第22章:1981年という1年(の最終章)
・・・『美絵子ちゃん』という女の子は、とても魅力的でしたが、なにか、とっても神秘的な子でもありました。
処女作『たからもの』の第78章で、K小学校こと、川崎小学校が取り壊された日に、高田良作くんの部屋で、遠山里香ちゃんが彼に言った言葉をおぼえておいででしょうか・・・?
「きっと、あの子の生まれ持った魅力よね。目の前で良作君とあの子が、私の前を駆けて通り過ぎているのに、もう、なにかなつかしい気分になったのよ。」
・・・実は、そうなんです。
美絵子ちゃんですね・・・とっても、「なつかしかった」んですよ。
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コレは、説明するのが難しいんですけれども、おそらくですね・・・
この時期すでに、美絵子ちゃんがやがて自分の前からいなくなってしまい、あとから彼女を求めてさまよい、ひたすら当時の「なつかしい記憶」を辿るようになる・・・そのことを、心で、カラダで、ぼんやりと予見できていたからじゃないですかね。
そう・・・。
ぼくは、リアルタイムで美絵子ちゃんが家の中にいるというのに、そろばん塾の公民館のあたりで夕方遊んでいるときにも、美絵子ちゃんの家の裏手で、土手の上の線路を眺めながら、なんとなくぶらついていたときにも、いずれ自分を襲ってくる「なつかしさ」ってヤツを、もうこのとき感じていたんだ。
・・・あれは、実に不思議な感覚でした。
まっくらになって、藤長さんという、美絵子ちゃんの近所に住んでいたおじいさんが焚き火をしているとき、ぼくは、彼といっしょにメラメラとゆらめく炎をぼんやりと見つめながら、そこから100mほどしか離れていないところの家の中に美絵子ちゃんが、いままさに過ごしているというのに・・・
「もう、なつかしかった」んです。
その感覚は・・・
実は、いまも変わりません。




