表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の家に狐が居候している  作者: 夘月
夜に現る騒がせ者
95/154

気苦労多いんです

 翌日の放課後。文乃さんからのお誘い通りに、オカ研の部室に向かうことに。

 ズボンのポケットに手を突っ込みながら歩く俺の後ろには三人。


「楽しみだなー。どんな人なのかすっごく気になるし!」

「ありがとうございます。お誘いして頂いて」

「いーよいーよ。そこまでかしこまらなくても」


 昨日あの場にいた俺と拓弥の他、凜と橋本が参加することになった。

 虎太郎は他クラスの音ゲー仲間との先約があり、堂口は陸上部。谷内は家庭の事情有りとのこと。

 黒羽に関しては聞いたら速攻で断られた。凛と橋本が一緒に行こうって粘ってたけど、本人の意思を尊重してやれよと止めておいたんだがな。強制じゃないんだし。

 俺が言えたことでもないんだけど、最近は無理やり付き合わせてしまってること多いから、そっとしておいてやりたいものだ。大事なのは本人の意思だし。



 教室から歩けば、一分と掛からずにオカ研の部室に到着。


「失礼しまー」


 早速ノックしてから、部室のドアを開けた。そして――――


「したー」


 すぐさま閉めた。タイミングを間違えた気がする。と言うより、見せてはいけないものを見た気がする。


「どうした祐真。入ろうとしたら急に」

「架谷くん?」

「……少し時間を空けてから出直そうか。今こん中入ると碌な目に合わない気がする」

「ここまで来て何を言うんだよ冷めるなぁー。早く行こうぜ橋本さん」

「そうそう。ここで立ち止まっていても、何も始まらないんだからー」


 二人は俺の申し出を聞き入れることはなく。入れ替わるように部室のドアの前に。

 知らんぞ。後悔しても。


「こんちわーっす」

「おじゃましまーす」


 二人は元気よく挨拶しながらドアを開け、そして固まる。

 そりゃあそうよ。あんなもんを目にして、一瞬でも固まらないわけがないのだから。衝撃的すぎて。

 入っていった二人を呆然と眺めていた俺に、凛が聞いてきた。


「祐真さん。いったい何があったんですか?」

「聞くな。と言いたいところだけど言っとく。初めてここに来た時のことを思い出してくれると話が速い」

「……心中お察し致します」


 あの時あの場にいた凛は、それで理解してくれた。

 でもってその頃には、向こうも行動に移したようで。


「あの……何事ですか」

「大丈夫ですか?!」

「いーのいーの。ほっとけば」

「いやいや、良くないですよね! エラい事になってますよね!」

「お恥ずかしいところ見せちゃったねー」


 部室内も騒がしくなってきた。と言うよりは混沌と言うべきか。てんやわんやと騒がしくなっている。


「奥村君足の方持って!」

「分かった!」


 何があったのかって。まぁその……あれだ。豊田さんがまたゴミ箱に突っ込まれてたんだよ。今度は犬〇家状態で。

 ノックする前、なんか部屋の中が騒がしいなーとは薄々思ってたけど、そういう事なんですかーい。

 てかあの二人は何してたんだ。これから客が来るって時に喧嘩はやめてください。変なイメージ持たれるから。音羽さんも楽じゃないだろうよ。




「騒がせちゃったねー。ごめんごめん」

「何事なんすか……」


 部室の中があたふたしだしたところで俺と凛も中に入り、豊田さん救出の手助けをした。

 ひとまずは落ち着き、今は音羽さんが紅茶の用意をしているところだ。


「二人は何かと衝突することが多くてねー。僕も度々困らされてるよ」

「今更ですけど、仲悪い訳じゃないですよね?」

「そういうのではないかな。二人ともプライドが強いって言うか、譲らないところがあるから」


 向こうの方向いて作業しながら拓弥の話に応じる音羽さん。それにしても落ち着いているというか、慣れているというのか。

 紅茶を淹れる作業がどうこうという訳ではなく、このワタワタした状況でも冷静なんだなぁと。


「いつもの事ってか、こいつがしつこいのよ」

「そりゃこっちのセリフだ」

「ふざけんじゃないわよあんた」

「んだとそっちの方こそ……」

「ハイハイやめやめ。これからまたお客が来るんだから。変な目で見られるよ」


 仲裁に入ると、ほんのりとオレンジの香りがする紅茶の淹れられたティーカップを二人の前に置いた。

 こういうワタワタした時の音羽さんは頼りになる。俺が思うになんだが、苦労人ポジションなんだなぁと。


「どうぞ」

「どうも」

「ありがとうございます」


 そして俺達四人の前にも、オレンジティーの淹れられたカップが置かれる。


「美味しいですね。深みがあって」

「この前お店でいい茶葉を見つけたからね。是非とも君たちにも知ってもらいたくてね」


 頂いた紅茶の感想を簡単に述べてから、こんなことを聞いてみる。


「苦労しているんじゃないんですか。こうも賑やかな方達をまとめるのは」


 そしたら音羽さんは、ニコッと笑いながら答えるのだった。意外な答えが返ってくる。


「意外とそうでもなくてね。むしろ楽しいっていうか」

「楽しい……ですか」

「退屈させてくれないからね。見たところ、架谷君はまとめるのにかなり苦労してそうだけど」

「まとめるとか、そんなことはしてませんよ」


 そういうのは、行動力の塊とも言っていい橋本や堂口の担当区分だ。でも色々手を焼かされることは多いから、俺は苦労してるってことには変わらないか。

 さてと。そう言えば……。


「ところで、文乃さんは」

「学園の中を軽く案内してから来ると言っていたから、そろそろ来ると思うよ」


 音羽さんがそう言ったところで、勢いよく部室のドアが開けられた。


「おまたせー。遅くなっちゃったかなー」

「大丈夫ですよ。そろそろ来るんじゃないかと思っていたところですから」

「どうもー。今日はありがとうございますー」

「いいのいいの。お友達は多い方がいいんだから」


 文乃さんは視線を廊下の方に向けると、その方に向かって声をかける。


「ほらほら。早く入って」

「う、うん」


 ドアの陰からひょこっと。銀髪の女子生徒が顔を出した。

 なんか記憶に引っかかるという、ふわふわした思い込みではなく。確実に覚えがある顔だった。昨日の朝見たあの女子生徒であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