表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/221

022話

改訂版です



「はぁ」


 本当に溜め息しか出ない。

 しかし魔法力が増大したのなら確かめなきゃいけない事がある。

 ワタシは意を決すると、魔法分身体である尻尾を集めてみた。

 するとあら不思議!

 尻尾だと思ってたモノが巨大な玉になってましたよ!?

 と言うか、球状に集めないと収拾が尽かない状態に成ってました。

 感覚的な大きさは直径約十フィート(約3m)もあるし、コレはちょっと尋常じゃ無いですわ。


「これ、どうしたらイイんだろう?」


 魔法力を安定させる為には一時でもコレと一体化して制御する事が必要だ。

 でも、こんな状態のモノと一体化するのはかなり怖い。


「「「キュッ」」」


 現実逃避から周りのクーちゃんズに目をやると、彼らが一斉に鳴いて返事をしてくれた。

 うむ。可愛い!

 ちょっと和んだ。

 クーちゃんズの声援を受けてググッと両手を握り締める。

 良し。取り敢えずは目を瞑って、試しにチャレンジしてみますか!


「ぶっへぇぇぇっ!」


 しかし一体化した直後、意識が吹っ飛びそうになって速攻で離脱。

 何なのこの超絶的な魔法力は!?

 制御どころか、意識が飛ばない様にするのもムリっぽいわ。


「コレが青の魔法力ってヤツですか……」


 呆然としながら再び座り込む。

 魔法力判定は下から順に、赤、橙、黄、緑、青、水色の六種類の光が出る形で表され、これらにはそれぞれに約五倍の差がある。

 赤が一般人のおよそ五倍見当(士族や貴族はこの判定を出せないと自動的に一般人に落ちる)で、橙が二十五倍位で普通の貴族とか士族くらい。

 その上の黄色は百二十五倍、緑は六百倍、青は三千倍と進み、水色は一万五千倍だ。

 勿論、実際にはそんなハッキリと色は別れず、黄緑とか緑黄(当然緑黄の方が上)と言った光色になるから、正式な判定では上級になるに従って上がって行く光量と合わせて細かい判定がなされる。

 さっきの判定で出た真緑な光色は誤魔化しようの無い緑級ド真ん中。

 尻尾無しでは三割程度しか出ない事を考えれば、自分の今の魔法力は間違い無く青級に掛かってる筈だ。

 理論上有り得ないと言われる水色級はともかく、その下の青級だって人間が持てる魔法力の限界と言われてるんだからシャレにならない。


「総合的に考えると、やっぱ詰んでるよな」


 魂が抜け出ちゃう様な溜め息と共に呟く。

 だってワタシはこの青級にまつわるトンデモない話を聞いた事がある。

 それは世に数少ない青級の魔法力を持つヒト達の中でも別格として有名なシルバニアと言う国の現女王様の話だ。

 彼女は生まれてからほとんど外に出た事が無いらしい。

 何故かと言えば、一人で巨大な城内の魔法仕掛けを全部動かしてるからで、逆にそんな大仕掛けで魔法力を常時使ってないと魔力症が出ちゃうんだそうだ。

 そもそも王族は遺伝的に強力な魔法力を持つ人が多いものの、こんなヒト(無論、人じゃなくてヒトだ)は彼女くらいで、何人か居る他の青級のヒト達とも一線を画すと聞く。

 もう笑っちゃうレベルだよね。

 でも青級の魔法力を制御すると言うのはそう言う事だ。

 つまり自分も青級になった以上は何か大仕掛けでもない限り、残り寿命もあと僅かって感じになっちゃうのですよ。


「クーン」


 寄って来てたクーちゃんズの一人(?)を抱き締めながら、心を落ち着けて考える。

 確かに魔法力が増大しちゃった今の自分は危機的状況にあるものの、今現在は未だ幼女化以外の魔力症の症状が出ていないし、特有の苦しさも全く感じられない。

 これは恐らく、尻尾改め大玉とクーちゃんズのお陰で現状は何とかバランスが取れていると言う事なんじゃないかな?

