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薄命物語  作者: 真田 幸一
14/15

最終話 薄命物語

朝目が覚めると、栞が俺の肩に頭を乗せて寝ていた。

そうだ、俺達はこの町の巫女さんに『最愛の赤い糸のおまじない』をしてもらいに来たのだ。

そして、この旅館に泊まり、ぐっすりと眠った。

長い夢を見ていた気がする。

そんな感じがするほど、気持ち良く眠り、清々しい朝を迎えていた。


栞は目を覚ました。

「おはよう、幸一君」

「おはよう、栞」

肩を寄せ合って外の景色を見ている間に眠ってしまったようだ。

「そろそろ朝食の時間だな」

「うん」

うがい手洗い、顔洗い……を済ませて、フロントへと向かう。

そして、女将さんは圓華さんを呼んだ。圓華さんに案内されて食堂に向かった。既に席が用意されていて、そこには、『甲本様』という立て札があった。

半個室状態である。

「料理長の茉田です。以前、甲本豊さんに手解きを受けたものです」

栞の父親はどうやら料理人の間では有名な料理人らしい。

「和の茉田さんですね」

因みに、今回の旅行で、この旅館を選んだのは栞で、それは豊さんの推薦だった。

「あまり気にしなくて良いですよ」

「はい。普段通りの食事を娘さんにも味わって頂きたいと思います。どうぞごゆっくり、お召し上がりください」


あまり知らない豊さんの一面はこれから明かされていくだろう。

栞と結婚して、豊さんとお付き合いしていくうちに。

圓華さんがお鍋に点火した。

「こちらは、朝採り野菜と山菜、猪肉の鍋です」

通称牡丹鍋。

料理長が直々に料理を台車に乗せて持ってきた。

机に乗せるのは圓華さんの仕事。

「鮎の塩焼きと山菜のお粥です」

圓華さんは俺達に付きっきりである。

「こちらが、料理長本日のオススメの『牛の山菜包み蒸し』です」

普段通りの料理とは言ったが、料理長のフルコースのようだ。

栞は昔、料理長の料理を食べたことがあるようだ。

朝食中に仲居さんが付きっきりというのはこの旅館のサービスのようだ。

「料理長とは知り合いですか?」

「一度お会いしたことがあります。料理も食べたことがありますよ」

和の茉田と呼ばれる由縁を話始めた。

「父はとある会社の食堂部門で働いています」

そのとある会社は、とある商店街の中に本社があり、地域の問題解決、看板制作、社員食堂、などなどいろいろな事業を展開してきた。

その中でも、社員食堂が発展してできた食堂部門は、全国に支店を持つようになった。会社の社員食堂を運営したり、『なんでも食堂』という店を作ったりした。

そこで、本社の料理長クラスになると、転勤をするようになる。

新しい支店の支店長兼料理長として、その地域の住民のパートタイムの雇用(調理師免許取得のための経験を積む機会)や料理人の育成、そして新しい料理長の育成までを担当する。

また、大都市を中心に和、洋、中、他の料理の専門店を作り、その中の総料理長に甲本豊の名があった。

そして、和の料理長に茉田実、洋の料理長に轟晋三、中の料理長に森本幸二の名があった。

総料理長は2年に一度変わり、料理長は4年に一度変わる(総料理長への昇格もある)。

和の第二代料理長が甲本豊で、第三代料理長が茉田真である。初代総料理長は、大田益実であった。

この方はとある会社の幹部で、食堂部門長であった。管理監督が主な仕事である程度まとまるまで、幹部が管理するために置いた役職だったが、料理人としての実力はそれぞれの部門の料理長よりは劣るものの、和洋中露の料理を手掛ける実力があった。

