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前兆
「刑部様。どうしてこうなる前に、私を呼ばなかったのですか!」
いつもの様に庭で琥珀とひなたぼっこをしていたら、薬師のおじさまの怒声が執務室から聞こえて来ました。
隣にいた琥珀は驚きのあまり固まっていました。
見事な毛繕いのポーズで。
私もかなりびっくりして尻尾が太くなってしまいました。
時が止まったって言うのはこういう事なのかしら?
庭師さんも手元が狂い枝切りハサミで枝の違うところを切っていたし。
既に大混乱です。ちなみに忍者さんは屋根から落ちて仲間に救出されてました。
落ち着いた頃に刑部様の様子を見に行くと、顔に包帯を巻かれてました。
どうやら発疹がでたらしいです。
「旦那様、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。大袈裟に包帯を巻かれただけだ。直に治ると思う」
刑部様が小石様に心配するなと言ってましたが、小石様はかなり心配そうでした。
もちろん私も心配です。
――後にあんな事が起こるなんて、この時は誰も知りませんでした。
執務室に落雷、時折怒声が響くでしょう。
尚、とばっちりに注意が必要です。