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BRAVE HEARTS  作者: 刹那翼
第2章 Road to El Dorado
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エルドラードと改革 10/17

 遂に今夜、全ての学年のエルドラード出場者が発表される。秋の涼しい夜を肌で感じていても、それとは違う理由で俺の体は震えていた。


「なんでそんなそわそわしてんだ、正義」


「だってよ、怖いじゃん?本当に出場出来るか」


 3日前の事だ。俺は先輩を馬鹿にされた事に痺れを切らし、学園第1席にラグナロクに出場して、そこでぶちのめすといった宣言を行ったのだ。今になって後悔し始めている。


「チーム順位では8位以内に入ってる。あんな宣戦布告があったとしても、あんまり影響出ないさ」


 氷牙は焦っている俺とは、対照的だ。のんびりとブレイヴハーツのチーム部屋のソファに腰を下ろしている。今は氷牙しかいない。


「それに、俺、実はというと、お前のあの言葉にスカッとしたし。

 今年出られなくても、あのうざい奴をぶちのめす機会は幾度となくある。あいつも同じ1年なんだし。

 それに、俺もエルドラードを通過して、闘わなければいけない人がいるからな」


「え、そんな奴いたのか?」


 初めて聞く氷牙の野望。そういや、氷牙は自分から自分の事を話したがらないような。


「あー、俺の憧れの存在がこの学園の中にいて、そいつは第5席の黒木賊くろとくさっていう人だ。

 俺が鎌を使うようになった契機の一人かな。まあ姉貴が一番なんだが」


 黒木賊士郎。『慇懃無礼(いんぎんぶれい)の魔術師』と呼ばれるその鎌使いは、言われてみれば、それとなく氷牙のモーションと似ている。しかし、黒木賊のメインスタイルはカウンター。カウンターだけでなく、トリックプレーも多い人物として有名だ。それ故に、敬意を込めて『魔術師』と呼ばれる。


「お前は戦いたい奴居ないのか?城ヶ峰を除いて」


 考えた事もない質問だったが、俺はすぐに答えが浮かんだ。


(ひじり)先輩かなぁ」


「聖龍牙(りゅうが)か。お前らしいな」


 氷牙はにやりと笑う。その表情を浮かべる氷牙に俺は呆れる。

 第2席、聖龍牙。その実力は学園屈指。この学園を見事全国優勝に導いた男は、戦闘はあまりしないものの、優れた状況判断、カリスマ性から一年生からチームを率いるリーダーとして活躍している。その男も、遂に今年でこの学園を去る。


「第2席だぞ?無理だとか思わないのか?」


 そう俺が言いとがめると、氷牙は真剣な表情になる。


「むしろ、チームメイトとして、俺も見てみたい。完全無欠の司令塔と快刀乱麻の指揮者。これ以上のベストバウトは無いと思うぜ?

 まあそりゃあ、この学園全体が望んでいるのは、真霧と城ヶ峰の戦いだろうが、試合全体としては完全にこれだろ」


 こいつは、本気で言っている。嘘偽りなど、この瞳には存在しない。この4ヶ月の深い友情がそう訴えている。


「お、モニター映ったぞ」


 テレビを適当なチャンネルに合わせていたが、学園が学校内の電波を全てジャックし、全てのチャンネルでこれが映るようになっている。だからこの時間に見たいテレビがあった人は、唯一の抜け道の録画を使うのだろう。それか、携帯端末で見るか。それはどうでもいい。

 とりあえず、名前をざっと確認する。


 ……あれ?