広範囲に力を発揮できることにより、初代総料理長となった(それぞれの専門店では副料理長クラスの実力だった)。

さて、甲本豊さんに話を戻すと、要は和の料理長の先輩が甲本豊さんで、後輩に当たるのが、この旅館の料理長の茉田実さんということである。

「なるほど、そういうご関係でしたか」

なんでも食堂は一度辞めても、復帰する時は、以前の役職から、という制度がある。

元々はスキルアップのための会社だったのである。

だから自立を促す制度がとある会社にはある。

「世間は狭いのですね」

同感だ。

「この猪肉、全然臭みがないよ」

確かに獣肉は多少臭みがあるはずだが。どうやら、仕込みに何かしらの秘訣があるようだ。

というような批評をしながら、料理を堪能した。



部屋に戻ってゆっくりしていると、圓華さんがやって来た。

「それでは『最愛の赤い糸のおまじない』をします」

そう言って、俺と栞の小指に赤い糸を結び付け、何やら呪文を唱え始めた。

指に結んだ赤い糸を外して、おまじないは終わった。

「これでおまじないは終了です。この後はどうされますか?」

「チェックアウトは10時だったかな?」

もう一組のお客様はどうやら旅館のバスで最寄り駅まで送ってもらっているようだ。

「実はこの後、この旅館のスタッフの慰安旅行がありまして」

最寄り駅と言わずに、途中下車をしてもらっても構いませんということである。

20人用のバス一台で旅行である。

「どうしますか?」

「途中下車させてもらいます」


『最愛の赤い糸のおまじない』

とは、最愛の二人(婚約者、夫婦)が小指に赤い糸を結び、その状態でおまじないをするというもので、一昨年頃から、都市伝説ならぬ田舎伝説として、狭い世間で知られている。

俺達の場合は、親友の吉田幸一の婚約者、中森早貴さんの友人の話だった。


まあ、話題性はあるが、本当に生まれ変わっても再び会えるかどうかは分からない。

「あなたの前世が分かります」

というような占いと同程度の信憑性だろう。

でも、愛情表現の一つとして、「生まれ変わっても君とまた出会いたい」というようなものは、廃れないだろう。

さて、そんなことを考えながら、俺達は、旅館の関係者と一緒にバスに乗っている。

最後に女将さんが乗って、人数確認、そして、バスはゆっくりと動き出した。

東京方面へと……



「送って頂きありがとうございました」

「また旅館にいらしてくださいね」

「はい」

バスは駐車場を出て、坂を下り始めた。

ここは、G県の信越本線の終点である。

終点と言っても、昔は途中駅だった。

後ろに見える碓氷峠を列車は越えていたのだ。あっという間に、である。

現在はJR東日本のバスが横川~軽井沢間で運行されている。運賃は500円である。

さて、そのバスを待っているのだが、バスの時刻表を見ると、15分程時間があるようだ。

というわけで、『峠の釜めし』を求めて、横川駅前の『おぎのや本店』へと行くことにする。



『峠の釜めし』は価格は1000円で、具は鶏肉・ささがき牛蒡・椎茸・筍・ウズラの卵・グリーンピース・紅生姜・栗・杏が入っており、別にプラスチック容器に香の物として、キュウリ漬け・こぼう漬け・小ナス漬け・小梅漬け・わさび漬けが付いていた。

