019
翌日の学校、いつもの休み時間。
陰キャラと言われる俺は、いつも通り聖也の机に来ていた。
そんな聖也は、黒い携帯電話を持っていた。
慣れた指裁きで、携帯電話を操作していた。
「いいよ、遊びに行くんだろう」
話は、昨日の葵が遊びに行く事を告げていた。
聖也も、それに関しては了承してくれた。
「さすが聖也っ!」
「そういえば、涼真は携帯持たないの?」
「うー、うーん。親が持たしてくれなくて……」
この時代に戻った俺は、親とも相談をしていた。
しかし、高校生が携帯を持つことを親に反対されてしまった。
一週目の高校時代も、携帯を持たない生活をしていたし……この時代の学生の普及率は今ほど高くない。
「それなら、仕方ない。バイトで稼ぐとか?」
「それもあるけどな」
だけど、バイトをするつもりは無かった。
金欠ではあるモノの、やりたいバイトも無かった。
それに、現実の社会では普通に働いているし。
社会の厳しさを、既に自分の中で理解していた。
そもそも一周目の俺は、バイとしていないから。
「で、葵とは仲良くできるのか?」
「問題ないよ、葵にもメール送ったから。
ボクらの止まった時を、ようやく動かすことができる。
むしろ、ボクは感謝をしているんだ。涼真」
「当然のことを、したまでだよ。聖也」
「で、どこ行くの?」
「うーん、そういえば行き先は聞いていないな」
「葵のことだから、行き当たりばったりだと思うよ。
望月さんの事は、ボクもよくわからないけど」
聖也は、携帯をポケットにしまっていた。
顔を上げて、真顔で俺の方を見ていた。
「でも、涼真は望月さんの事が好きなんだよね?」
「まあ、な。確かにかわいいし」
「そうだな、ボクも好きだよ。顔もかわいいし、声もかわいい。
性格もきっといいんだろうな……って思うよ」
「はは、そうか」性格に関しては、正直微妙だ。
赤ん坊の望月と接しているからよく分かるが、周りが認めるほどの清純派ではないような気がしてきた。
最も、JK望月と直に話をしたことはないのでどんな性格かは実際のところ知らない。
それでも、周りの男子は一様に望月が清純派のイメージが強いようだ。
「まあ、悪い子じゃ無いと思うけど」
「話したことあるの?」
「ねえよ!」
「そっか、そうだよね。ボクらには縁遠いし。
半径一メートル以内に近づくのも、恐れ多い存在だからね」
「ああ」俺は否定しなかった。
彼女が放つ、明るい清純派のオーラには陰キャラを遠ざける何かがあった。
「ところで、知っている?」
「ん?」
「最近近所で起っている、猫の悪戯のこと」
それは聖也から聞こえた、胸くそ悪いあの事件のことだった。