三十四話 ショウユ視点
もーう、嫌んなっちゃう! せっかく勇者を殺して、アントワーヌとかいう女の印象をぶち壊すついでに、和平も婚約も台無しにしてやろうと思ったのに!
ヴァーミナスに怒られて謹慎とかあり得ないわ、まったく! そもそも人間なんて良質な血を持ってるエサに過ぎないじゃないの。和平なんか結ぶより、ぜーんぶ奴隷にして働かせた方がよっぽど良いのに。
「退屈~。でも今抜け出して、これ以上ヴァーミナスを怒らせたくはないしなぁ」
ピピピ、と着信の音。携帯型の鏡を持ってるから、いつでもショウユに繋がるの。これがあったからヴァーミナスに止められちゃったんだけどね。
「やあショウユ、ほんとに勇者を殺しに行ったんだって? 君もよくやるねぇ」
ショウユは通信して来たパティにちょっと断りを入れて、カーテンの締め切られた部屋の中に転がしてあるクッションを引き寄せた。長い話の前にはクッションがないとね。
「ご機嫌よう、パトエワール。あなたこそ、例のアントワーヌに手を出して警告喰らったらしいじゃない? そのアントワーヌってどんな女なのよ?」
パティが手を出したのは、アントワーヌを探らせていた部下の報告で知っていた。噂程度だから、やっぱり本人から色々聞かないといけないわね。
「あれ? その部屋暗くない? 明かりはつけないの?」
「ごめんなさい、空気中の魔力が少なくってちゃんと明るくならないのよ」
ホント、あの太陽とかってふざけた存在も大ッ嫌い。ショウユの玉のようなお肌が焼けちゃうじゃないの。あ~あ~、なんでヴァーミナスがショウユを地上勤務にしたのかも、理由を聞いた今となっては嬉しさなんて残っちゃいないし。
「なるほどね。人間の作った物は嫌なのかな? ショウユらしいね」
当然じゃない。ショウユは最も古くから残るヴァンパイアの血筋の中でも直系なのよ? 人間如きを認める訳にはいかないの。
そう、一番強くてカッコイイヴァーミナスに釣り合うのは始祖の吸血鬼一族であるショウユだけなんだから!
「まーね。それよりアントワーヌの話をしてよ」
「そうだね~、容姿は知ってるよね? 話に聞くよりもずっと髪と心が美しく気高い人だったよ。好きになっちゃった」
「ふぅん。ショウユよりカワイイ? それとも孤高を気取ってるとか? 魔法がちょっと人間にしては上手いくらいで調子に乗って……」
パティの評価は惚れてしまうとあんまり当てに出来ないから、話半分に聞いときましょ。ショウユとパトエワールは同じように誘惑や隷属能力を持っていて、昔っからのお友達なのよ。
それに、パティの色んな精が混ざった血ってとっても美味しいのよね♪ 私からは領民とかお酒とか融通してあげてるし、持ちつ持たれつの良い関係よ。
「可愛さなら互角かな? 彼女ね、僕のこと最初女だと思い込んで魔力を弾けさせてくれたんだよ? フフッ♪」
「ウッソ~、そんなのヴァーミナスへの裏切りじゃない! まあパティが誤解させたのはわかるけど、案外お間抜けなのかしら? そこは付け入る隙ね、覚えて置きましょ」
「それとね、ショウユだから教えるけど、彼女に使ってるんだ、ヴァーミナス」
「使ってるって何を? 隷属魔法とか?」
「ううん、もっと凄い物。知ってるはずないだろうけど、僕はヴァーミナスからの命令でディマンテレイアを品種改良してたんだよね」
「それってマジ?! だったらアントワーヌはヴァーミナスに首っ丈になってるワケ?」
「違うんだ。実はね――アントワーヌ様は――」
「ふぅん。ありがとうパティ。あなたって本当に良いお友達だわ。でもどうして、そんなに素敵なお話をショウユに教えてくれたの?」
長い付き合いだからわかるけど、こんな危ない話を善意でしてくれるパティじゃないわ。せめてショウユにできることでお返ししてあげないと。
それにしても使える話ね……和平を成立させる為とかで、すぐには殺されたりディモルト城に繋がれたりしないらしいし、まだヴァーミナスを手に入れるチャンスはあるってことよね。
「それはもちろん、ショウユの力を借りたいからだよ。どうかな? ヴァーミナスとアンヌ様をしばらく引き離したいんだけど……協力してくれるかな?」
ショウユは聖女にも勇者にも謝るつもりなんて更々ナイしぃ~。もう怒られてるんだから、精々めちゃくちゃに引っ掻き回してやらなくっちゃ♪
「あら! そんなのお安い御用よ。むしろ願ったり叶ったりだわ。ヴァーミナス様にそばに居てってお願いすれば良いんだものね――ウフっ」
アンヌトワーヌなんて人間の小娘に、ヴァーミナス様は渡さないわ。パティはあくまで愛人希望だから良いの。遊びの関係ならいくらでも構わないけど、正妻として立って子供を産むのはショウユよ!
