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改稿中

ページを開いていただきありがとうございます。まだまだ書き始め故に至らない部分もあるでしょうが、ブックマークや感想、評価点の投稿などお待ちしております。

では、お楽しみください。

「オキロー、オキロー」


 目覚まし時計が朝を告げる。これは日野朝陽(ヒノアサヒ)が昨夜にセットした最後の時計である。つまり……


「遅刻だ!」


 朝陽は水族館のイルカのように飛び上がり、四十秒で身支度を済ませると駆け足で階下のリビングへ向かった。


「母さん! 食パン!」


「朝陽! あんた、今日は終業式よ。今日くらいはーー」


「ごめん、説教は帰ったら聞くから。いってきまーす!」


 パンをくわえ玄関へ向かう。


「おっ、朝陽。今日も遅刻ギリギリだな。気いつけろよ」


 間延びした父の言葉を背に朝陽は学校へと走った。これが日野家の日常風景だ。


 玄関をくぐるときに、御守り代りの剣型のネックレスを首にかける。チェーンはシャツに隠れるように、剣もシャツの中に入れた。


 紺色の髪をなびかせた朝陽は疾風のごとく学校へと向かった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 住宅街や寂れた商店街を抜け、公園を横切ると日野朝陽の通う高校。私立向側高校が見えてきた。


 校門前では体育教師が竹刀を振り回している。


「日野! お前、今日はーー」


「ギリセーフっす」


 朝陽は校舎に備えられた時計を見た。時刻八時十二分。向側高校のホームルームは二十分からだ。


 道中乱れた服装をなおしながら、三階の教室へと向かう。窓から見えた校門前にはまだ体育教師の姿があった。


「おはよう」


 教室の引き戸を開けると空気の入れ替えでも行うように挨拶をした。生徒は全員揃っている。


 朝陽は窓際一番奥の席へ腰を下ろす。


「朝陽、まさか終業式にも遅刻ギリギリとは、今日は何時起き?」


 前に座っている幼馴染の境相太(サカイソウタ)は恒例の質問を行った。


「今日? 八時丁度かな」


 二人の隣に座る生徒は笑って聴いている。


「足も早けりゃスタミナもあるとは、恐れ入ったぜ」


 朝陽の自宅から高校までは三キロ。この距離を走ってきたのだ。


 他愛のない話をしていると、教室の扉が開かれた。担任教師が姿を見せる。


「今日は日野もいるな」


 担任のジョークに教室が沸いた。


 担任の誘導で、笑いに包まれた教室を後にして、体育館へと向かう。都内有数のマンモス校のため、体育館内には二千を越える生徒がいた。


 終業式が始まった。今日という日を讃えるように、校長の話にも気合いが入っている。多くの生徒が舟を漕ぐなか、朝陽は校長の声に耳を傾けた。


「……ですので、皆さん。明日からは夏休みです。遊びに勉強に努力を怠らないように」


 終業式が終わり、生徒は各教室へと戻った。担任から五十ページほどの課題が配られた。


「ページ数こそ多いが、中身は大した事はない。毎日コツコツやればすぐ終わる。じゃあ気をつけて帰れよ」


 今日一日の予定に区切りがついた。朝陽と佐野を含む四名の仲良しグループはこれからの予定について話し合った。


 ボウリングやカラオケ、各々の自宅。思い思いの遊び場を並べる。ここまで聞き役に徹していた朝陽は総括を告げた。


「じゃあ、ゲーセンで」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 朝陽を含む四人は駅前にあるゲームセンターakebonoにて十九時まで遊びつくした。お金も底をついた四人は解散した。朝陽のみ家が反対方向にあるため、駅前で三人とは別れた。


 黄昏時の駅前には様々な人がいる。朝陽と同じ学生に、腕を組んだ恋人たち。買い物袋をぶらさげた親子に疲れた表情の会社員。


 朝陽は彼らを眺めながら青信号の点灯を待った。そんなときだった。朝陽の耳に声が聞こえたのは。


「……ヒノアサヒ」


 誰かが朝陽の名前を呼ぶ。朝陽は周囲を見渡した。先程別れた友人の姿を探すがない。さらに雑踏の中に知り合いを探すが、知り合いなど見当たらなかった。


 信号は赤から青へと切り変わる。人並みは朝陽だけを置いて、波のようにうごめいている。

 見つけた。朝陽は自分も混ざるはずだった人波の中に、異様な少年の姿を認めた。向側の道路に立ち、朝陽をじっと見つめている。


 少年は、夏に似合わない黒い外套を身につけていた。都会に住む朝陽にとってコスプレなどを見かける機会自体は珍しくなかった。だが、少年の異様さはその格好ではない。明らかに目立つはずの姿をしているはずなのだが、誰も彼を見ようとはしないのだ。目をそらしているのではない。まるで少年のことを認識できていないように。


