卓上戦争
今置かれた状況について。改めて説明しようと思うんだ。と言っても、一言で済むことなんだが。
来客の四人は全員中に上がってもらって、今はリビングにてお茶を飲んでいます。
今更家に上げておいてこんな事言うのも癪ってものなんだろうがあえて言わせてもらおう。
なんでこうしたんだろう俺。
そうでもしないと治まらなかったからか? 凛がそう言ったからなのか? それともあの四人が粘るからか?
考えどその答えは見つかりません。かと言って。今さら追い出す訳にもいかず。まぁ適当に時間が経ったところでこの人たちも自然とご帰宅ムードにはなると思う。うちは民宿でも、外国人観光客に流行りのシェアハウスでもないからな。
今日これからのことについて、色々と考えなければならないことも多々あるが、ひとつひとつ片付けていくことにしよう。順序を追って。
「それで……橋本ら三人についてはもうご理解しているが……文乃さんは一体全体どうして俺の家に」
「だってー。祐真君に会いたいなーって。ただ純粋にそう思ったからだよー。他に理由なんていらないでしょー」
「……」
いつも通りすぎて、もう驚かなくなってしまった自分が怖い。もうこの人らしいってのを受け入れてしまってんだよ。
「ところで文乃さん。さっきいきなり突っ込んで来ましたけど、万が一玄関の戸が開いてなかったらどうするつもりだったんですか」
「その辺は大丈夫。家の前来た時には戸が開いてたことは分かっていたから!」
「……」
あ。ダメだ。反論できねぇ。ってかこの人の勢いに呑まれちゃうんだよ完全に。
以前夜這いされたからこの人俺の家の場所は知ってんだよな。調べた経緯、方法についてはこの場で明かさない方がいいってか、誤魔化しようもないと思うんだ。
「バカ兄ぃ……私知らない……バカ兄に彼女がいたとか聞いたことない……」
急に妹がダークネスに。話す機会がなかったとはいえな……。そこまで雰囲気変わるものですか。
「私と祐真君が中学の時からの付き合いなんだよー」
今は向かいに座ってるから身体を寄せてくることはないんだけど、テーブルに頬杖つきながらドヤ顔でアピールしてくる。那菜にではなく、どういうわけだか俺に向かって。
「それじゃあ早速……私たちどうしたらいいかな? 架谷くん?」
仕切るのあんたかい。ということは口に出さず。とりあえず母さんから頼まれていたことについて、頭の中で再確認。
あのメモ書きで頼まれていたのは庭の草むしりと家の掃除。場所についてはトイレと風呂とその他適宜。
草むしりとトイレ掃除については午前中のうちに完了。あとは風呂場と他、家の中の掃除。
それから夕飯に関しても考えなければならない。
母からの給付金の関係もあるので、家で自炊することになりそうだが……そのことまで言うと今のこの人たちの場合、夜まで居座ることになりそうだな。このことは伏せておこうかな。
「と言ってもやることは家の掃除くらいで、そこまで人手のいるようなことでもないんだよ」
「でもでも七人だよ七人。これだけいたら早く終わると思うんだ!」
「人手があることにメリットは多いだろうが、過剰な人員というのはかえって効率を落とすことになる」
「なんで急にビジネスマンっぽい口調になるんだこいつ…」
「変で結構だ」
「でしたら……手分けしませんか?役割を」
「役割って……そこまでするほどのもんでもないだろ」
ここで凜が待ったをかけてきた。手分けをしなきゃならんもんでもないし、時間制で交代でやるってか?
そう思った俺だが、ここで危惧していたことが。
「実はお夕飯についても考えなくてはならなかったので……何人かで買い出しに行こうかなーっと思いまして」
「……」
凛のその発言を聞いてか、来客らがピタリと一時停止。そして俺らの方に視線を集め始める。
はい。延長コース入りましたぁー。追加料金は……状況次第で。
「そうか! なら是非とも!」
「凛ちゃんお料理得意って聞いたから、いい機会!学ばせてもらいたい!」
「私も」
「凛さん、料理本当に上手なんです。お母さんも自分より遥かに上手だって褒めてましたから」
「私はー……祐真君と食事ができるなら……」
「……」
俺が独自に立てたプラン継続にあたり大きな支障が発生したことを確認。早急に立て直すか、あるいはプランの修正を打診する。
いくらか選択肢はあったけど、凛の発言によってそれはひとつしか残らなくなってしまった。
これから家の掃除する人らと買出し班に分かれて行動。その後はこの七人で今晩の食卓を囲む。
ほぼ決定事項となってしまった。
女子陣営があぁも盛り上がってしまった以上、そうする以外の選択など許されていないのだ。
シナリオゲーって言うよりはRPGにあるやつだよ。選択肢あるように見えて、間違ったやつ選んだら「もう一度考えたまえ」って言われて選択肢を選び直す場面に戻されるやつだよこれ!
仕方ない。ここは大人しく、彼女らの願望を尊重することにしようかな。
「わかった、ならそうしよう。家の掃除する班と買出し班で分けよう」
一呼吸置いてから新プランってか段取りを説明する。
「掃除班四人で残り三人は買出し班。掃除班の方には家の中に詳しい俺と那菜が入って指示を出すよ。凛は買出しの方に行って貰えないか?」
「わかりました。祐真さんがそうおっしゃるのでしたら」
「それで私らは?」
堂口がそう聞いてきたので、続きを言う。
「来客の四人には相談してもらってそれぞれ二人ずつ入って欲しいんだ掃除班か買出し班かで」
「「‼」」「「……‼」」
って俺が言ったら、四人の眼光が一気に鋭くなった。そして我こそはと口を開くのだ。
「私掃除班になろうかな!」
「私が掃除をする」
「私も」
「祐真君と近くにいられる方が私はいいなー」
第一希望は全員掃除。そしたら目がバチバチいってる。
「前に明莉ちゃんって、掃除苦手って言ってなかったかなー?」
「苦手だからこそ、この機会に鍛え直そうって事だよ」
「修業だったら自分の部屋でしてなさいよー。そういうことは私に任せておけばいいの」
「先輩だからって譲れないものはありますからね!」
「私も‼」
「全員引くつもりはないみたいだねー……」
「考えが甘いんですよー桐華……」
「先輩の優しさとかはないからねーとことん抵抗するよー」
「「「……」」」
割り振りを決めるだけなのに、三十分を要した。




