↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/51

二十話 レプケの報告書その二

 皆様お久しぶりです、レプケでございます。前回はどうも黙っていてくださりありがとうございました!

 何をだって? もうおわかりになっていらすのに言わせますか? あの、“魔王様が変態”と言う純然たる事実をオフレコにして頂いた、あれでございますよ! 皆様のおかげでこのレプケ、魂拾いしましたとも。

 魔王様ってば魔法力に飽かせてところ構わず盗聴や覗き見、その他ゲフンゲフン……え~ディマ国にもストーカー規正法はございます。むしろ魔法が当然の世界ですと重大な犯罪に発展しやすいので、より厳しく取り締まっておりますよ?

 どなたか魔王様に、職権乱用というお言葉を教えて差し上げてください! え……私? いえいえいえ! そんなこと言ったが最後、指の一振りで角なしにされて、アンヌ様にしれっと薬になるから使うが良い、とか渡されてしまいます! 角のないギルェシなんて、翼のない鳥みたいなものですよ! 間抜けだし何の種族かもわからなくなります。

 魔族の角は効能こそ違えど殆どが薬になるんですよ、わざわざ弱っちい私ではなく、ご立派なオーガやユニコーンの角をお求めになってくださいね。遺産を相続された方のご好意で、亡くなられた方の角や羽はちゃーんと一般にも売られております。

 おっと、無駄話が過ぎました。今日の任務はですね。それほど無茶でもありません。来(きた)る結婚式に備え、アンヌ様のご希望と魔族式のすり合わせ……でしょうか?

 魔族と人間はとことん違う文化らしく、きっとアンヌ様は驚いてしまわれるでしょう、そんなこと知らなかった! と言われては私の落ち度。ということでアンヌ様のお部屋に今日も参りましょう!


「おや、いらっしゃらない? はてどちらに……」


 探して回ると、お庭を臨むバルコニーでお茶を飲んでおられるのが遠くに見えました。足が短いと不便ですね~、せかせか。

 あ、はい、アンヌ様はお茶の時間は必ず休まれているので、何か訊ねようと思ったら必然的にお茶の時間になるんですよ。

 しかしそのお茶の時間も短くなりましたし、勉強に関しても操作が難しい形になりました。いつかアンヌ様が、魔王様のやらかしたアレやコレやソレをみーんな知ってしまわれたら……どうなってしまうのでしょうか?

 私はアンヌ様にもヴァーミナス様にもお幸せになって頂きたい、と切に願っているのですが……。

 ふう……やっとたどり着いた。


「まあレプケ、こんにちは。この時間にこちらにいらすのは珍しいわね。お仕事はよろしいの?」

「こんにちはでございます。今日はその仕事の一環と申しましょうか、恐縮ではありますが少々お邪魔してもよろしいでしょうか?」

「もちろんですわ。マスユ、お茶を淹れ直して」

「畏まりました」


 マスユですか……彼女も苦労していますね、でも一日一度の報告ならば私ほど危ない目にはあってないでしょうから、まだ幸せでしょうね。私なんてアンヌ様付きとは名ばかり。今も魔王様に扱き使われて毎日が九死に一生です。多分正しい使い方だと思うのですが、合ってますか?


「やや、お気遣い頂いて申し訳ない。実はですね、先ほど地上との第一回和平会談開催が決まりまして」


 アンヌ様に引いて頂いた椅子の上に座ります。背は低いですが、椅子の支え木を踏んで座るのでご心配なく。


「あら! 素晴らしいことですわ。私も会談に向けてスピーチや衣装など用意しなくては」

「はい、そちらも重要ではあるのですが、こうしてお茶のお時間にお邪魔したのは、結婚式についてなのです」


 くぴくぴ。むう、渋みも少なくなんとも香りが広がります……最初に自分で茶葉にお湯を注いで飲んだ時は渋ニガ! となったのに驚きです。


「結婚式? そちらはまだ早いのではなくて? 和平が成立してからというお話でしょう?」

「そうなのですが、夜会などと同じで人間のやり方とこちらのやり方には大分差があるのですよ。アンヌ様のご希望によっても変えられる部分はありますし、慣習に囚われない、人とディマを繋ぐ新しい結婚式をしたいと考えているのです」

「な、なるほど……私への心配りということですのね。確かに直前まで知らないのは危なさそうですわ」

「ではこちらの“一般的な”結婚式のご説明を致しますね」


 まず特設ステージの両側から、同時に新郎新婦が入場します。この時、お一人お一人の実力に相応しい二つ名とお名前をコールしまして、セコンドが後ろから二人から五人ほどついて参ります。

 もちろん、晴れ舞台に相応しいディマの正装を着て頂きますよ。


「ステージ? セコンド? ま、まあ入場は普通かしら」


 そしてリング・イン。順番に拡声魔道具(マイク)を使って愛のためならお互いを躊躇いなく殺せる! と高らかに宣言します。見届人(レフェリー)の合図でレディ・ファイト! 勝敗はギブアップ、又はリングアウト。K.Oは禁止ですが稀に起こるハプニングですな。


「という感じなのですが……」

「ご冗談よね? も、もうレプケったら。流石に新郎新婦がステージ上で戦うお式なんて……冗談と仰って。ね?」

「冗談ではありません。ルールは魔法のみの一本勝負。この試合内容でご祝儀のお値段、及び披露宴のグレードが決まります。勝者は敗者に魔力を分け与え、まあこれはキスが多いですか。二人はお互いを死ぬまで愛することを誓うのです。新郎新婦は支え合いながら退場致します」

