High-voltage 1/17
城ヶ峰との闘いを終えた瞬間、ホログラムが急に現れ出す。そのホログラムは徐々に光が集まって強くなり始める。まさか、これがNOAH。
女性の形でドレスを身に纏ったような白いベールで実際の姿が見えないが、第六感がNOAHだと訴えかける。これを壊しさえすれば。
「さぁ、正義君。これを壊して最後の戦いを始めよう」
「ああ、そうだな」
そう言って、城ヶ峰が生成した剣を置き、『双龍円月』を握った瞬間、NOAHが急に暴走を始める。
「な、なんだ!?」
「……まさか、NOAHの覚醒!?」
そんな、まさか、こんな時に!?
「真霧!コネクトだ!」
今ならまだ間に合うかもしれない!
「ああ!」
「「夜桜・盈月煌影双覇斬!!」
俺達の中で最強の技を解き放つ。
しかし、俺は光と闇が荒い布のように交わる中に、NOAHが華麗に攻撃を避ける姿を見た。1ミリたりとも無駄な動きはなく、1ミリたりともかすってすらいない。
「……完全なる覚醒だ。もうどうしようもない!」
「まだだ!双龍千本桜!」
NOAHは双龍千本桜も蝶が舞うように避ける。
「こんなの勝てっこねぇよ……俺の波魔法は対人間だからこそできた荒技。人間の心理を使っていただけだ。真霧、そっちはどうなんだ!良い方法はないか!」
「こっちも無理だ、正義君……。万事休すってやつだ。もうどうしようもない。こっちの攻撃がかすりもしないなんて……」
冷静沈着という言葉を表したかのような真霧だが、この時ばかりは歯を食いしばって悔しさを滲ませている。足掻きもここまでか……。
「正義君に真霧君、諦めちゃダメ!
私が勝利の糸口を、一瞬の隙を作る!だから前を向いて!」
遠くから叫ぶ声。そうだ。ラグナロク最終幕にまだ一人登場人物が残っていたじゃないか。俺の最高のメンバーの一人、鳳爽乃!
「頼んだぞ!爽乃ォッ!」
射撃音が計3回聞こえる。2発は俺と真霧への回復魔法。残りの1発はNOAH?しかし、最恐の人工知能は避けた気配すらない。むしろ、硬直状態と化している。
魔法力も回復した今がチャンス!俺は、反射的に光魔法・七剣戟を撃ち込み、更に双龍千本桜を擬似人間の胴体に食らわせる。そして、その直後、セブンブレイズだと悟ったNOAHが回避行動に移る。
「……正義君達、これを最後に聞いて。駿河先輩からのヒントとして聞いたのは、ある将棋の電脳戦で、ある棋士の人が敵陣に乗り込んだら使える成りというルールをあえて使わなかったの。そうしたら、人工知能にはそんなデータが入っていなかったから、負けた。逆に考えれば、人工知能に入っていないことをすれば、NOAHは倒せる!
だから、2人共、あとはよろしくね」
そう言って、爽乃は最終決戦の舞台から姿を消す。爽乃は絶対にしない行動、自滅を選択したのか。駿河先輩は爽乃にしかできないことだと言っていた。その理由はきっとメドゥーサズ・サイズという自分をすり抜ける鎌があるからだろう。近接武器は自分もすり抜けるスキルもある。しかし、遠距離に使用される武器は自分の体をすり抜けるスキルを使う必要性がない。だから。自滅などあり得ない決闘で銃で自分を攻撃することはまずない。そして、不具合を起こした。
目の前に出現している人工知能はデータを今もなお集めている。だからこのまま相手に理解できない攻撃を続ければいいのか!
「さあ、ここからが本番だ。行くぞ、NOAH。
月詠・変若水合成型桜花連斬!」
桜花連斬を無理矢理椿の技である月詠・変若水のモーションに似せる。似せることで攻撃回数が増える。しかし、狙いはそれではない。NOAHの情報にない行動をする。それがNOAHへの最大の攻撃。
奇怪な金属音のような機械音を響かせるバケモノ。爽乃が自滅してから、おかしくなっている。完全なる不具合。
俺は咄嗟に真霧とアイコンタクトをする。真霧もどうやらわかってくれているみたいだ。
「「夜桜・盈月煌影双覇斬×双龍深淵千本桜!!」」
夜桜に付け加えて、闇と光のセブンブレイズを同時出しして、2人のコネクト技での千本桜を炸裂させる。
NOAHは奇妙な機械音を放出しながら、崩壊する世界を光となって乱反射して消えていった。
その瞬間、大きな地震が起こる。
「おい、恭介!なんだこれは!」
『多分、データ記憶媒体が消えたから、世界を維持できなくなっているんだ!早くそこから出て!』
恭介が大きな声を張り上げる。
悪い、恭介。俺にはまだやらなくちゃならないことがある。
「真霧、決着を付けよう」




