三十話 レプケの報告書その三
マズイ! 非常にマズイことになりましたぞ……。まさかあのノバティー様がアンヌ様に目をつけられるとは……余計なことをされては困ります!
独断ではありますが、私は城内の一角、研究塔にてノバティー伯爵をお訪ねしました。
「失礼致します、ノバティー様」
「やあレプケ、お見舞い申し上げるよ。何でもヴァーミナス様にこってり絞られた、って聞いたけど?」
「それはどうも……私がここに来た理由も言いたいことも、お見通しということですな?」
椅子の上でくつろぎながら実験を繰り返しているノバティー様は此方を見ていながら、机の上では手順通りに薬が混ぜられて行きます……。技術だけならば、ディマ国のトップは間違いなく彼でしょう。
「なんのこと? 僕は知っての通り、ずっと地上に行ってたからね……最新の情勢にはあまり詳しくないんだ」
「白々しいことを! アンヌ様に近づかないで頂きたいのです、魔王様が悲しまれます」
「そんなの知らないよ。君も義理堅いね? 確かアンヌ様に同情してたんじゃなかったのかい? 僕に言わせたら、アンヌ様の方がずっと可愛想だよ? あんなに素直にディマを信じているのに、何もかも嘘だらけじゃね」
「あの方は……不器用です。しかしお気持ちに偽りはないのです!」
「だったら、僕の気持ちにだって偽りは一つもないよ? ヴァーミナス様に遠慮なんてしてられないし、恋のライバルを蹴落とすのは当たり前――だろう?」
むむむぅ……埒が明きません。この方が居るとヴァーミナス様の計画に支障が出ます。相手が悪過ぎる――よりにもよって、両性夢魔にして魔法薬、薬草学の権威――彼の目は誤魔化せていないでしょう。
「どうすれば手を出さない、と約束して頂けるのでしょうか?」
「約束は出来ないけど~、君とは一度夜を過ごしてみたいな♪」
ノバティー様は唇に人差し指を当て、パチンと音が鳴りそうなウィンクを飛ばしましたが、無視します。この手合いは相手にしてはいけません。
「わかっておりました……諦めましょう」
「あれ、もう帰るの? もっとゆっくりして行きなよ?」
ノバティー様が羽を広げ……即座にふわ、と香る甘い匂いに吐き気を抑えます。クブス族特有の誘惑体臭――角を持つ種族は浄毒と感知に優れるため、効果がありません。
それでも彼は、角を持つ種族までも魅了してしまいますが。
「私には効きませんぞ。本っ当に見境がありませんな」
「しつれーだなぁ! 僕にも好みってものがあるんだよ?」
信じられると思いますか? ゾンビでも魔物でも交わるだなんて……両性を持っているから云々ではありません!
「アンヌ様に本気と仰いましたが、魔王様はもうよろしいのですか? あんなに熱心だったのに、アンヌ様に懸想しては到底叶いませんぞ?」
「え? 良い訳ないだろ? どうせだから、お二人共一緒に手に入ったら最高だよねぇ? あ、愛人で構わないって意味だよ、もちろん。ヴァーミナス様だって僕のおかげでアンヌ様から愛されたなら、愛人にぐらいはしてくれると思ってるんだけど……甘いかな~?」
チッ、魔王様の性格をよくわかってらっしゃる……アンヌ様は独り占めしたくても、ご本人の体を褒美にするくらい、なんとも思わないでしょうな。むしろ面倒がなくて良い。とか言いそうです……。
「忌々しい方ですな。あなたの心づもりはわかりました。それでは失礼致します」
「まったね~、レプケデッド♪ ジェリアータによろしく言っといて」
手を振られて見送られますが、何故ジェリアータ様? できれば私は二度と会いたくない方なのですが……。
そうだ、気分直しに街へ行きましょう! こんな時はあれです!
「ハァイ、レプケちゃん♪ こんなとこで会うなんて運命は悪戯好きネっ」
ヒイェえ! なんで早速遭うんですか~! 誤字ではありません、酷い災難ですからな!
「帰ります! 途中にして来た実験が――」
「ヤダヤダァ! 一回くらい遊んでからにしましょうヨ! レプケちゃんってすっごくお上手なんでしょう~? ジェリー見せて欲しいナー」
袖を掴まれて引き留められた手を、ぞんざいに振り払います。
「近寄らないでください!」
「きゃっ、ごめんなさい」
……今震えてしまえば、食われる!
因みに、地上にも娯楽施設はありますよね。ここは魔術の腕を測れる娯楽用の機械が設置してあり、休日によく利用しているのですが……何故今日に限って遭うんですか! 誤字では以下略。
「まあ遊びに来た訳ですし……ジェリアータ様が居て邪魔という訳でもありませんし……やりますか!」
この気分を晴らしてくれるのは、『ディマ・ディム・ディッド・リー』だけですな! 直訳すると魔族、魔法、魔術、一でございます。
遊び方は至ってシンプル。魔力を使って自分のキャラクターを操り、ゴールに至るまでの速さを記録して遊ぶゲームです。
コインを入れて……最初に流れるランキング! これの最も難しいコースのトップを飾るのが私レプケ――ジェリアータとな?
