大空正義という男 12/13
速水流星。あの時は俺の音魔法でのちょっとした戦略で倒すことができたが、実際に対決してみると、途轍もなく手強い相手だ。遠距離戦が得意なのに、近距離でさえ俺も隙を突くことができない。いや、突く間隙すらない。歴戦の戦士。流石真霧のいるチームのメンバーと言っていい。しかし、その速水を一刻も早く倒さなければ、爽乃のHPがどんどん削られていく。あの怠惰な性格の紫ノ宮が本気を出すとここまで強いとは想像さえもしなかった。どうやらディメンションソードという技は、剣を投擲して一定の魔法力を使用すると、現在剣がある位置に自身が瞬間移動する技らしい。剣は2本あるため魔法が切れるまで永続的に瞬間移動できるというわけか。小学生でさえ、この能力が強いことに勘付くだろう。その上に『ダーク』の一員ともなると、ストレスしか溜まらない。
「よそ見している場合じゃないぞ!大空!
火魔法・七剣戟!」
「くそっ!光魔法・七剣戟!」
速水の怒涛の攻撃に息つく暇もない。しかも、魔法の質が速水の方が良いため、こちらが少しばかり劣勢に追いやられている。
……違う!読み間違えた!狙ったのは、7つの剣がぶつかったことで起きた爆風による、爽乃のスタン!
爽乃は身動きが取れなくなり、時空超越魔法の餌食となってしまい、ログアウトする。
くそっ!悪い、爽乃。俺は何もしてやれなかった。あの紫ノ宮の厄介な魔法のせいで何もかもが上手くいかない。背に腹は代えられない。もう、やるしかないんだ。連発することになっても、俺は構わない。
「俺はこれ以上邪魔されたくないんだ。負けたく、ないんだ。本気で行かせてもらう」
この俺の技は絶対に破れない。絶対に破らせない。
いつもより感覚が冴え渡る。この感じ、完璧な成功だ。そして、速水の攻撃スピードを超える。速水の必殺技を回避し、大空流参ノ型・桜花連斬で速水の体を真っ二つに切り裂く。速水の表情は最後の瞬間だけ変わった。俺の動きが見えていなかったのだ。
「……今、何をした?大空」
「弱者の足掻き」
その言葉に紫ノ宮は目をカッと見開いた。こいつはこの魔法のことに気付いている。多分次がこの闘いの最後になるに違いない。
「時空超越七剣戟!!」
紫ノ宮は空間を操作するだけでなく、武器召喚魔法の使い手か!だが、それだけでは押されない!
7つの剣を自由に飛び回る紫ノ宮。遂には、それで俺を囲む。それで良い。徐々に迫り来る剣。視界がスローモーションに見える。まるでスーパースローカメラで撮った映像を見ているかのよう。
紫ノ宮が瞬間で移動するなら、俺はその一瞬というボーダーラインを踏み越えれば良い!
「大空流終ノ型・千本桜!!」
7本の剣を瞬間移動する紫ノ宮の速さを超えることに、俺は成功する。俺の新技は、必ず破らせない。
「ぐっ、何故、何故俺を超えられるッ!」
「……それは最後の最後まで諦めない心があるからだ。最後まで諦めない者に勝利の女神は味方するはずだ」
「何故、お前は不毛な試合に手の内をさらけ出して闘おうとするんだ?」
「俺はこのチームのために勝ちたいんだ。俺のことを救ってくれた人のためにも。その中の1人に、真霧がいる。俺をここまで導いてくれた真霧のためにも、俺は勝たなければならなかった。それに切り札のお前だって、闘っているだろ?そういうことだ」
「……やはり、お前はそういう奴なんだな。思っていた通りだな、大空正義という男は。
さぁ、行けよ。俺と速水に勝ったんだ」
「ああ」
俺の背後で紫ノ宮が四散するのを感じた。




