることなく、弾け飛んだ。
「な、なんだと……!?こんな事が、あり得るのか……?」
「大空流最終奥義廻・螺旋双龍千本桜。
第1席の力って……こんなもんなのか?
真霧、落ちている剣を取れ。それなら、あいつの魔法に太刀打ち出来る」
俺は回転しながら高く飛び、全ての剣を反発させて撃ち落とした。
「お、大空君。君は、一体?」
俺は動揺する真霧に微笑む。
「弱者の足掻き、つまり下剋上さ。それ以外何でもない。それも、最後の、な」
これで、長かった長かった俺の戦いも終焉だ。本当に、短いようでとても長かった。
あれは『ラグナロク』総当たり戦2戦目が終わった時の事だった。俺は保健室で、氷牙だけに、いつしか芽生えていた決意を告げた。
『俺はもう闘ったら、皆に迷惑を掛ける。皆には、俺の苦しみや死という十字架を背負って生きてなんて欲しくない。このチームが存在するのはきっと今回で最後なんだ。俺の技も、氷牙や椿の実力も考慮すると絶対に。
実は心の片隅にこの思いがあった。チームがこのままバラバラになってしまうなら、『ブレイヴ・ハーツ』も解散で良いんじゃないかって。でもきっと思い入れがある氷牙が反対すると思って、胸にしまってきたんだ』
『そうか。この『ラグナロク』が終わったら、お前はチームを壊すって言うのか……』
『勝手な事言って悪いな。俺がこんな状態になっちまったからには、チームに迷惑をかける。駿河先輩にも止められたしな』
『今は、お前がチームの主将だ。全てお前の好きにすればいい。だが絶対に後悔だけは、するな。俺の言いたい事はそれだけだ』
悪いな、氷牙。それに恭介、爽乃、椿、音坂先生。俺は、この『ブレイヴ・ハーツ』で過ごした1年間を一生忘れない。
それは、短くて長い最高の旅路だったから。本当に楽しかったよ。そして、本当にありがとう。
「他の10席の奴らも全員倒せたからといって、調子に乗りやがってぇ!」
全フィールドの金属を使い、黄金の鎧を城ヶ峰は身に纏い始める。そして、かつてないほどの光を秘めた剣を創出する。だが……。
たった一人で勝てるわけがない。勝ちを分かち合う仲間、それを得る事自体が本当の勝利だ。
冷姫氷牙、鳳爽乃、榊原恭介、雪ノ下椿。彼ら達こそ、俺が得た宝であり、唯一無二のものだ。
「……俺は負けられない。夢を捨ててまで、未来を願った仲間がいるから。勝利を約束した仲間が待っているから。絶対お前を倒して、NOAHをブチのめす」
「クソがあぁぁぁぁあ!!!聖剣演舞!!!」
黄金の色に包まれた剣が、螺旋を描き始める。どでかいチェーンソーを彷彿させるような禍々しき回転音。まるで、呪怨の輪唱のように聴こえる。
「屈するな、正義君。俺達なら、できる」
「俺は1人じゃない、だろ?
……勿論、わかってるよ。真霧」
真霧はニヤッと笑う。昔の俺は1人だった。だが、今は最大の好敵手であり、最強の仲間がいる。心強い仲間達が。そして、彼らと歩んだ約1年間の思い出が。
「行くぞ!正義君!」
「ああ!」
真霧は崩れ行く世界の中、閃光のように走り始める。俺もその横を並行に走る。そして、光が鏡を反射するように、時が針を縫うように、聖剣の雨を避けるように、闇と光が混ざり合うように、俺達は最速のスピードでクロスを描いて走る。光と闇が交わる最終地点には、高く高く立ちはだかる第1席。
「「夜桜・盈月煌影双覇斬!!!」」
「殲聖滅神ノ御剣!!!」
エネルギーとエネルギーがぶつかり合う。今まで感じたことのない衝撃波が身体中を襲う。だが、俺達は一人じゃない!俺達はお互いを信じあっている!こいつをお前となら倒せると!!
城ヶ峰が創り出した剣で、城ヶ峰の5倍の刀身があろうかという最強の御剣。それと俺達が生み出した闇と光の剣がぶつかり合う。それがヒビが入り始め、ボロボロと崩れ始める。
「そんな、馬鹿な!ありえない!ありえない!ありえない!俺はお前達を認めない!お前達に負けたということを!」
「残念だな。負けを認めて、強くなったお前となら、もう一度闘いたいと思ったんだがな。負けを知って、人間は強くなるんだよ。
お前の敗因は、負けを、友と悔やむことを知らなかった。そして、認めなかった。それだけだ」
第1席は自身の嘆きと風と共に消えた。




