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君の声  作者: ひなた
7.終わりへと
19/21

日本の夜明けぜよ

 大政奉還? ははは、笑わせないでもらいたい。

 そのレベルに幕府は見る見る力を取り戻していった。

「まだ幕府も戦える。おいどんたちに倒幕は無理ってことでごわすな」

「せめて鎖国は止めるべきぜよ。日本の夜明けぜよ」

 まず吉宗は話を聞こうとした。

 穏便にどうしても済みそうになく、戦いもやむなしというときにのみ刀を抜き、圧倒的な力の差を見せつけ、改めて話を聞いた。

 そして諸地域で、意見を集めていった。


「日本の夜明けだそうですけど、いかがなさいます?」

 波がざっぱーんとする崖に立つ、土佐のぜよを眺めながら、舞姫は可愛らしく首を傾げた。

「参勤交代と鎖国、これらが今となっては、必要のないものなのだろう。遥か昔には、まだ従わない大名も多かったことだろうから、キリシタンも数多くいたことだろうから、必要だったのかもしれない。しかし法というのは、時代に合わせて変えていかなければ、どんな良法も悪法となってしまうのだ」

 悪人を捻じ伏せて全国を旅する、黄門様的なことを終えた将軍様吉宗は、辿り着いた果ての土佐で呟いた。

 真面目にいっていたと思えば、突然に吉宗らしいところがきてしまう。

 失礼かつ阿保な発言が続いてしまうのだから、本当に残念な男である。

「そもそも土佐なんて、既に外国みたいなものじゃん。こんなもんだよ、外国だって。怖くないだろ」

 声など聞こえるはずもないのに、地獄耳で届いてしまったのだろうか。

 吉宗の衝撃発言に、ぜよっと高知国の大王様も振り向いてしまった。

 まだざっぱーんをしている途中だったのに関わらず、だ。

「鎖国なら、四国とも貿易しちゃ駄目だろ。なんか、北海道よりも四国の方が、海の向こうだなーって気がするし。四国って外国だと思う」

 島根がLOVEならば、四国も近いものだと思うけれど。

 とにかく吉宗の発言の数々は、どれも怒りを買う、と思ったが土佐の人は優しいぜよ。笑って流してくれたようだった。

 ちなみに作者は長曾我部×毛利の親就が好きなので、その辺りの地方は好きである。

 意見が対立したり、ときに喧嘩をしたりして、笑い合って泣き合って、なんだかんだあって、吉宗は倒幕派のみなさんとずっ友になれたらしい。

 江戸の方でも順調なようで、慶喜が良い腹黒っぷり……じゃなくて、良い人っぷりを魅せていた。

 将軍様慶喜が一肌脱いだ(文字通り)みたいな状態で人々を魅せていた。


 九州とか、中国・四国だとか、そちら方面へと向かった吉宗&舞姫。江戸に戻った慶喜。

 双方ともそれなりに成功を収めたということで、三人は京都で集合することとなった。実に四カ月ぶりのことである。

 本来ならば、そろそろ新撰組がヤバいかなって頃であるが、京都は余裕で安全である。

「お久しぶりです。そして、ありがとうございました、お疲れ様でした。本当に勝利なさったのですね。まさか頭のおかしさと同じくらい強い、というのが真実だとは、とても思いませんでしたよ……」

 会って早々、褒めているのか貶しているのかな発言であった。

 慶喜は満面の笑みを浮かべているので、きっと褒めているのだと思う。

「お久しぶりです。ね、お強い方だと申したでしょう? それにしても驚きました。将軍様というのは、どうしても脱ぎたい生き物なのですか?」

 同じく笑顔の舞姫は、間違えなく貶している。

 この人の将軍へ対する忠誠心や、憧れの心というのは他のだれよりも大きなものであり、最初から少しも変わっていない。

 だというのに、結構なことをいうものだ。

「久しぶりだな。二人とも、俺の強さに惚れてくれたのか。そんなに褒めるな、照れるだろ」

 そして吉宗はたぶん、馬鹿なだけだろう。

 本人が褒められたのだと思ったようだから、それで終わるのが最も平和的かな。

 とにかく急いで片付けるべき議題はなんとかなったが、まだやるべきことはいくらでも残っている。

 だからこそ、今は京都に集まらなければならなかったのだ。

「外国との関わり方、これが何よりも大切になることだろうな」

 席に着いて、最初に議題を掲示したのは吉宗であった。

 これが舞姫の尻を揉みながらでなければ、どんなに良かったことか。

「少なくとも、藩に勝手なことはさせられません。しかし幕府を通して、ということでしたら、許しても良いのでしょうか」

 意見をするのは慶喜である。

 これが家来たちに胸を揉まれながらでなければ、どんなに良かったことか。なぜこの数カ月で、こうなってしまったのか、こうした道しか選べなかったのか。

 将軍なんてそんなもんらしいので、次には舞姫が口を開く。

「明日の朝もう一度、会議はやり直すとしませんか? 夜は獣だらけのようですから」

 尻を揉まれながらだったのだから、仕方がないだろう。

 こうして会議は終わった。

 だって夜だよ。それに、京都に戻って来て、初の夜。敵地にも近い場所にいたときとは違う、安全が用意された二人きりの夜。

 楽しみたいじゃないの。ねぇ?

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