せせらぎでのんびりと
二人の相手をしていたら少々……と言うにはこと足りず、でもかなりと言うには言いすぎな。その中間くらいには疲れた。
近くにあったベンチに一人座って、休むことにした。
堂口の後、そのまま休む間もなく文乃さんのご要望にお応えしていたわけだ。
文乃さんに連れられてやって来たのは深さ二メートルはある深水プール。縛られることなくのびのびと泳ぎたいって事だった。
男の俺としては情けないことなんだが……あの二人は体力ありすぎだと思う。
この暑さの中、あのプールで数十分は泳ぎ続けてりゃ普通少しは疲れるっての。なのにあの二人は底知らずっていうか……。俺が休むって言ってからは二人で行動し始めたけど、まだまだ余裕綽々って感じだったから恐ろしい。
てか、今思えばすっかり仲良くなってるみたいだから安心した。変な企みさえしてこなけりゃ、もうちょい印象は変わってくるんだがな。
でもまぁ。楽しいってことには変わらないな。こうして友人とプール行くのは初めてだし。
「……ふぅ」
両足をぶらぶらさせながら一息はいた。少し休んだら、なんとかお昼の集合までは体力が持ちそうだ。
でも今はなるべくアグレッシブなのとかはなしにして。ゆったりできそうなところ……。
近くを見回してみれば、浅いプールがあったのでそっちに行ってみることにした。そういう所なら派手に動き回ることもないだろうし。
そのプールの近くまで来てみたら、ちょうど知り合いがいた。
「おーい」
「あっ、祐真さん」
「おひとり……ですか?」
近くにあったプールに凛と黒羽の姿が見えたので、そちらの方に行ってみることにした。
「今はな。さっきまで堂口と文乃さんの相手してたところだ」
「お疲れ様です」
「あの二人、男顔負けってくらいに体力ありすぎっていうか」
「分かります……」
これまであったことについてを二人に話していた。ほんの一時間のことではあったが、非常に濃密な中身であったことを。
「黒羽があの場でやつれるのも分かるなって思ったわ」
「あの人はとにかく積極的というか、四月の時の橋本さんみたいなんですよ」
「桐華さん。京子ちゃんのこともっと知りたいって張り切ってましたから。その時の私も似たようなものですけどね……」
四月の時は黒羽は、孤高の女王様。とは言い過ぎだが、何者も寄せつけないようなオーラがあったというか。
来るもの全て受け入れず。って感じだったし。
今は凛との関係から始まって、橋本らとの交流機会が増えてきたわけではあるが。
「その時ってことは、今は何かしら変わってるもんなのか?」
「私から言わせてもらうなら……前以上に声かけられることが多くなりました」
「それ、黒羽的には悪化してないか?」
「今はそこまで気分の悪いものではありませんから、お気になさらず」
あまり集団行動の得意ではない彼女のことだ。慣れにはまだまだ時間が必要らしい。
「どうだ? そっちは楽しめてるか?」
「はい。お陰様で。あの大きなウォータースライダーというもの。迫力あって楽しかったです。待っている間にも、高台の方から海を見ることも出来ましたから」
「そうか。黒羽は?」
「山の中の渓流とはまた違う涼しさというものを感じられました。この人混みの多さにはなれないものですが」
「そこは……仕方ないってことで」
二人とも初めて来るプールを楽しめているというのなら、こちらとしても嬉しいものだ。
「なんか、夢咲が迷惑かけてたみたいだな」
「君に全部押し付けちゃったかな」
「豊田さん。それに音羽さんも」
凛と黒羽の近くには、オカ研の男子メンバー二人の姿もあった。
「お二人もここに?」
「僕らはあまりはしゃぐような質じゃないからね。でもプールはちゃんと満喫させてもらってるよ」
「こうして涼んでいたわけですか」
「そんなところだな」
あの二人とは対称的に大人しいお二人は、ここで涼んでいたようだ。
「夢咲の相手は疲れるだろう。俺らも色々振り回されてきたからな」
「いえいえ。俺としては少し慣れてしまいましたよ」
「中学時代からの付き合いだったな」
「久々にあった時は驚きましたよ。凄い積極的になってましたから。あの時はもっと大人しかったんですけどね」
「なんともそれは……想像しがたいな」
「さっきなんて、年相応に楽しんでましたから」
年相応。そんな言葉を選んで話したが、実際そうではないことを、ここにいる五人は皆知っている。特に俺以外の四人は。
実際の年齢なんて知ったことではないのだが、少なくとも人間の基準で考えたら行けないような気がする。そんな気がする。
ということは隅に置いとこう。というよりもう引っ張り出すのはやめにして。別の話題にしようか。ここは文乃さん繋がりってことで。
「そういえば前にも色々聞きましたけど、オカ研での文乃さんってどんな感じですか」
「オカ研の創設者ってのもあって、積極的に動くことが多いね。よく色んな場所に出向いたりもするから」
「この前もなんか、学園近くに心霊スポットがあるって言って無理やり連れてかれたんだよな」
「近くにそんなもんあったんですか」
「あぁ。なんでも廃工房がーってやつでな……ってどうしたお二人さん」
豊田さんの視線の先には、何か思い出したような顔をした凛と黒羽がいる。
「いえいえ。なんでもありません」
「ちょっと、向こうの時計の方を……」
黒羽の指さす先には時計がある。
「そういや、そろそろ時間なんじゃないか」
「言われてみれば、そうですね」
近くにあった時計で時刻を確認してみれば、十一時五十分より少し前。
「お腹もすいてきたからね」
「なら早いとこ行くとしましょう」