「ごめんなさい、レプケちゃんを待つ間暇だったから、つい……これって楽しいわネ?」
く、くくく悔しい~~~! 第一、口元に手を当てて恥らって見せてもまるで可愛くない! こうしては居られません。この記録を抜いて、再びトップに返り咲かなければ!
あ、因みにこのゲームは貴族お断りです。庶民がわいわい楽しんでいるところに、上手くて当たり前の貴族が割り込んで、決して下々の者には抜けない記録を打ち立てて去って行く――スマートではありませんからな。
私は技術にしか優れていないので、魔力量も必要なゲームでは記録があまり伸びません。故にお目こぼし頂いてます。
「最近はアンヌ様にかかりきりでしたからな、まずは小手調べ……」
一番難しいコースではなく、その下を選択します。別に自信がないとかではなく、いつもこうしているのですよ。本当ですからな?
「やん、上手ッ! うう……ダメっ」
集中できません! 騒音で邪魔をしてくるとは小癪な――いえ、負けませんぞ!
記録はまあまあと言ったところでしょう。ベストには程遠いですが……これからが本番ですからな!
あ、連コインしなくてもここはクリアすればワンコインでツープレイできる、庶民のお財布に優しいお店なのです。マナーは守りましょう。今は野次馬こそ集まって居ますが、誰もプレイ待ちの場所には並んでいません。
それは、“あれ”と元レコードホルダーの直後に遊びたいなんて奇特なディマも居ないでしょう。奇特の意味が間違ってる? 遭ってる、違った。私は正しいと思いますけどね。
「んんっ……すみませんが、プレイしている間はお静かに願います。マナーですぞ!」
「あら、ごめんなさい……あたくしったらつい興奮しちゃって。ヤアねェ、しばらくお口にチャックしておくワ!」
だから、そんな仕草をしても可愛くないと!!!
いや、落ち着きなさいレプケ――クールにならなければ、この後に差し支えます。よし、スタート!
「よっ、――ホイっと。……行ったーーー!」
「やだぁレプケちゃんてば、ほんとにお上手! ジェリー惚れ直しちゃったワ~!」
ニュウ、レコゥド――ハッ?! 惚れ直し……っ?! な、これではますます状況は悪化してしまいます! な、何故こんなことに~?!
「そうです、どうしてジェリアータ様はこちらにいらしたんですか?」
「もう、ジェリーって呼・ん・で。あの男女の言う通りにするのは癪だったけど、来てみたらほんとにレプケちゃんが常連さんだって言うから、つい……邪魔しちゃったけど、許してネ?」
のばてぃ~めぇ~! だ、だからジェリアータによろしくなどとっ! きぇぇええ、あいつ嫌い! こういうことするんですよ、もお~嫌いッ。
どうすれば良いんですか、このオカマさんを! しかもお気に入りの店までばらしちゃってぇ――くすん。
「――今日の目的は果たされました。ではさらばですっ」
「あっ、待ってよォ~。レプケちゃんったらァー。恥ずかしがり屋さんなんだから……カ・ワ・イ・イぞ。ハートマーク」
鳥肌が――一瞬で、全身にっ。身の危険を感じます……力では勝てない――となれば。
「逃げるが勝ちですぞぉ~」
人ごみに紛れ、小さい体の利点を生かしてなんとか撒けましたか――。
あっ、今回は私の無事をご報告したかっただけです。はい、嘘でございます。ではでは皆様方、また次回の報告まで――。
「どこに隠れたのカナ~?」
びくゥっ! ま、魔力捜索されてる……この人ごみなのに――なんという執念。では、ちょっと逃げ切って参ります故――これにて失礼しますっ!!
魔法使いアンヌ は夢魔パトエワール と出会った。初会の試し!
アンヌ はパティ の魔術に感心した。 親愛の挨拶! 好感度が5上がった。
パティ は実は両性具有だった! 非常識な恋愛をしていた。 アンヌの好感度が5下がった。
魔王ヴァーミナス は怒った! アンヌ の【弁解】! 弁解は成功した。
ヴァーミナス は謝罪の証にお出かけを求めた。
アンヌ はヴァーミナス と[お弁当を作ってデート]の約束をした。 アンヌ の好感度が10上がった。
魔法研究者レプケ は薬草学士パトエワール に会いに行った。話し合いは決裂に終わった…。
レプケ は街で服飾士ジェリアータ と出遭った!
レプケ の『D・D・D・R』! 記録を塗り替えた!
ジェリアータ の好感度が+20!
レプケ の好感度に致命的なダメージ! パティ への好感度はもう下がらない!
レプケ はジェリアータ に怯えている…。
アンヌ→ヴァーミナス
関係:婚約者 好感度+110 状態:好き 男性として見ている
アンヌ→パトエワール
関係:知人 好感度±0 状態:警戒 人格を疑っている
レプケ→パトエワール
関係:研究者仲間 好感度-300 状態:大嫌い とにかく嫌い
ジェリアータ→レプケ
関係:運命の二人 好感度+350 状態:メロメロ 好きにして良いのヨ。ハートマーク