 となれば、まだそれ程アセる状況じゃ無いだろう。

 取り敢えず命の危機は回避出来てる様だし、他人に見られさえしなければ、このまま暫くクーちゃんズと暮らしながら事態の打開策を探る余裕はある。

 うん。

 ちゃんと状況を把握してみれば、まだ完全に詰んでるとは言えないね。


「しかし魔法力安定の為の大規模な仕掛けねぇ……」


 改めて一息吐きながら腕を組んで考え込むと、その落ち着きが良かったのか、脳裏に一つのアイデアが浮かんだ。

 即座に立ち上がり、そのまま狩り小屋の扉を開けて外へ出る。

 靴なんかもうサンダルでイイやと、インベントリから出したヤツを突っかけたワタシは一気に樹上の狩り小屋から飛び降りて地面に降り立った。

 そしてししょーから貰った彼の元愛剣で「カタナ」と呼ばれる片刃剣をインベントリから出す。

 神代の昔のその又昔、何処か遠くの国で考案された製法で作るこの片刃剣は本来なら扱いが凄く難しい。

 でもこのししょーの元愛剣は凄くズルいブツだから、深い事は考えなくてイイんだよね。

 刃の長さも二フィート半(約76cm)なので、今の自分の体格でも何とか使える筈だ。

 何回か素振りをして感覚を確かめると、ワタシはヨシッと気合を入れながら一本の大きな樹の前に立った。


「さて、それじゃ実験と行きたい所なんだけど……」


 では行くかと構えた瞬間に、嫌ぁな思い出が頭をよぎってちょっとゲッソリ。

 さっき浮かんだアイデアを実現する為にはある魔法剣技が必須だ。

 それは世に「影斬」と呼ばれる、魔法で作る剣で斬ったり、それを飛ばしたりする剣技で、ワタシが読んでる各種冒険小説の主人公達も使う有名な剣技なんだけど、そのせいか世間ではもっぱら空想の産物と言われてるんだよね。

 だって魔法力を物質化するのは本当に難易度の高い魔法なので、そう言われるのも当然なのですよ。

 でもそんな事を知らなかった昔の自分は物語の主人公達と同じ剣技を使いたくて、弟子入りした当初、何でも出来そうなししょーに「見せてくれ」と頼んで頼んで頼み込んじゃったのだ。

 馬鹿と言うか無知と言うか、我が事ながら呆れ果てるわ。

 しかしその時のししょーは気分でも良かったのか、何故か渋々ながらも影斬ソレをやって見せてくれた。


『ししょー凄いです! 影斬って本当にあったのですね!?』

『当たり前だっ、馬鹿者め!』


 その時、そんな会話と共に見せて貰った影斬ソレはたったの一度だけだったとは言え、強烈に印象に残った。

 何しろ「憧れの剣技」だったからね。

 でもそのお陰で、それが剣の魔法分身体を作る様な魔法ワザだと言う事が判っちゃって、見た直後に何か凄く納得出来ちゃったのですよ。

 だから見た後に真似をして何度か剣を振ったら出来ちゃった。

 その時はせいぜいが剣をちょっと延ばしたり、それを飛ばしたりって程度だったけどさ。

 ワタシは元々クーちゃんやピーちゃんを実体化させてるから、ある程度のコツが判ってるので、その延長線上の感覚でやったらイケちゃったって感じだ。

 だと言うのに、それを見てたししょーの驚き様が凄かった。


『お主、ある種の天才であろうとは思っておったが、まさかこれ程とは……』


 とか呟いたと思ったら、絶句して立ち竦んじゃったのですよ!

 いやー、あの時はフォローが大変だった。

 まさか「いつもコボルトとか実体化させてるんで余裕です!」なんて本当の事は言えないし、誤魔化すのに凄く難儀したわ。


「おっと」


 イカンイカン。

 過去の黒歴史はきっちり埋めておかないと、ちょっとした事で表に這い出て来ちゃうから気を付けないとねっ。

 そんなワケでこの影斬、バカみたいに魔法力を喰うものの、何でもスパスパ切れるこのズルいカタナ剣で使うと凄まじい威力を出しちゃう。

 大木だろうが大岩だろうが、もうスッパスパですよ。

 まあホントの事を言っちゃえばこの体格ではもう愛用のバスタードソードは使えないので、コレを使うしか手が無いんだよな。

 コレ以外だと死蔵してる初期に使ってた片手剣位しか使えそうなブツが無いからねぇ……。


「いやそうじゃなくて!」


 何だかダウナーな方へと流れ易くなってる意識を声を出す事でググッと繋ぎ止める。

 うむ。カタナ剣は使えそうだし、これからが本番だ。

 ワタシは影斬の魔法を発動してカタナ剣の刀身を五フィート(約152cm)位に延ばすと、ふうっと息を吐いて体勢を整えた。

 そして目の前の大木に横一線で斬り付ける!


 スパッ!


 おおう。

 目論見通り一撃で木を両断する事が出来ましたよ!