「ありがとうショウユ、また何かあったら伝えるよ。今度、美味しい血を飲ませてあげるね――バイ」
「バーイパティ♪」
さってと。その内ヴァンスが来るはずだから、お願いしなくっちゃ――可愛くお強請りよ。ショウユの我が侭、聞いてくれるに違いないんだから!
ヴァーミナスは思ったよりずっと早く会いに来てくれたわ。聖女に謝れなんて、いくらヴァンスのお願いでも嫌よ。
「ねえヴァーミナス様、そんなつまらないお話じゃなくて、アントワーヌ様のお話をしません? 例えば――」
「ショウユ……なんと言った? 誰にそのことを聞いたのだ?」
ああん、ヴァンスってば怒ると瞳が輝いてスッゴクカッコイイ! 因みにショウユとパティの仲は公にはしてないの。知られると結構メンド臭いからね~。
パティにはそんな隠してる相手はいっぱい居るし、パティ以外のディマにだってわかる奴にはわかることよ。
「あーら、そんなの誰でも良いじゃありません? だってちょっと目が良いディマならみんなにわかりますでしょ? ショウユだってお会いすればわかることでしょうし」
「それで……何が望みだ?」
「望みだなんて! おわかりでしょ? ショウユはヴァーミナス様と結ばれたいの。今ショウユを放って置いたら、寂しくってアントワーヌ様に会いに行ってしまうかもしれないわ。そして、口が滑ってしまいそう……フフっ」
ヴァーミナス様さえ居てくれたら、良い子にしてられるんだけどなぁ~? って付け足して。もう逆らえないわよね。だってヴァーミナスのしたことがアントワーヌにバレたら、きっと嫌われるでしょうし。いくらショウユだってちょっと許容範囲外だもの。
まあヴァーミナス様らしいけれどね♪ その強引なところもス・テ・キ!
「お主……我を脅すと言うのか?」
「脅すだなんてまさか! ショウユはお強請りしてるだけ。ヴァーミナス様がお決めになることだわ。ショウユは始めっから、投獄だってお咎めだって怖くないの。ショウユの本気は、勇者を襲ったことでも伝わってないのかしら? だったら、今度は聖女を殺せば良い?」
「チッ……忌々しい女め。和平さえなければ塵にしてやるものを――」
はあ、目の前でお怒りになるヴァーミナス様も……イイ!
今はショウユを鬱陶しく思っても、必ずいつかはショウユを選んでくださるわ。だってヴァーミナス様と結ばれようとする存在は、みーんなショウユが葬ってあげるんだから!
「ヴァーミナス様はショウユの価値をわかってくださってるわ。塵にするよりもお互いに利用しあったって良いでしょ? ヴァーミナス様次第で、人間に謝ってあげても良いのよ?」
「――良いだろう。毎日ここに来てやるから、大人しくしているのだぞ?」
キャアア! ヴァーミナスが、頭を撫でて――! こんなことしてくれたの初めてだわ!
もっと、もっとアントワーヌを出汁にして……いつかはヴァーミナスを虜にしちゃうわよ♪
「ええ、もちろんよ! だからアントワーヌ様には会いに行っちゃ嫌よ? ヴァンス様?」
上目遣いに見つめたら、すんごい唾棄されるようなお瞳で睨まれてしまったわ――。クールで誰にも靡かない姿勢が堪らないー!
もうヴァーミナスはショウユのことを考えずには居られない。それを恋にするだけのお仕事だわ。ショウユの旦那様はヴァンスって決まりなんだから♪
魔法剣士スズカ は勇者エミリオ と話合った。
スズカ の好感度に+10!
弓使いニニラ 僧侶スターシア にも考えを伝えた。
勇者一行 に[魔王への疑惑]が芽生えた。エミリオ への不信感が弱まった。
吸血鬼ショウユ の【襲撃】! 襲撃は失敗に終わった…。
夢魔パトエワール が現れた! パティ は魔法使いアンヌ の【転移】に割り込んだ!
続けてパティ の【お話】! アンヌ の中に[ヴァーミナスへの疑惑]が芽生えた。
アンヌ は混乱している。魔王ヴァーミナス への好感度が不明になった…。
ショウユ とパティ は友達だった。[協力関係]を新たに結んだ。
ショウユ の【お強請り】! 【お強請り】は成功した。
[毎日会いに来る]、[アンヌに会わない]を約束した。
ヴァーミナス の好感度に-20。
ショウユ の好感度に+20。
スズカ→エミリオ
関係:仲間 好感度+60 状態:好き 支えてあげなきゃ
アンヌ→ヴァーミナス
関係:婚約者 好感度:不明 状態:疑惑 混乱している
ショウユ→ヴァーミナス
関係:未来の旦那様(仮) 好感度+200 状態:大好き もっと構って♪
ヴァーミナス→ショウユ
関係:罪人 好感度-120 状態:侮蔑 和平とアンヌ優先