「な、無い!?」


 氷牙は長い溜息を吐き、呆れた声で言う。


「よく見てみろよ……」


「なんだ、まずは3年からか……」


 右上のテロップに『3年生の発表』と出ていた。体から変な汗がダラダラと流れている。


「たっだいまー!どう?」


 部屋に入ってきたのは、チームメイト残り3人。3人は今まで風呂に入っていたらしい。シャンプーか何かは知らないが、いい匂いが部屋を満たす。


「今始まったところだ。3年から発表だと」


「ほい、これ。買い出し行って来た」


 恭介はレジ袋をテーブルの上に置く。

 恭介は女子2人が風呂から上がる前に買い出しに行ってきたと付け加えた。


「ちゃんと好みに合わせた物を買ってきたよ」


「おっ、気が効くねぇ!」


 いつぞやのお前と違ってな。


「ありがとな、恭介」


「おう。金は貰うよ?」


「とか言って女子2人は?」


 そう言いながら、俺は女子勢2人の方を向く。


「「免除」」


 爽乃と椿はにっこりと笑う。したり顔とはこの事だ。まあ、買ってきてもらっただけありがたい。どこぞの奴と違って。


「まだ2年か、なげぇよ」


 早速、氷牙はコーラとマシュマロを取り出し、マシュマロを上に放り投げ、落下してきたのを口を大きく開けて口の中に入れた。


「スタメンどうします?」


「氷牙、爽っちゃん、椿ちゃんで良いんじゃね?まだ切り札を出すには早いだろうし」


 満場一致。俺はまだ出たくないという意味で賛成した。


「というか、なんでまだ決まってもないのに、これを決めるんだ?


 俺がツッコミを入れた瞬間、爽乃はテレビの前に走り込む。


「1年発表!」


 俺以外の4人がテレビを占領する。皆がテレビの前を塞ぎ見れない。


「おい、ちょっと、見れない、どうなの?」


「「「「………」」」」


 まさか……ないのか……?


 4人が顔を見合わせる。そして、一歩下がって、俺の顔を見る。


 その間をすり抜け、俺はテレビを見る。


『ダーククルセイダーズ』


『フォーチュン・ゴッデス』


『ドラゴンソウル』


『カロル・ポテンティア』


『ルーナ・ピエーナ』


ーー『ブレイヴ・ハーツ』ーー


『アルマドゥーラ』


『グラディウス』


 その文字を見た瞬間、一筋の涙が、俺の頬を伝った。


「「「「「よっしゃぁぁぁあああ」」」」」」


 部屋を壊すほどの歓声を起こす。それは、他のチームの部屋からも同様で、何の気兼ねなく、叫ぶ事が出来た。


「やった、やったよ!てか何でお前ら絶対行けるような事言っといてそんな喜んでんだよ」


 嬉しすぎて、自分でもびっくりするぐらい、早口になる。


「そんなこたぁ良いんだよ!」


 と言いながら、氷牙はコーラを手にした手を前に出す。続いて恭介、爽乃、椿の順番で飲み物を前に出す。俺は何も持ってなかったので、お茶が入った湯呑みを出す。


「なんでそれなんだよ、締まんないなぁ」


「ツッコミありがとう、恭介。……俺が言った方が良い感じか?

 じゃあ、エルドラード出場!これから突っ走るぞ!乾杯!」


「「「「乾杯!」」」」


 響きの良い音ではなく、ペットボトルのペシャッという音がこもっていたが、それはそれで良かった。こうしてチームで居られるのが居心地が良い。




「ところで、俺と正義から話があるんだけど」


 一通り落ち着いた頃、恭介が話を切り出す。


「恭介、今その話題出す?」


「そりゃあ、今しかないだろ」


 残り3人は困惑している。氷牙は腕を組みながら顔をしかめ、爽乃は首を傾け、椿はキョロキョロしていた。


「何の話だ?」


 恭介は俺に話せといった目線を寄せるので、咳払いをして話を始める。


「皆知っての通り、『エルドラード』から勝ち進んで、『ラグナロク』に出るとなると、今までの装備のままで、『ラグナロク』に出場することになる。

 『ラグナロク』には、息を潜めていた特待生が出てくるよな?そうなると、今の武器で戦えるか?俺達の目標は、1席を倒すこと。つまりこの学園の頂点を取ること。ならこのままで良いのか?」


