プール日和
七月二十七日。本日は兼ねてより決めていた、皆でプールに遊びに行く日だ。
現在、八時二十五分。駅からプールまでの夏季臨時バスが九時に出るので、その十五分前に集合ってことになってはいるが……
「流石に早すぎましたかね」
「別にいいよ。遅いよりかはいいし」
東口のバスターミナル近くのベンチに座って待ってはいるが、まだ誰も来てはいない。どうやら一番乗りだったようだ。
でも電車通学組のことを考えればすぐに誰かしらは来ると思う。
「おーい架谷ー」
「凛ちゃーん」
って思っていたらすぐだった。向こうの方から俺らのことを呼ぶ声が聞こえてくる。この声だと……虎太郎と橋本か。
「やっほー」
「早いな」
橋本は右肩とへその出た服に下はホットパンツ。水着程ではないものの、十分に露出の多い服装していた。
虎太郎はシンプルな白Tシャツに黒の短パンと涼し気な装い。
それからもう一人。
「おはようございます。音羽さん」
「おはよう。今日はよろしくね」
オカ研の音羽さんも一緒だった。聞けば松任方面からの同じ電車に乗ってきたとの事。
今回はオカ研の方達とも行くことになっている。計十二名の大所帯ではあるが、その分楽しいだろうと橋本や堂口は言うのだ。
人が多い分、色々と大変なことにはなりそうだが。
「他はまだ来てないのか?」
「いいやまだだ」
「じゃああとは、神奈ちゃんと奥村くんと…他のオカ研の人達?」
「になるな」
堂口は駅よりプールの方が近いので直接そっちに向かうとの事。黒羽も直接向かうと言っていたそうなんだが……。
あれ? 黒羽の家ってどこなんだ? この前凛が行ったことあるみたいなこと言っていたけど……だったら家とか学園からはそんなに遠くないはず。
高校生の足だと行ける範囲限られてくるし、そっから目的地まで結構距離あるぞおい。
あの……まさかと思いますけど黒羽さん……自分で飛んでいきました? 正体バレますよあなた。
まぁ黒羽は賢いから、その辺は大丈夫だと思う。
集団行動の苦手な彼女のこと故なのか。あまり考えたくはないが、いやいや付き合っているのではなかろうかと心配になる。……がその不安もすぐにはなくなった。
なんだかんだパッと見の表情とか言動だとあれこれ言っているが、橋本に行きたいんでしょ? って聞かれた瞬間に一気に顔赤くなってたし。
回り回って、行きたいってことなんだろう。
約束の時間まではあと十分か。そろそろ残りのメンツも来る頃合いだろう。
とか思っていたら来たようだ。声ですぐに分かる。
「ゆーうーまーくーん!」
その人は駅のコンコースから出てくると、すぐさま俺の名前を呼びながらこちらに走ってくる。一緒にいた二人を置き去りにして。
向かってきたその人に対して、俺はスっと左に避けた。
「むぅー。なんで避けるのー」
「今くっつかれると熱いので」
「私の愛情表現がぁ………」
学園じゃいつもやってる事なんだよなぁ……ただ今回は制服ではなく私服なんで、受けるイメージとか印象は変わってくる。
今日の文乃さんは涼し気なワンピースを着ていた。橋本みたいな露出度バリバリな格好ではなかった。
別に期待はしていない。種族という先入観から、そんな私服着てくるんだろうかと思ってしまうのだ。
「文乃は相変わらずだなー」
「らしいと言えばそうなるが」
「そんな架谷の奴が羨ましいですよ」
「一緒だったのか拓弥」
文乃さんの他、豊田さんと時雨さんの三人だけかと思ったら、拓弥も一緒にいたようだ。
「ちょうどオカ研の人達がコンコースから出てきたところに鉢合わせって感じだな。もう全員来たのか」
「駅集合組だと、あとは神奈ちゃんだけだよ」
「おおそっか」
これで残るは谷内だけだ。谷内は電車通学だったと思うから、ぼちぼち来るだろうか。
「今日は誘ってくれてありがとねー桐華ちゃん」
「いえいえ。せっかくの機会ですから、ありのままさらけ出して楽しみましょう!」
「いやー持つべきはやっぱ友って言うもんだよなー。今日は楽しくなりそうだ」
「そりゃどうも……」
拓弥にべしべしと背中を叩かれる。そりゃこれだけ女の子いてこれからプール行くってなったら、年相応の思春期男子としては楽しみだろう。
実際俺もそうなわけだし。提案した橋本には感謝せねばな。
「てか朝だってのに、人沢山いるよなー」
「そうそう。西口のバスターミナル、人いっぱいだもん!」
「朝はいつもあんな感じだよー。学生にサラリーマンに。片町通るバスとかどれも行列で……」
「そう考えると、架谷とか夢咲さん達徒歩組が羨ましいわー」
「「「わかるわー」」」
交通機関利用組からの共感の一言が飛んだ。
新幹線が通ってから、本当に人が増えたと思う。休日、時々駅に行くことはあるがとにかく人がたくさんだ。
それだけここは生命線って訳。通勤通学にバスや電車を使う人にとっては、多くの人がここを利用するのだ。
特にここ数年、外国人が増えたと思う。白人を初めとして黒人、時々ってか稀に中東系も目撃する。駅の近く、バスに乗ればすぐに行ける観光地も多く、それだけ人が集まっているってことだ。
「いいよなーちょっと寝坊しても取り乱さなくてもいいし、時間気にしなくてもいいし」
「いや……。近くにあるからって理由で高校決めた訳じゃないし」
「んだよー贅沢だなー」
「ごめん何言ってるかよく分からない」
「あの……」
「皆いいよなー。学園から部屋近くて」
「そこは仕方ないだろ一心。てかお前はそんな遠くはないだろ。普段は自転車なんだろ」
「そうだけどね……」
「いやいや。自転車も楽じゃないっすよ今みたいな夏場なんて汗びっしょりですから」
「えっと……」
あれ? なんか合間合間で誰かの声が。
「えっと。桐華……」
「んーって……あ」
いつの間にか、谷内も到着していました。こんだけやってりゃ話しかけづらいか。
「ごめん……」
「なんか声、かけづらくて……」
「で、でも全員来たってことで」
「そ、そうだね!それじゃあ行こうか!」
「だから朝どれだけ大変か……」
「おい。続きは後でやれ」
でもってバスに揺られること約四十分。目的地のプールに到着しました。




