秘密の会合
あの騒動からは随分と日が経過し、六月を迎えた。個性的で癖のある友人らと共に、架谷祐真は良くも悪くも中身の濃い高校生活を送っていた。
前期中間試験も終えた後の土曜日の午後のこと。
ファミレスにて、ドリンクを囲って座る七人。
神妙な面持ちの者。これから何が起こるのかと不安そうな顔をする者。興味に満ちた顔をする者。その表情は実に様々である。
何やら会議が始まろうとしているところであった……。
「……」
「あーあー。コホン。さてと諸君ら。試験も終わってすぐの慌ただしい中、本日は急な招集に応じて頂いたことに感謝する。本日の司会進行を務めさせてもらう堂口明莉だ」
「参謀役。橋本桐華です」
「えっと……参考人の…狐村凛です」
「では早速だが……」
「なぁ堂口」
これから始まろうとしたところに、待ったをかけるものが一人。この会議の数少ない男子の参加者である吉島虎太郎だ。
「どうしたどうした」
「聞いていいか? なんで俺らまでこの女子の会議に参加させられてんだ?」
「今聞くか虎太郎……」
「だって女子にお昼をご一緒させられたら、男にとって断る理由なんざあると思うか?!」
「……ないな」「だろぉ!」
男子二人。本来の質問の内容関係なしで意気投合していた。
それを見てか。はたまた今の状況を理解出来ずにいるのか。ため息をつく女子が一人。
「そもそも私は参加を断ったはずなんですが……」
「明莉のいつものやつ。抗う術なし」
「最初からそう認めてしまってるんですか貴女は……」
「ごめんね京子ちゃん……」
ドリンクバーで入れてきたオレンジジュースを一口飲んでから、奥村が堂口に聞いた。
「それで話し合うんだ? テストの反省会か?」
「悪いが思い返したくない。なので今日このあとその話題を持ち込むのは一切合切NGとする」
「あぁ。俺もできることなら思い返したくないわ。数Ⅰの最後とちって解ききれなかったし」
「アレ難しかったしなー。俺全く分からなかったからまっさらで出したわ」
「私は古典が怪しい」
「私はー……多分大丈夫……だと思いたい」
「今回は英語に気合を入れました!」
奥村の一言を皮切りに、今回の中間試験についての話題になった。皆あれは出来た、これが解けなかった、ここが不安だなどと。
ずっとこういうやり取りにここに痺れをきかせたのか、黙り込んでた堂口がようやく口を開いた。
「おいおいこれ以上その話は無しだ。以降その話題を口にしたやつはドリンクバーパシリの刑に処する。なお私怨を混ぜてゲテモノを錬成して持ってくるやつも同罪に処する」
「ペナルティがなんか微妙だなおい……」
「で。それじゃないならなんだって言うんだもしかしてだが、架谷がここにいない理由と関係あるのか?」
この場にいるのは男子が奥村と吉島。女子は凛、黒羽、橋本、谷内、そして堂口の五人で計七人。
この会議の場には架谷の姿はない。
「祐真さんでしたら、「先約があるから」とだけ私は聞いてますが……」
「理解が早いようで助かるよ奥村君。そうだ。今回集まってもらったのは架谷についてのことだ」
「架谷くんの?」
今回の議題のテーマは、今この場には居ないという架谷のことであった。
「ところであの……祐真さんの……ですか?」
「あぁそうだ」
「てかあいつに怪しまれるんじゃないのか? いくら先約があるにしたって、自分省いて俺らが集まってるって知ったら、疑いこそするんじゃないのか?」
「心配すんな。あいつはこの会議のことは一切知らないし、ちゃーんと手は打ってあるから」
「何したんだ架谷に」
「さっき凛が言ってたろ。先約があるって。あいつにはなぁ……」
ほぼ同刻。街の中にある広い公園にて。
「はーい祐真くーん。あ〜ん」
「大丈夫ですって文乃さん。自分で食べられますから」
箸で掴んだ唐揚げを、架谷に差し出す夢咲。彼女はにこやかな顔をしているが、対して架谷は苦笑いをしていた。
「私の気持ちを無下にしないでよー。私がしたくてやっているんだからさー」
「わかり……ました」
架谷は渋々了承しつつ、運んできた唐揚げを自らの口に納めた。
「美味しい……。冷めてるのにジューシーだ」
「祐真君に食べて欲しくて、腕によりをかけて作ってきたんだー。その唐揚げにはひと工夫してあるからー、冷めても美味しいんだよー」
「あ、ありがとうございます」
「それじゃあ次は……あっ。これにしようかなー」
「そんなに急がなくてもいいですからゆっくり食べましょう。俺は逃げませんって」
「じゃあ今度はぁ……祐真君に食べさせて貰いたいなー」
「いっ、いちいちくっつかないでくださぁーい!」
「「「…………」」」
「とまぁ夢咲さんに言伝しておいて、架谷を放課後制服デートにご案内してもらってるってわけだ。意識は完全にそっちに向けられるから、まずあいつは私らのことを考える暇さえないだろう」
「あの野郎……やっぱりそこまでいってるってのか……」
「てかデートって……。私は二人きりなんてシチュほとんどないのに!」
「あの時は親睦会のお店探ししてたからね」
「てかそういうの望んでるあれっすか……」
「あの……このまま茶番が続くなら私帰ってもいいで……」
「ダメだ」
黒羽の要請を、堂口はぶった斬るように速攻で却下。
「京子。明莉には叶わない。強引すぎて」
「タチ悪いだけですよね……」
かれこれ本題とは違う話を進めていたうちに、各々が注文した料理が運ばれてきた。
「まぁさておきだ。食べながらでも話を始めようじゃあないか」
「どうなる事やら……」




