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BRAVE HEARTS  作者: 刹那翼
第3章 嵐の前の静寂
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快刀乱麻と完全無欠 10/24

 コンコンと部屋をノックする音が聞こえる。誰だ?夜7時なんかにこのチームルームに来るなんて。


「どうぞー」


 俺はパソコンの電源を落としながら、部屋の外の人物に話しかける。


「おっ邪魔しまーす。悪いね、こんな時間に準備してたんだろ」


 邪魔するなら帰っ……て、あれ、この声、聞いたことがある。テレビか何かで聞いたことがある。

 俺は、急いで振り返り、部屋の入口を見る。


「聖先輩……?何故、こんなところに?」


 がっしりしたたくましい体の三年生。ただただオーラが違う。見ただけでわかる常軌を逸するほどのオーラ。威圧でも、奇怪でもない。こういう人が、人々を魅了するカリスマなのだと咄嗟とっさに悟る。少なくとも、常人ではない。駿河先輩は、真面目な話を切り出した途端に威圧を感じるが、彼は常時感じる。

 俺は、恐る恐る声を出すことしかできなかった。


「ある人からの頼みでな。君が、大空正義君だね?」


「はい、そうですけど……」


「君やチームの活躍はいつも耳に入っているよ。ひとまず『エルドラード』出場おめでとう」


「あ、ありがとうございます。お茶出しましょうか」


「あぁ、すまない。ありがとう」


 『寛容なる青龍』。それが彼に付けられた異名。全てを受け入れる寛大な性格で、チームをまとめ上げる強者。彼が指揮を執った試合の勝率は、八割を超える。今まで主席の座を奪い取ったことがない永遠の2番手、と思われがちだが、彼が指揮を投げ出して敵を倒しに行けば、圧倒的な差を見せつけて主席を勝ち取るだろうとも言われている。その理由には、この学園の成績にはリーダーとしての資質を問われることはなく、チームの成績や自身が倒した敵の数のみしか反映されないためだ。つまり、聖には敵を倒す機会が必然的に少なくなる(リーダー)に就いているデメリットを背負っている。城ヶ峰と聖のどちらが強いかなど全くわからない。


「君の試合は大体見せてもらったよ。しっかり相手を分析してから、決闘に挑んでいるのはわかったよ。

 だが、君は本当にそのままで良いのか?」


「……え?それはどういうことですか?」


「仲間達はそれで満足しているのか?満足しているなら、これ以上言うことはないけどねー」


 皆が満足する闘い方……?そんなこと微塵たりとも考えたことがなかった。ただチームが勝利することを念頭に置いて作戦を立てていた。


「どうやら、そんなこと考えてすらなかったみたいだな。これからは皆の意見もちゃんと聞いてから、決闘に挑んでみたらどうだ?

 ま、俺から言えるのはこれだけだ」


 一瞬だったが、聖先輩は少し失望したような顔付きを浮かべた。


「……それは前に屈辱の敗戦を喫した『フォーチュン』に同じメンバーに挑むとか、ですか?」


 俺はすぐさま、鋭い質問を入れてみる。すると、聖先輩は口角を上げた。


「わかってんじゃないか。要領が良いね。やっぱりうちの駿河が認めるだけあるよ、素質はあるようだ」


 まさかこれだけで褒められると思っていなかった。


「でも、本当にこれだけで?」


「大空君が考えているより、気持ちというパワーは戦略とは比べもんにならないぞ?あとはチームを信じることだな。

 君はどことなく、冷姫先輩に似ているな。きっと駿河もそこに惹かれたんだろうな」


 冷姫先輩……?冷姫といえば、氷牙じゃないのか?


「現在1年生なのにですか?」


「それは弟だよ。彼には姉がいたという話は聞いてないのか?」


 そう言えば、暗号の話を聞く時に姉がいるって言ってたな。あれ?『冷酷姫暗殺鎌メドゥーサズサイズ』を使用してた人物ってまさか。


「冷姫(みぞれ)。俺の1つ上だ。駿河はあんまり関わりがないが、俺達があの人の素晴らしさを保証するよ。彼女が亡くなってから、1年から2年か。惜しい人を亡くした」


 俺の中で全てが繋がった。氷牙が夏休みに墓参りに行ったのは、霙さんのため。何が起こったかは知らないが、氷牙にとっての恩人でもある。


「何故、俺がその人と似てるんですか?」


 聖先輩が俺の顔をジロジロと見る。俺も先輩から目を離さない。数秒後、先輩は姿勢を崩す。


「なんだかなぁ。雰囲気が一番近いかな。それと諦めない時の眼差しが特に似てるかな」


「……ありがとうございます」


「瞳の色が変わったね。俺が力になれたようで光栄だよ」


 俺は微笑む。

 俺が一番話さなければならなかった相手。俺は正直なところ、氷牙が俺達のことを本当に信じていると思っていなかった。心のどこかで猜疑心(さいぎしん)を抱いていることに気付いていた。

 俺はとうとう逃げられなくなった。面と向かって、あいつと話さなければならないと。

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