1月前:2
結果、先生がすべて意図した通りの結果になった。
道行く集落はみな、敵対する藩の手中に落ちていた。
次の町も、そのまた次の町も。
それでも、残っている集落に伝えようと、セーマは走り続けた。
それが3日3晩続いた。
もし、残っている町がなければ、先生はセーマに付け加えるように言っていた。
3日頑張って、何も伝えることができなかったら文の中身を見てほしいと。
セーマは息をついた。
(今日で、その3日目だ)
相手から身を隠すように突き進んだ。
3日となると、かなりの距離を駆けたことになる。
藩境に近づいても、残っている集落は一つもなかった。
懐に隠すように持っていた文に手をかける。
藩の中でのある程度の役職についていた先生の署名が入ったそれ。
これさえあれば、見ず知らずの長でもこんな若造の話を言うことを聞く。
どんな文が書いてあるのだろう。
半ば密命のような文を開けること。
そのことに、胸の高まりがなかったわけではない。
それを目の当たりに、読み始めたセーマは一瞬で眉を寄せることとなった。
(どういうことだ......)
何故、最初から、セーマに当てた文となっているのだろう。
ほんの少し、盗み見るだけのつもりだった文をセーマはただ、ひたすらに読み進める。
不意打ちのように、彼の名前宛てにしたためられた文。
それだけでも、訳がわからないというのに。
どうして、おまえだけは逃げてくれと書かれなければいけないのか。