事件の真相
「京野さんこれ」
「相当お詰められていたんだな」
ノートを京野さんにも見せたし内容は、酷かった。
死にたい理由は学校校内でのいじめだと書いてあった。中には親には心配かけたくないので何も言えないと書かれていた。
「このこと、両親には言わない方がいいのでしょうか?」
「まあ、なんとも言えないが今は斎川唯を探すことに集中しよう」
「はい」
これが隠されていた場所に合っている色が出ていたので、正直怖くなってきた。
でも、俺の仕事は斎川唯を探すことだと自分に言い聞かせた。
下に降りて斎川唯の両親に挨拶をした。
「あの?」
「はい?」
「この写真預かっても良いですか?」
「写真ですか?」
「はい、必ずお返ししますので」
「分かりました」
この写真は家族で海に行った写真なのか、皆笑顔で写っていた。
「では我々はこれで」
「はい、唯をお願いします」
そうして、斎川唯の家を出て車に乗った。
「で、なんで写真なんか持って来た?」
「これをヒントに斎川唯を探します」
「そんなことできるのか?」
「分かりません、でも親にあれだけ頼まれたらやるしかないでしょ」
「やる気出してくれるなら何でもいいけど、無理はするなよ。総監直々に言われているんだ」
「無理のない範囲でやりますけど、制御が聞かなくて倒れたら後は頼みます」
「縁起でもないこと言うな、それで実際どうやるんだ?」
「この写真を見て色を確認します」
「それは、対象の感情が分かるだけだろ?」
「対象の居る場所が線になって分かるんですよ」
「君が居れば未解決事件はなくなるそうだ」
「それを見込んで協力者にしたんじゃないんですか?」
「俺はただ、君をサポートしてくれと言われただけだ」
「成程、では始めるので場所の指示は出すのでその際他の感覚はなくなるので、何かあれば僕の視界に手で合図でもしてください」
「分かった」
俺は目を使った。
これは以前にテレビを見ていた時に目が暴走して、直ぐに眼鏡をかけようとした時。感情が見えるだけではなく感情の色のまま線が画面から外まで繋がっていることに気づいた。
最初に見たのは楽しそうに、笑顔溢れる三人の家族の写真だった。
そして見えたのは、三人とも笑顔とは裏腹には灰色の色だった。
それぞれ色の研究をして、どんな時に人はどんな色になるのか分かってきたがこれは疲れていたりすると出る色だった。
ただ、一本だけ色が薄れていた。
それが何を表すのかは分からなかったがとにかく、線を追って京野さんに車でその通りに進んでもらう。
眼鏡をかけながら目を使っているとは言え、段々疲れてくるがこれくらいで根を上げている場合ではない、段々と一本の線が薄れていくのが分かりそれが斎川唯だと気づき始めた。
そのまま、京野さんに急いでもらうことを伝えた。
この線がなくなってしまったら、どうなるか大体想像はつく。
そのまま、どの位時間が経ったのかは分からないが、辺りを見ると山が見えた。
「京野さん、此処は?」
「五日市だ」
「山がありますけど」
「田舎だしな、それでその線ってのはどうなった?」
「山の上にあります」
「そうか」
そして山を車で上がったが京野さんが、車を止めた。
「ここからは歩いて行くぞ」
「なんでですか?」
「気づかれるからだ、それから直ぐに応援来るから、お前はここにいて後から来た警官に場所を教えてくれ」
「嫌です、僕も行きます」
「だめだ、危険すぎる」
「もう僕は関わってしまった」
「それがどうした?」
「これは僕が最後までやる義務がある」
京野さんは諦めのため息をついて、ついていくとことを承諾した。
「様子見だけだからな、突入は応援が来てからだ」
「分かりました」
それから、山の上まで来ると一軒の小屋があった。
「あの中にいるんですかね?」
「まあそうだな」
「応援が来るまで、あと十分くらいだな」
「持ちますかね?」
「それは彼女達次第だ」
それから十分程経ち、警官が大勢来て小屋を囲った。
それからは、スムーズに進んで突入し小屋の中から男性の悲鳴が聞こえた。
俺は少し離れた所で見ていると犯人は、事情聴取をした教師だった。
京野さん達が小屋から少女を四人連れ出した。
顔を見ると全員憔悴しきって、自分で立って歩くことができない様子だった。
俺が違和感を感じたのは、その中に斎川唯がいなかったことだった。
再び写真を目で見ると線は少し離れた場所に繋がっていたが、その場所まで行くと線が土の中にあり色も消えてしまった。
俺はそれで悟った。
「河上君、勝手に離れるな」
後ろから京野さんが声をかけた。
「小屋の中に斎川唯がいなかったが何処か分かるか?
「ここです」
俺は土に指を刺した。
「え?」
「多分埋められてます」
「誰か来てくれ!!」
京野さんの声に皆が気づいて、スコップなどを持ちながら土を掘った。
数メートル掘った辺りに、少女が埋まっていた。
「本当にいた」
それから、俺は写真を持ちながら目を使っても色も線も表れないことにもう斎川唯が生きていない現実に襲われた。
現場検証を終えて、斎川唯はブルーシートの上に置かれた。
「今回の件はお前のせいじゃない」
「でも少しでも早く見つけられれば、こんなことにはならなかったと思います」
「お前が責任を感じなくていい、それにあの教師は他の四人も殺そうとしていたらしいし、他の四人を救えたことを考えろ」
「京野さん」
「ん?」
「俺は四人が生きてたことも、斎川唯が亡くなったこともその家族が生きてると信じて待っていたことも忘れません」
「そうだな」
「早く体を返してあげましょう」
「分かってる」
結局、事件はネットで死にたいと呟いている少女と繋がって、手っ取り早く死ねると言い少女達の悩みなどを聞くうちに少女達の家を特定して少女の悩み相談して、打ち解けたタイミングで少女達を家から連れ出して、誘拐しこの小屋まで連れて来て死ぬ寸前までなぶり殺していた。
因みに、事情聴取を受けていたおじさんは犯人ではなかった。
実際にスマホもパソコンもないのに少女達と繋がることもできないし、京野さんのパソコンを見た時に免許を返納していたことも調べたので俺は犯人から外していた。
後で話しを聞くとおじさんはカメラに映った少女とはいじめられている場面を見たことで心配で声をかけただけだった。
俺はそのことを知りこれからやる仕事に対する重要性と重さを思い知った事件だった。




