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俺の家に狐が居候している  作者: 夘月
夜に現る騒がせ者
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思い出す、あの日のこと

「……大丈夫かぁ凛?」

「……」


 明莉さん。大丈夫かと聞かれると、嘘偽りなくそうですとは、答えられません。

 身体が蒸し蒸しします。汗が止まりません。以前に出雲様から手土産に頂いた肉まんになったような気分です……。


「まだ入って三分……経ってない」

「まぁあまり長いこと入るものじゃないんだけどね……」

「そうだなー。七、八分がちょうどいい所だろうなー」

「じゃああと五分は入ってないといけないんですかぁ……」


 私としてはもう限界きてますぅ……。これ以上入っているとやつれてしまいそうです。


「辛かったら無理して入らなくてもいいからね? 無理は身体に良くないって言うし」

「そうそう」

「我慢比べしてるんじゃねぇから意地はらずに出た方がいいぞー」

「では……そうさせて頂きますね」


 桐華さん達には少々申し訳ありませんが、お先に失礼させて頂きたいと思います。



 退出際に明莉さんに言われた通りに、シャワーを浴びて溢れ出た汗を流した後、水風呂に使ってスッキリと。いきなり冷水に浸かるのは慣れないものですが、しばらく使っているとすぐに身体がホクホクとしてきます。

 冷水で身体を冷やした後だというのに、どうして身体が暖かいと感じるのでしょうか。サウナとは不思議なものです。






「ほぉー……」


 水風呂に入って心身落ち着いた後は、皆さんとは別行動に。今は一人、露天風呂で身体を休めているところです。


 こうしてのんびりとしながら……これまでのことを思い返していました。



 あの日あったことは、偶然起こった事件なのでしょうか。それとも……起こるべくして起こった運命だったのでしょうか。


 どちらだったにしても、そうなるとは知らなかった当時の私です。とても驚きました。それは祐真さんも同じだったことです。

 そのあとどうするものかと悩みましたが、出雲様のご意向もあって、少々強引な形ではあったのですが、私は祐真さんのご自宅に居候させてもらうことになりました。


 それから私は、祐真さんの通う学園というものに通うことになり、桐華さんや奥村さんたちと出会うことになりました。


 こちらの世界には、私が今まで知らなかった面白いものが沢山ありました。

 そこでの人付き合いというものは、里での付き合いとは全く違うものでした。初めて触れ、経験することばかりでしたし、色んなことを私に教えてくれました。

 度が過ぎて、時々祐真さんや京子ちゃんにストップかけられてしまうことが多々ありましたけどね……。間違った事だとか、知らなくてもいいようなこととか。そういうものの見極めと判断は難しいものです。


 祐真さんはとても優しい人です。こちらの世界に不慣れな私の手助けをしてくださいます。時々ぶっきらぼうなところはあるんですが、それもまた祐真さんらしいところだと思っています。

 共同生活を送っていく中で私は、祐真さんの―――




「おっ。凛ちゃんここに居た」

「……‼」


 いきなり名前を呼ばれて、ちょっとビクンとしてしまいました。でも気を取り直して。


「き、桐華さん。どうも……」

「お隣しつれーしまーす」


 そしたらそこに、桐華さんがやって来ました。



「明莉さんと、神奈さんは?」

「二人とも今は別行動してるよー。明莉ちゃんはサウナに入り直すって言ってた」

「またあそこに入るんですか……?!」

「明莉ちゃんがねー。間隔を置いて二、三回入るとより効果が出るんだぜー。とかどうとかーって言ってた」

「そ、そうなんですか……」


 後半は明莉さんの声真似をしながら答えてました。

 明莉さん、よくあんな所に居られますね……。不思議でなりません。


「そう言えば、京子ちゃんを見てないの」

「でしたら、先程すれ違いましたよ」


 ここに来る途中に、途中から単独行動していた京子ちゃんとすれ違い、少しだけ会話をしてました。一緒に行動しましょうって誘ったんだけど、断られてしまいました。


「今は一人でのんびりしたいと言われてしまいました」

「そっかー。でも京子ちゃんらしいってとこかな」


 そんな京子ちゃんの行動に納得してから、桐華さんがすすっと私の方に近づいてきて聞いてきました。


「アルバムでも眺めてるような顔してたけど、昔のことでも考えてたの?」

「昔の、と言うよりは……」

「じゃあ、凛ちゃんの居た田舎のこと?」

「それも……少し違いますかね」


 こっちに来てからのことについてを思い返していました。って言おうとしたんですが――――


「それじゃあもしかして……架谷くんの事だったりする?」

「……?!」


 不意をつかれたのか、それとも……。理由はよく分からないけど、一気に身体が火照っていくのが感じられた。


「ななな、何を言うんですか桐華さん!? そんなことはないですからね!」

「へー。そう言う割にはなーんでそんなに顔を赤ーくしているんだかねー」

「こ、これは、さっきのサウナのがまだ収まっていないだけで……」


 確かに桐華さんの言う通りかも知れませんけど、いきなり祐真さんの話題を出されてしまったら、混乱しちゃうよ私! 今どんな顔して桐華さんと向き合えばいいんですかぁ……。


「そう顔を赤くしないの。気になる男の子のこと考えることくらい、おかしいことでもなんでもないから」

「そうは言いますけど……」

「あ。そういうってことはやっぱり図星だったかー」

「なっ……?!」


 九尾である私が、人間相手にここまで弄ばれてしまうなんて。なんだか今日の桐華さんは意地悪です……。


「凛ちゃんが架谷くんのことをどう思っているかはわかんないけど、今ここで話題にしただけで顔を赤くしているってことは、何か特別な感情でも抱いてるんじゃないの」

「で、ですから……これはサウナの」

「でも私が入ってきた時はそうじゃなかったけど」

「んなっ?!」


 やっぱり今日の桐華さん、気味悪いくらいに鋭い!


「私らくらいの女の子だったら、そういう気持ちのひとつ思いたくもなるものだよ。私だってちょっとはそんな気持ちがあるもん」

「桐華さんに……ですか?」


 ふーん……そうですかぁ……。


「そういう桐華さんは、誰にそういう感情を抱いているんですか?」

「え? そ、それは……」

「私をここまでからかってくれるんですから、教えてくれてもいいじゃないんですかー」


 そっちがその気でしたら、私にだって策はあります。このままからかわれてばかりじゃ、九尾の名が廃るものです。


「なんでもないからなんでも! 私、先に上がるね!」

「あぁ……」


 逃げられてしまいました。答えてくれたっていいじゃないですか。

 それくらいにこのお気持ちというものは、複雑なものなのでしょうか。今度祐真さんに聞いてみましょうか……。


「……あれ?」


 でもどうしてだか、そうしようって気持ちがすぐに無くなってしまいました。さっき以上に身体が暑くなっていくのがわかりました。

 この気持ちは、中々分かるものではなさそうです。

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