 速攻で前蹴りをブチ込み、木を倒してストレージもどきに突っ込む。

 うんみゅ。コレなら行けそうだ。

 一本切ったらすぐ次ねって感じで、ワタシは周辺の大木を切って切って切り捲くって、ガンガンとストレージもどきに突っ込んだ。

 そう。

 これこそが実験なのですよ。

 このストレージもどきは今までどんだけモノをブチ込んでも一杯になった事が無い。

 それは多分、自分の魔法力が続く限り入るのだろうと当たりを付けてたから、コレに馬鹿みたいな量を突っ込めば、魔法力を常時消費出来るんじゃないかと考えたのだ。


「むう。これはどうやら当たり臭いですな」


 大木を突っ込む度に魔法力が少しずつ吸われて行く感じがするので、実験はどうやら旨く行きそうな気配だ。

 ついでにやって来るゴブだのオークだのもバンバン斬り捨てる。

 斬ったそばから何時の間にか一緒に外に出てたクーちゃんズがわらわらと寄って魔石を抜いてくれるから、その後の死体もバンバン放り込む。

 まあ、オークの血抜きはするけども。

 しかし唯の作業かと思ってたこの実験もやってみると何だか楽しい。

 巻き藁斬りより難しいし、何だかこの体格でやる剣技の訓練をやってる感じになって来ちゃったよ。


「よっしゃ。ドンドンやったるでぇ!」


 意外な楽しさに気を良くしたワタシは次から次へと木々を切って切って切り捲った。




◇◇◇◇◇◇◇




 どの位その作業を続けたのか、気が付くと辺り一面切り株だらけの野っ原になってて、一匹ずつ減って行ったクーちゃんズも、もう最後の一匹が足元でクーンとお別れの挨拶をしてた。


「ありがとう、クーちゃん!」


 ワタシが影斬の魔法を解除しながらお礼を言うと、最後のクーちゃんも地面に溶ける様にして居なくなった。

 はぁ、疲れた。

 でも心地の良い疲れだわ。

 なんかもう色々な事がフッ切れたと言うか、心がスッキリしたと言うか、そんな感じで気持ちがイイ。

 やっぱり何か悩んだ時には、身体を動かすに限るよね!

 何時の間にやら日が暮れ掛かってるし、お腹も減って来ちゃったから、そろそろ狩り小屋に入って何か食べるかな。


「おっと。その前に例の大玉との一体化チャレンジをやらなくちゃダメか……」


 しかしまだ早急に目処を付けなきゃいけない事を思い出して、ちょっとガッカリ。

 幾ら余剰魔法力の処理に目処が付いたと言っても、そもそもの制御が出来なければ何時暴走するか判らないからね。

 それに食後にあのチャレンジをやるのは絶対に避けたい。

 何か食べた後でチャレンジしたら、マジで吐いちゃいそうだしさ。

 そう考えたワタシは善は急げと、切り株野っ原の只中に一本だけ残った狩り小屋のある樹を駆け上った。

 カタナ剣をしまって狭い小屋のど真ん中に座り、両手で頬をバシッっと叩いて気合を入れる。


「良し!」


 気合と共に大玉と化した尻尾を集め、目を瞑ってもう一度一体化を試みた。


「ぐへぇっ!」


 あまりのキツさに妙な声が出た。

 でも余剰魔法力の処理が出来てる今なら、前よりずっとイケる可能性は高い。


「ぬぬにゅぅぅぅ!」


 となれば、ここはとにかく気合で押し通しせば何とかなる筈だ。

 更なる妙な声が出ても気にしない!


「どりゃぁぁぁっ!」


 ぬうぅっ、何とか成った!

 と言うか、無理やり何とかしちゃった感じだけど結果オーライだよね。


「むっ?」


 でも何とか魔法力を押さえ込む事に成功して喜びと共に目を開けたら、何故かまたマッパになってて、更に座ってた場所が焦げてた。

 しかも小屋中に煙と焦げ臭い匂いが充満しちゃってますよ。

 精神を集中して頑張ってる間に様々な影響が出て、色々燃えちゃったみたいですな。


「ゲッホゲホ……」


 煙を吸って咳き込みながらも煙を外に出す為に風系魔法を起動。

 すると途端に凄まじい空気の流れが生まれて小屋内がエラい事に!

 うわっ。

 魔法力が全開だったのを忘れてたよっ。


 どっかーん!


 更に精霊魔法もどきまで起動しちゃったせいか、煙りどころか屋根までスッ飛んじゃって呆然とする。


「ああ、もうっ。なんでこうワタシの人生って必ずオチが付くのかな!?」


 はぁ。

 絶叫しちゃったものの、自分で自分にツッこんでもしょうが無い。

 ワタシは野天になっちゃった小屋内で溜め息を吐くと、また生活用具ストレージから着られそうな衣類を漁った。

 まあイイや。

 色々と問題アリだけど、取り敢えずの危機は去ったんだしね。

 幸いにも今夜は晴れだし、季節も初夏で寒くも無い。

 明日には残ったこの樹もブッた切って小屋ごとストレージもどきに収納だから、此処で過ごす最後の夜をゆっくり過ごすのもイイだろう。

 胸に新たなサラシを巻きながら、ワタシは漸く訪れそうな新生活を想った。


本日もこの辺までにいたしとうございます。

読んで頂いた方、ありがとう御座いました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