 朝陽は背筋に冷ややかなものを感じた。


「俺にしか見えてないのか……」


 踵を返し、少年とは反対方向に走り出した。家路とは違う道だが、それどころではなかった。デタラメな道を進み少年から遠ざかろうとした。


 駅前から十分ほど走り続け、雑居ビルの裏路地に身を隠した。室外機が朝陽の姿を隠す。


「絶対にまけたはずだ……」


 そもそも追ってきていたのかさえわからなかった。決して臆病な性格ではない朝陽は不意に走り出していた。


 完全な夜が辺りを包んでいく。五分ほど休憩をした朝陽は立ち上がった。そして家路につくため振り返ると、そこには少年がいた。


「こんばんは。ヒノアサヒ」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 朝陽の顔にはみるみるうちに冷や汗が滲んだ。絶対に追いつけるはずがないとふんでいたからだ。


 汗を浮かべるでもなく、呼吸を乱すでもなく、少年は厳然と存在している。朝陽の目の前に。


 少年は朝陽を見据えるばかりで言葉を紡がない。視線は互いの目を見つめ合っている。他に見物人がいれば、決闘と勘違いを起こすかもしれない。


 決闘さながらの緊張感に負け、朝陽は口火を切った。


「あ、あんたさっきも、歩道に突っ立ってたろ。俺になんか用かよ」言葉の端々に怒気を混ぜた。


 外套とは対をなす、白い肌が動いた。


「あなたを迎えに来ました」少年は微笑を浮かべている。


「俺はあんたのことなんて知らないぞ」


「僕は昔から知っていますよ。貴方のことならなんでも。それこそ産まれた時のことだって」


「うそつけ、あんたの方がガキじゃねぇか! 俺より年上には見えないね」


 175cmの身長の朝陽から見て、少年の頭頂部は自身の胸ほどの高さだ。小さいからといって年下とは限らないが、容姿のせいもあり年上には見えなかった。


 路地の小窓に明かりがついた。禿頭の男が顔を出す。


「おい、うるせえぞ!」


 突然の叱責に体はこわばる。


「ここで話すのは貴方にとって不都合らしい。場所を変えましょう」


 少年はいつのまにか杖を持っている。


「場所を変えるって」


 突如閃光が視界を奪った。短い悲鳴が朝陽から漏れた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 眩んだ目をゆっくりと開くと、そこは自宅近くの河川敷だった。


「ど、どうして……」


 この場所は朝陽にとってゆかりのある場所でもある。


「ヒノアサヒ。あなたが拾われた場所がここでしたね」


 周囲を見渡していた朝陽は少年に釘づけとなった。魔法のような力を見せられたことも一因ではあるが、なにより自分のことを知っているということに視線が奪われた。


「なんでそれを知ってるんだよ」


「だから言ったではありませんか。貴方のことならなんでも知っていると」


 逃げられないことを悟った。この転移の力が本物であることはまざまざと見せつけられている。ならば今できることは。


「なら、教えてくれ。俺を迎えに来た理由を」


「まず、貴方はこの世界の人間ではない」


 叫びたい気持ちが朝陽の中に沸いて出た。だが、口を結び堪える。今の自分にできることはない。話を聞かなければ、と。聞き分けのいい男を演じた。


「今の貴方から見ると、異世界ユグドラシルに産まれた存在といったところでしょうか。けれども、ある男のせいでこちらに来ることになった。その男の名はブーー」


 少年が告げたはずの名前は夜空から轟いた落雷によって遮られた。落雷は、少年の体に大小様々な傷をつけた。皮膚は焼けている。


「うわ!」


 その悲鳴は、少年のものであり、朝陽のものでもあった。


「誰だ!」


 少年は落雷により焼けた唇を開いた。その声には、怒りの感情以外を朝陽は感じられなかった。これがあいつの本性。


 少年の声は沈黙という返答を受ける。焦げた外套を振り乱し周囲を一望している。

 その時だ。朝陽は肩に手が触れるのを感じた。


「こっちだ」


 勇敢さを纏った声は、言葉と共に朝陽の体を引く。


「貴様!」


 少年は目の端にその光景を捉えたのか、叫び声をあげながら凄まじい早さで朝陽に飛びつこうとした。だが、次の瞬間、朝陽の視界からは河川敷とともに少年の姿は消えていた。


 謎が謎を呼ぶ中、朝陽は、自分の体が落下しはじめていることに気づいた。


「なんだよー!」


 声とともに、朝陽は漆黒へと落ちていった。暗がりに落ちていく朝陽の体を、青い光が包んだ。

今回急ぎ改稿いたしました。至らない点もあるかと思いますが、ここまでお読みいただき誠に感謝申し上げます。これから先も、改稿および投稿していきますので今後ともよろしくお願いいたします。

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