#45
講堂にはたくさんの生徒達がおり、様々な分野の表彰や校長先生からのお話を終え、「以上で、全校集会を終わりにします」というアナウンスが流れた瞬間、結衣は手を上げた。
「中等部の3年6組で手を上げている人、何かご質問ですか?」
「ハイ!」
「では、壇上に」
あちこちでざわめきが起こる講堂内。
タブレット端末から見守っている僕を含めた一部の人物以外は何が始まるのか分からない状態だ。
「野澤さん……?」
「結衣、本当に……」
「ええ。こうさせていただかないと納得がいきませんの」
結衣は全校生徒からの視線を浴びながら壇上へ向かい、マイクを手に取った。
「みなさま、はじめまして。中等部3年の野澤 結衣と申します。本日はみなさまにお話がありまして、挙手させていただきました」
未だに落ち着かないざわめき。
その中で「静粛に!」というアナウンスが入る。
「みなさんは先日、この学校でいじめがきっかけで飛び降り自殺が起きたことはご存知でしょうか?」
「あっ、知ってる」
「俺も」
「わたくしは自殺した木野 友梨奈さんの親戚にあたる者です。おじさまやおばさまからお話を伺った時はとても悲しい気持ちになりました」
「「………………」」
「話を変えますが、篠田 エリカさん、壇上へ」
彼女がエリカを壇上にくるように指示を出し、エリカはしぶしぶと椅子から立ち上がり、そこへ向かう。
「篠田さん、きましたわね」
「呼び出したのはそっちじゃん」
「ええ。友梨奈さんを自殺に追い込んだ張本人は篠田 エリカさんです。彼女を中心とした中等部の3年6組です。そのため、代表として彼女を壇上に呼び出したのです」
結衣の所属するクラスメイトから「マジかよ!?」「……嘘……」「最低だね」という声があちこちで言われているようだ。
「友梨奈さんは靴を隠されても、誰かにワザと脚をかけられたとしても、先生に相談しようと思っていたらしいですが、いじめがエスカレートされるかどうか不安でずっと我慢してきたみたいです」
彼女が話した瞬間、瞳から涙が溢れている。
その時、彼女のクラスの生徒達は他のクラスからの視線を突き刺されている。
当の本人達は少し反省している者やすすり泣きをしている者がいる中で、結衣はエリカに視線を向けた。
「篠田さん、あちらをご覧なさい?」
「……えっ……」
「全校生徒と先生方がいる前で土下座してくださらない?」
「………………」
「あら、できないのかしら? さもないと、教育委員会に訴えますわよ?」
「……分かったよ……やればいいんでしょ……」
エリカはあちこちからざわめきが起きている中で「ごめんなさい」と言ったが、結衣は納得がいっていない模様。
それはそうだろう。
友梨奈さんを自殺に追い込んだ張本人なのだから、きちんと謝らないと割りに合わないと僕は思った。
「何を仰っているか分かりませんわね? もう1度、お願いできるかしら?」
「……ハイ……」
「みなさん、すみませんでした!」
彼女の声が講堂内に響き渡った時、結衣は肩を振るわせながら笑いを堪えている。
「野澤さん。ウチはいつまで頭を下げてなきゃならないの?」
「2、3分くらいかしら?」
「………………」
「もういいでしょう。頭を上げなさい」
「は、恥ずかしかった……」
彼女の指示でエリカは顔を赤くしながら頭を上げた。
「ところで、まもなく、1限目が始まりますが、中等部3年の野澤さんの要件はお済みですか?」
「ええ。大丈夫です」
「分かりました。本日の午前中の授業は50分から45分に短縮します。午後からは通常通りですので、ご了承ください」
授業時間短縮のアナウンスが何回か繰り返し流れる中、講堂から教室へ生徒達が戻っていった。
†
講堂に残っている生徒が結衣達になった時、エリカは悲しそうな表情を浮かべている。
「篠田さん、あなたが恥ずかしいことをしたからこんなことになりましたのよ?」
「ごめんなさい。本当に木野さんには悲しい思いをさせたから……」
「今になって後悔しても遅いですわ。友梨奈さんはもう還ってこないのですから」
「……だよね……」
「そうなのです。わたくしはあなたに謝っていただけたので、後悔はしていません」
「本当……?」
「きっと、友梨奈さんは許してくれると思いますわ」
「……きっと……?」
彼女はこう言うと、結衣は「ええ」と静かに頷いた。
その時、まひろ達に呼ばれた結衣はエリカと別れ、彼女らと教室へ向かった。
2017/08/13 本投稿




