それでも相変わらず
オカ研部室での淫らな騒動。何とか全校の知ることとなる前に解決したことは、不幸中の幸いであった。
あとは……何とか理性を保つことが出来た自分自身を褒めてやりたい。
どうしてあの場に凛が現れたのかって?何でも、帰る時に俺の下駄箱から嗅いだこともない香水の匂いがしたことに違和感を感じたそうだ。
九尾ってのは狐だから、鼻がいいんだな。どうにもその匂い、嗅いだ人を酔いしれさせて、使用者の元に誘い込む効果があるらしい。なんとも恐ろしいもんだ。
凛と黒羽は、オカ研の人達のことを見張っていたようで、活動場所に遊びに行くという口実で探りを入れていたらしい。
それで……あの時にもう分かってしまったことなんだけど、夢咲さんの正体は人間ではなく、凛や黒羽と似た異形のものであると言う。
サキュバスという悪魔だそうで、あそこの部員もみな種類は違えど悪魔だと言うのだ。
黒羽の時もそうだったけど、俺たち人間にはパッと見じゃ分からないって言うのは悩ましいっていうか、末恐ろしいもんだと思うわけ。
正体が人間でなかったとはいえ、俺はあの人を否定するようなことはしない。もちろんオカ研の他の部員達も。
そうしてしまったら、俺は夢咲さんや豊田さん達だけじゃなくて、凛や黒羽のことでさえ否定することになってしまうからな。
正体を知った時はそりゃあ驚いたけど、あの人が夢咲文乃であることには変わらない。見る目が変わってしまうだろうけど、今後の付き合いについては変わらないと思う。
そんな騒動もようやく?落ち着いた土曜の朝のこと。
「ん……んん……?」
俺の部屋のベット。こんな狭かったっけ? それに熱を感じるっていうか……
そんな違和感を感じながら今日は目が覚めた。いつもと違うって言うのは明らかだ。でも風邪ひいたとかそんなんじゃないんだ。俺の気の所為だったらいいんだけど……。
いや……。気の所為じゃあない! 眠気が覚めてきて意識がはっきりしてきたから分かるけど、布団じゃない何かが俺の足に絡まってるし、右腕にはなんかもにょもにょしたものが接触してるし!
あとは……
「すー……すー……」
なんか……右の方から誰かの寝息が聞こえてくるんだけど……どういうことですか? 俺一人で寝てたはずだよな?
吐息がかかってこそばしい。そしていい匂いがする。
おそるおそーる首を右に回してみた。ら――――
「むにゃあ……祐真くーん」
「……」
下着だけ身につけた状態で気持ちよさそうに寝ている夢咲さんがいましたとさ。
「ダメだよぉ……そんなことしたらぁ……」
「……?!」
考えなきゃ行けないことは山ほどある。
なんで俺は夢咲さんと同衾してるんだ、連絡先しか教えてないのになんでこの人俺の家の場所知ってんだ、いつ俺のベットに潜り込みやがった、そもそも昨日は普通に帰って来たはずだ、お泊まりするとかそんな話は一切合切聞いてないわけだ。
まぁ……まとめるとだ。……なにがあったんだぁぁぁぁ!!
待て待ておいおい!!
うつ伏せの状態のまま、空いた左手で勢いよく布団をひっぺがして俺の足を確認してみる。
夢咲さんの色白な脚と黒い尻尾が巻きついている。服が脱がされてないことは幸いか。
起き上がろうと……何とか動こうにも……動けねぇ……。夢咲さんの脚と尻尾とおっぱいでがっちりロックされて、ここから身動きすら取れねぇ……。
無理にひっぺがすわけにもいかねぇけど……。かと言ってこのままだと色々まずい。今後の人生とか! 俺の理性とか! アレとか!
「ん……。ふみゅう……」
「……あ」
すぐ横でわちゃわちゃ動いていたらさすがにあの人も起きるか。目がゆっくりと開くと、俺にニッコリとぽわーんとした笑顔を見せた。
こんなの見せられると面と向かって怒れないから悔しい……。
「あはぁ……おはよぉー……祐真君♡」
「……」
言葉も出ねぇ。言葉にならねぇ。
てか今叫んでみろ。那菜や凛が俺の部屋に駆けつけてきて、この光景を目撃された時には、もう色んな意味で恥ずかしいし人生終わるし、むしろ自分で終わらせたいとも考えてしまうわ!
「何を……してんですか……」
「決まってるでしょー……いっしょに寝たいなーって思っちゃったからぁ……祐真君のお部屋に忍び込んじゃったぁ…」
「……変なこと。してないですよね?」
いや、そんな格好で同衾してる時点でもう十分アウトなんだけどさ。
「何ーって……夜中にこーっそり祐真君の部屋に忍び込んでー。それから祐真君の可愛い寝顔を拝借させてもらってー。あとはこうして朝まで一緒のベットで寝てたんだよー」
「……」
「祐真君の寝顔。可愛いから待ち受けにしちゃった♪」
「……」
正体バレて落ち込むってか……反省の色すら何一つ感じられねぇぇ!!
凛も黒羽も色々言っていて、ベタな騒ぎになるようなことは控えて欲しいってことはこの人聞いていたとは思うけど、その後いきなりこれはレベルが高すぎるでしょおぉぉぉ!!
「なんで俺の家の場所を……」
「私のこと忘れちゃったのー。祐真君の匂い……いや気配を探すなんて、下級悪魔を手懐けるくらいに容易いこと」
「そんなことのために正体バレるようなことするのはお控え願えますかね!」
「いいもーん。祐真君相手だったら私は全然気にしないもん」
「いやいや問題はそこじゃないですからね! あとそろそろ離してもらえますか!」
まだ布団をすっ飛ばしただけだから、夢咲さんが俺の身体に抱きついていることには変わらない。そろそろ起きなければいかんのに。
「えー。もっとぬくぬくしていたいのにー。それに女の子に乱暴するのはよくないと思うなー」
「本人の了解も得ずにこんなことしてるあなたには言われたくないですねぇ! 上目遣いで頼んでもダメなものはダメですから!」
「祐真君のいけずぅ……」
「あなたが良くとも俺の方がヤバいんですって!」
その後。夢咲さんはぶーぶーふてくされながらも魔法陣使って自分の家へと帰っていきましたとさ。
家の人にバレなかったからまだ良かったよ。でもそういうことはもう勘弁願いたい。
でも……。本音を言うのなら、決して悪い感じはしないのだ。むしろまたされたいと思ってしまうくらいの。
これもまた思春期の男の性と言うやつなのか。それともサキュバスの恐ろしいところと言うものだろうか。




