インフェルノ 12/16
日にちがずれ込んだ影響で、『ラグナロク』は開幕式も素っ気なく始まる。初日は他のグループの試合だけだった。と言っても、1日2試合ずつしか行われないらしい。更には、1、2日置き。急ピッチで進めると言いつつ、どういうことなのだろうか。
今日のメインの決闘は1年生の3位決定戦を勝ち上がった『フォーチュン・ゴッデス』VSこの学園1位の実力を誇る『インフェルノ』。
この決闘は、俺達にとって悪夢だった。悪夢であって欲しかった。
「なんなんだよ、これ……」
あの強がりの氷牙でさえも、そう弱音を漏らした。椿は口に両手を充て、ぽかんと口を開けていた。爽乃は画面すら見たくないといった様子だった。恭介は整備士として魔法の正体を見破ろうとしていたが、完全に諦めムードだった。
誰もが唖然とする結果。会場が凍りついていた。歴然とした差は存在するのは確かだ。だが、ここまでなのか。
俺達が苦戦を強いられた『フォーチュン・ゴッデス』が瞬殺に屈したのだ。完封勝利だけでなく、試合時間は、たったの5分。盾道の守りも全く通じず、無限の領域内魔法無効化もベテランのごとし体術によって封じられ、十刹の放つ、狼のような弾丸さえ歯が立たなかった。
これが闇に包まれたベールをようやく脱いだ、学園最強のチーム『インフェルノ』。
第6席、檜皮狩矢。雷を操り、全ての弾丸を燃やし尽くし、超遠距離からの射撃で相手を跪かせた。ただでさえ扱うのが難しい雷魔法を、手懐けた馬と接するかのように支配している。
第4席、玄野武勇。水を自由に操り、学園最強の守りを誇る。体術まで長けていて、盾道と無限を瞬時に押し倒し無力化した。最も恐れるべき箇所は、主に回復にしか使われない水魔法を攻撃手段にし、敵を倒すところだろう。
そして、このチームリーダーで学園主席、城ヶ峰虎毅。1年にして、上級生2人をチームメンバーとして従える異常の中の異常。最強と謳われる地属性の魔法を扱う城ヶ峰は、十刹の弾丸を弱そうな盾を創造しただけで弾き飛ばした。氷牙を苦しめた弾丸が、まるでスーパーボールのように跳弾した。俺はその姿を想像すらできなかったし、目の当たりにもしたくなかった。
これが、学園精鋭チームの強さ。俺達は確かに強くなったが、奴らの強さを目にすると、到底勝ち目がないことを察知する。
「諦めちゃダメよ。私達はまだしも、君達にはもっと強くなってもらわなきゃ困るんだから」
絶望の淵に陥っていた俺の背後から話しかけてきたのは、駿河先輩だった。
「……無理ですよ。勝てっこない」
「この前、勝てっこない真霧君を相討ちに討ち取ったのは誰?」
「……俺です」
「じゃあ諦めないことね。私達にそんなムードでかかってこられちゃ困るんだから」
そう、俺達と駿河先輩は予選からぶつかる。親密なチームだからと言って、手加減はしない正々堂々と試合をしたいという駿河先輩の感情が伝わってくる。
「わかってます。怒られたくないから真剣にやりますよ」
「うん、それで良いんだよー」
駿河先輩は俺の髪を優しく撫でる。急な駿河先輩の行動に少し俺は照れてしまう。
『ラグナロク』決勝で勝ち上がれなかったチームが影でNOAH破壊計画を実行。そして、決勝の舞台で浮き彫りになったNOAHを叩くというのが、この作戦の成功。破壊計画には何が起こるかわからない。だからこそ、俺達には強くなってほしいと願われているのだろう。
インフェルノ。そのチームをさし置きながら、NOAHと闘わなければならないと思うとゾッとする。
城ヶ峰が偶然俺の横を通る。そして、俺の耳元でこう呟いた気がした。
『お前らはもう少しは楽しませてくれるよな』
俺はその刹那、怯えていた心が燃え滾り始めた。




