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俺の家に狐が居候している  作者: 夘月
夏イベ到来
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ゆらゆら漂い

「そんで。まずはどこから行きます?」


 拓弥がそう聞いてみれば、各々様々な意見が飛んでくる。


「私はウォータースライダー行きたい!」

「俺もそっち行きてぇっす!」

「向こうにある噴水のやつが気になるかな」

「あぁ。あれですか」

「私はのんびりできるところがいい」

「綺麗にバラバラだな」


 これだけ頭数がいれば、当然意見は違ってくるもの。話し込んでいても時間を無駄に過ごすだけだろう。


「あれこれ固まっててもあれですから、行きたいとこ別に別れて動きましょう。十二人で固まっていても動きづらいでしょうから」

「それもそうだな」

「行きたいところ。皆バラバラだからね」


 そうなると何人かのグループに別れることになるな。ひとまず最初に行きたいところが同じもの同士で分かれるのが賢明だろうか。


「じゃあここからは自由行動ってことにして、お昼になったら売店集合ってことにしないかな?」

「そうだね。時雨さんの提案に賛成ってことで」

「そうしよー! 十二時頃でいいですかね?」

「そうだな」


 先輩である時雨さんと音羽さん。それから橋本が中心となって今後の見通しが決められて言った。


 ウォータースライダー。噴水プール。深水プール。個々の希望は色々と出てきたので、あまり大人数での行動にはならなそうだ。


 さて解散。意見のあったもの同士で固まりつつあるんだが、俺はどうしようか……。

 こういう時、結構悩んでしまうのが俺なんだよ。飲食店のメニューとは、五分格闘しない時なんかないくらいに。たとえ行く前にこれと決めていても、他の物に目移りしてしまって結局悩むやつ。

 って考えている時に、誰かが俺の左手首を掴んでいた。


「なぁー架谷。向こうの方にゴムボート乗れるやつあんだけど、そっち行かねぇか?」

「ボートか。そんなんあるんだ」

「中学の時に友人らと行ったんだ。結構楽しかったぞ」

「へぇー」


 堂口からのお誘いだった。ここに行こうとはまだ決めていなかったし、そのボートとやらも気になるところ。


「ねぇ祐真君ー。向こうで私と一緒に遊ぼーよー」

「あ、文乃さん……‼」


 それならそっちに行こうとしたら今度、空いた右腕に文乃さんが抱きついてくる。

 両手に花。ではなく両腕に女の子……。悪い気はしないが、俺を挟んで二人で言い争いが怒るのは必然であった。



「夢咲先輩。悪いですけど最初に誘ったのは私の方なんですから、ここは身を引いて頂けると」

「あら~。面白い冗談を言うのねー。私がそう簡単に諦めると思っているのかしら〜?」

「思ってないからこそですよー」

「ほぉほー」

「……」


 俺がなんか言っても解決しそうにない。こうして両腕を掴まれている以上は逃げるという手段も使えないし、仮にそれが出来たとしてもあとが怖いというもの。

 ここは助け舟を……


「よっ! モテるやつは辛いもんだなー!」

「頑張れよー架谷ー」

「他人事見たくからかってるんじゃねぇー!」


 拓弥と虎太郎に関してはもう俺を助ける気ゼロ。


「架谷くーん。誘われたんだからちゃんと相手しないとダメだよー」

「祐真さん、えっと……ご武運を」


 励ましてくれてんのか。それとも別の意味か。橋本と凛の真意は知れず。


「そいじゃあ。俺らウォータースライダー行ってくっから」

「私もそっち行くよー」

「では私も……」


 二人は凛と橋本を伴って離れていってしまう。

 なら他の人らって思ったら、既に居なくなってるし。

 あとここにいるのは俺と堂口、それから文乃さんの三人だけとなった。


「ならこうしましょう夢咲先輩。向こうに五十メートルプールがあるんですよ。そこで勝負と行こうじゃないですか。勝った方が架谷を好きにしていいってことにしましょう」

「あらあら。私に勝負を挑むなんて、度胸あるのね」

「これでも運動部に所属してましてね。体力には自信あるんすよ、夢咲先輩」

「私だって、これでも自信はある方よ」


 おい。勝手に賞品が俺にされてるけど、俺に許可のひとつ、取っちゃいねぇでしょうが。この人らの場合、そんなこと微塵も考えちゃいないと思う。

 堂口は陸上だから言い分はわからんくもない。てかよくよく考えりゃ中々えぐいなコイツは。文化部相手にこんな勝負を持ちかけてくるあたりが。

 でもまぁ。夢咲さんも体力ならありそう。別の意味で、深い意味で。


「そのでかいおもりが邪魔じゃないんですか? 夢咲先輩?」

「そっちこそ、先輩を弄んでいると痛い目見るわよ? その体でサーフボードでもすればいいのかしら?」

「なら私はあんたを浮き輪代わりに……」


 おい。もうただのドロドロな言い争いになってるぞ。なんだ人間サーフボードって。



「それじゃあ決闘と行こうじゃないですか夢咲先輩。覚悟しておいて下さいよ?」

「それはそっちでしょう? 私も甘く見られたものねー」

「ということで」

「立会人、そして目玉商品として。ついてこい架谷」


 俺をもの扱いするんじゃない。そんな一言は表に出さずに、ズルズルと二人に引っ張られていった。




「悪くないだろこういうの」

「見てると楽しそうだな」


 勝負はシンプルに。どちらが先に端まで泳ぎきれるかというもの。結果は僅差で堂口の勝利となった。体力自慢を自負しているだけあって、言葉通りと言ったところか。文乃さんもいい泳ぎしてたけどな。

 ということで堂口のご要望であった水流プールの方に今はいるわけだ。諦めきれなかった文乃さんも一緒にいる訳だが。


「お前も乗るか?」

「やめとく」

「いいじゃねーか」

「なら私の方に一緒に乗らない?」

「一人用ですよね?」


 こうして流れに身を任せるのも楽しそうなもんだ。ゆっくりとできるって言うならそれは最高なんだがな。


 和解したにしたって、結局二人を相手しなきゃならんのは変わっていないんで。俺自身、のんびりとはできない。自分用にボート借りてもよかったなって今更ながらに思う。


 二人のどちらかのボート借りればいいだろってなりそうだけど、そうなると自分のを貸すって言ってまた言い争いが起きそうな気がする。せっかく羽を伸ばしに来たんだから、悩みなく楽しませて欲しいと思う。なのでそれはご勘弁願いたい。

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