「さ、最後は同じですのね……地上の、というより私の国の一般的な結婚式は……」


 新郎は一人で入場して花嫁を待つ。オルガンが奏でられる中、新婦は真っ白なドレスを着て父親にエスコートされ、静々と真っ白なヴァージンロードの上を歩いて行く。祭壇の前でエスコートを父親から新郎にバトンタッチ、娘をよろしく頼む……感動のシーン。


「え、それだけですか? そこでこう、殴ったり……」

「それだけって、結婚式は娯楽じゃありませんことよ。神聖な儀式ですの、続けますわよ」


 ご、娯楽でない?! 神聖と仰いましたが、ディモルト界に神なんて居ませんからねぇ。おめでたいものなのは間違いありませんが……。

 ええと、神父……女神に仕える者の前でお互いをいついかなる時も支え、愛することを誓い、指輪を交換。

 誓約書に名前を書き込み、聖書の記述をなぞってキャンドルへ点火。ここでキスをする、唇でなくても良い――そして二人は結婚したことを神父が宣言して、退場。


「ま、まさか終わりました? それでは強さを証明できないのではありませんか?!」

「だから、人間の結婚式では強さを証明する必要はありませんの! 本で知識は得ているのではないの?」

「いえいえ、フォレスティアンの式では狩の腕を証明する為に凶暴な獲物を狩る、とありましたよ?」

「森の民のお式はそうね。でもそれだってその場で狩るのではなく、獲物を見せて招待客と召し上がるための儀式ですわ。今では一人で狩ることも少なくなっているそうですわよ」


 ショック!! まさか、あんなあっさりしたなーんの面白みもない結婚式を挙げる人が本当にいるだなんて! これがアンヌ様の感じておられる文化の違いなのですね……。


「ううう……わかりました! では二つの式を融合したこんな結婚式は如何でしょう?」

「まあ、さっそく考えつくなんて流石はレプケね。聞かせてくださる?」

「はい、えー音楽は話し合ってお好みの物を演奏するのが良いでしょう。まず、アンヌ様はお一人で真っ白なドレスを纏いステージに上がる。セコンド、じゃなかったブライズメイドの方に付き添って頂くのがよろしいでしょう……」


 そしてアンヌ様の口上でヴァーミナス様とお父上様がご入場。リング・イン後、『娘さんをください!』『お前に娘はやらん!』という人間式の挨拶で会場を沸かせます。

 さあ戦いの火蓋が切って、「落とさないでくださいませ!」


「おや? 何かご不明な点でもございましたか?」

「その式を考えついたあなたの思考が意味不明ですことよ。ヴァーミナスとお父様を戦わせるなんてとんでもありません! いくらお父様だってヴァーミナスには勝てませんし、本気の殺し合いになってしまいますわ」

「とんでも……? あ、あーあー、あり得ないという言い回しでしたな。殺死合(デスマッチ)、大変結構じゃないですか。それは素晴らしく盛り上がることでしょう!」

「は、初めてレプケを魔族だと実感しましたわ……とにかく、挨拶とか何か色々なものが間違っています。試合はなし! 女神に誓わなくても人前式にすればよろしいわ。二つの世界の平和と夫婦になることを観きゃ……違います! 招待客の皆様に誓えば良いのです」

「そんな式では魔族側は誰一人納得しませんよ?! せっかく一生に一度のお式なのに……国民たちは今からどんな歴史的ファイトが見られるか、とワクワクしているのですよ!?」

「本当ですの?! そんな……では、せめて私とヴァーミナスの試合にしましょう。国民の期待を裏切るのは忍びないですし」

「それでは人の結婚式の要素がありませんが?」

「地上とこちらで二度行えばよろしいのよ。ね、それで決まりですわ!」

「そんな~、我ながらナイスアイディアだと思ったのですが……ダメですか」


 ひっじょ~に残念です……。


「口を挟むのは大変無礼かと存じますが、レプケ様ご提案の式を私もぜひ、拝見したいです」


 おおマスユ! まさかの味方現る!


「そうでしょうそうでしょう! ね、ほらアンヌ様、でしたら人前式案と花嫁争奪、父と新郎対決式案と、二つを進めて……アンヌ様のお父上様が対決をお断りされたら人前式にする、というのでは如何でしょう?」

「そうね……お父様ならそんな非常識な物には反対してくださるでしょうし……わかりましたわ。両方の準備を進めてくださるのなら」


 やったぁ! これで世紀の死合いが見られますな! アンヌ様のお父上様が娘といきなり婚約した男を叩きのめすチャンスをお断りになるはずがありません! 言質は取りましたよ、ニヤリ。


「では本日はこれにて。また明日の講義でお会いしましょう」

「ええ、また明日。そうだわマスユ、仕立て屋に連絡して……」


 今回は魔王様にも喜んで頂けること間違いなしですな! や~良かった良かった。

 お、皆様はどちらのお式がご覧になりたいですか? ふむふむ。殺死合い。賛同して頂き真に嬉しいです! では手配がございますので次回のご報告まで、失礼致します。


魔王ヴァーミナス と魔法使いアンヌ は慰問に出かけた。

アンヌ は魔車に驚いた! 街に驚いた! 魔王の接近に驚くのを我慢した…。

アンヌ の好感度が合計20上がった! 新薬の開発を患者に誓った。


研究者レプケ と魔法使いアンヌ は話し合った。 文化の違いにお互いが驚いた!

形式に囚われない結婚式の準備が始まった。


アンヌ→ヴァーミナス

関係:婚約者 好感度:+50 状態:好意 結婚を意識している


アンヌ→レプケ

関係:魔法の師、従者 好感度+40 状態:尊敬 魔族だと実感した


活動報告にてミニコーナー開設しました。読まなくても本編に関係ないことだけは確かです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。