バスに乗り込み、『峠の釜めし』を食べる。


バスは発車時間になると、ゆっくりと発車した。

駐車場を右折して、鉄道の博物館の横の道を通り、そのまま山道を登って行く。

峠を登るにつれて、群馬県側の景色が良く見渡せるようになる。

山道を蛇行しながら峠を登っているから、左右の景色が入れ替わる。

峠を登りきったところにそれはあった。

県境の標識が……



軽井沢駅前の駐車場にバスは停まった。

その後、軽井沢駅からしなの鉄道で長野駅まで行く。

列車の出発まで、10分程時間があり、特に急ぐこともなく、列車に乗り換えられた。


軽井沢を出ると、林を抜け、田園風景が広がっていた。

後ろを見ると、浅間山の雄大な姿が見えた。

因みに、栞は俺の隣に座って寝ている。

右は田園風景、左は離れていく新幹線と谷が見える。


平原を過ぎると、斜め後ろから線路が近付いてきて、駅を1駅通過したら、小諸駅に着いた。

栞を起こして、列車を降りた。

5分で向かい側の列車に乗り換えである。

小諸駅はJR東日本の管轄で、小海線(八ヶ岳高原線)と連絡している。

因みに、さっき通過した駅は小海線の駅だったようだ。

さて、小諸駅を出発した列車は、上田市、千曲市を通過し、新幹線と合流して長野市に入る。

篠ノ井からはJR東日本信越本線であるが、長野駅まで直通である。

川中島という戦国時代に戦いがあったところを過ぎて、2駅目が長野駅である。


長野駅から長野電鉄で善光寺下まで行く。

長野駅付近は地下鉄で、JR信越本線、飯山線と立体交差をする前に地上へと出てくるらしい。

善光寺下駅から善光寺まで、坂を登ること5分、参道に合流した。お土産屋の前を通り過ぎて、門を過ぎ、善光寺の本殿に入る。

そこで、御守りを買い、参道を戻る。

ソフトクリーム屋で味噌ソフトクリームを注文して二人で食べた。

味噌と牛乳を合わせるとどんな味になるのか気になったが、とても美味しかった。

バス停に着くと、すぐに長野駅行きのバスが来た。

それに乗って、長野駅まで戻る。

途中、オリンピック関係の広場のようなものがあった。

10分もせずに、長野駅に着いた。


現在時刻‐15:00‐

駅ビルで土産物を買い、長野電鉄長野駅の切符売り場で『日本一大きい? 入場券』というものを買って、JR長野駅から、篠ノ井線、中央西線直通名古屋行きの特急列車に乗った。

途中の塩尻市はワインが有名で、駅のホームには、3つの樽が置かれていた。

線路が左右に分かれ、右が東京方面、左が名古屋方面である。

谷を進み、少し開けて来ると、岐阜県に入ったことが分かった。

中津川駅を出発し、約1時間、名古屋駅まで栞は眠っていた。


名古屋駅に着くと栞を起こして、列車を降りた。

新幹線に乗り換えて、博多まで行くのである。

長い旅が、もうすぐ終わりを迎える。

さすがに俺も眠くなったので、栞を窓側に座らせて、俺も眠った。




栞と博多駅で別れて(座ると眠るから、立っておくように言った)、俺は南福岡で降りた。

そして、いつもの250円のラーメン屋で、夕食を食べた。

家に帰り、長い旅が本当に終わったことを実感し、今回の旅行のことも、今書いている小説に書くことにし小説に書くことにした。

因みに、この小説は自分たちの実体験を交えながら、書いていたもので、なぜ書き始めたのか、を思い出せないのが不思議だが、書き終えることができた。

今思うと、30才までしか生きられない呪いをかけられた少女を好きになるっていう設定は、突拍子もないものだなと思う。



ED


そして、俺達は結婚して、大学を卒業して、栞は豊さんと同じく、なんでも会社の料理部門に、俺は日本環境保全会社に入社した。

大学時代に書いた小説はインターネットのとある投稿サイトに投稿した。


その小説のタイトルは『薄命物語』。



薄命物語 完


あとがき


初めまして、真田幸一です。

今回の物語『薄命物語』は大学時代の講義中に作った作品で、何故か次回作の『最愛物語 (作)吉田幸一』の方が早く完成してしまいました。

メインテーマは、恋愛、再会、前世、転生です。

『薄命物語』と『最愛物語』は、相互に関係していまして、『最愛物語』の設定を逆輸入したところもあります。

中学生編では、『薄命物語』は真田幸一と甲本栞の視点から、『最愛物語』では吉田幸一の視点から描かれています。

どうぞ、続編(外伝?)の『最愛物語』もよろしくお願いします。真田幸一の親友の吉田幸一が主人公の『最愛物語』の舞台は長野県のとある町です。宮原町は実際には違う名称で、町の様子も所々実際とは異なりますので、ご注意ください。


それと、時々表記がごちゃ混ぜになっている箇所があったと思います。


この小説をお読みいただいた読者の皆様に感謝し、あとがきを締めくくります。


2013年5月12日


真田幸一




次回作予告


神は精霊を遣わし、人間に異能の力を与える。

魔王は魔を放ち、災いをもたらす。

神と魔王の戦いに、人間が巻き込まれる。

『精霊物語』

制作開始。


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