 氷牙の『冷酷姫暗殺鎌メドゥーサズサイズ』や鳳の『イーグル301』、雪ノ下の『蓮華不知火』。前のチーム内喧嘩の時に俺が打ち明けたが、皆はあまり良い反応をしなかった。武器を変えたいが、固執したいという顔つきだった。

 だが、俺たちの目標は変わった。


「……否定したいところだが、無理だ。とても太刀打ち出来ない」


「そう、ですね」


「うん、私もそう思う」


 それぞれの意見が出たので、俺はこのまま話を続ける。


「そこで、だ。俺達はある武器の設定案を作ってある。これらは、一人一人の技術が必要になる。

 まずは肝心の恭介。この改革のコアだ。武器を最初から作り上げなければならない。勿論、整備士でもある俺も手伝うが、俺は戦闘メンバーでもあるから、率先してやって欲しい。それはもう相談済みだけどな。

 さて、戦闘メンバーだ。まずは氷牙。氷牙は、これからの模擬戦は目を塞いでもらう。これが次の武器を扱うポイントになる。お前の武器は、『見えない鎌』だ。少し無難だが、トリッキーな動きをしてもらいたい。

 爽乃。爽乃には色々な案が出た。もう少し射程距離を上げるか、それとも仲間にもアシスト能力を加える銃弾を用意する、とかね。最終的な案は、射撃衛星とライフルによる近接戦と長距離戦に対応したスタイル。そうなると、衛星、ライフル、スコープとあと1つだけしかスキルが余らなくなる。自己身体能力が更に重大になってくる。

 最後に椿。椿は『蓮華不知火』ともう1つの剣を使う、二刀流で闘ってもらう。こっそり二刀流を練習してたんだろ?前の試合の動きを見て、その判断に至った。『蓮華不知火』は、インフレしている現環境でも、劣り過ぎた武器では無いからな。

 ……まあ大体こんなもんだ」


 皆は俺が話している間はずっと黙って聞いていた。それからも質問は無い。これはどんな捉え方をすれば良いのか。


「おいおい、これで終わりって何だ?」


 口を開いたのは氷牙だ。何やら不満そうな声色だ。


「正義、お前は何をするんだ?」


 やっぱりそういう事か……。


「……今の今まで自分勝手な行動ばかり、本当に悪いと思っている。この3日間、俺なりに波魔法の使い道を考えていたんだ。光や音だけじゃ足りない。それ以上に

 今までだと、無音状態化とか位置錯乱とか色々使っていたが、他にも使えるんじゃないかと思い付いた。

 それは、疑似イミテーション体験エクスペリエンス






「どういうつもりだ!何故、『ブレイヴ・ハーツ』が出ている!?俺がわざと出場させないように仕向けたのに……」


「『エルドラード』に出る程の実力があって、故意に出さないのは俺達の沽券こけんに関わる事に気付かないのか?

 それに、わざと出さないというのは、負けるのが怖いからかな?城ヶ峰さんよっ」


「うっせぇんだよ、黙れ!おっさん!」


 そう言って、1年の甘ったれはツカツカと足音を故意に立てるように去っていった。


「おっさん、って酷いなぁ。これでもピチピチの高3なんだからねぇ。駿河ちゃんはどう思う?」


「まあ、あの子は口悪いですからね。特に先輩には。絶対的なリーダーを嫌ってるんだと思います。彼の共闘なんて見たことないですし……。

 それにピチピチって死語だと思います」


「あの子以上のエースは、この僕でも見た事が無いからね。

 って、ピチピチって死語なの!?駿河ちゃん、それ本当!?」


「本当です。ところで、聖先輩。貴方に会ってほしい人物がいるんです」


「……それは大空君かな?もうそんなステップまで来ているのか、彼は」

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