どっちもどっち?
ツッコまざるを得ないだろ作戦が失敗に終わり、馬鹿……じゃなくて、吉宗は次はどうしようかと考える。
そんなことを考えるなら、倒幕運動の対策を真面目に考えろという話だ。
「あの方はああ見えてもお強いですし、吉宗様がいらっしゃれば、力で捻じ伏せることもできましょう。それで幕府の力を見せつけ、倒幕は不可能なのだと、諦めて頂けるのではないでしょうか?」
信用を取り戻そうというのは、着々と小さなことから進めているから、時期に効果を見せ始めることだろう。
それで幕府を支えてくれる人はきっと増える。
しかし、それだけではいけない。
ちゃんと力を見せなければ、最強であるという認識を持たせなければ、命令に従ってもらえないからだ。
逆にいえば、力さえ見せれば、相手は嫌でも従うことになるのだ。
「相手は藩ですよ。国に対して藩が勝負を挑むのは、何様だと思いますが、藩に対して一人で挑むのは、いくら強くとも頭が狂ったとしか思えないのですが……」
こいつ、実は腹黒かっ?! そう思うほど穏やかな笑みで、慶喜は頭が狂ったなどという。
普通に考えればそう思えるだろうが、表現の仕方がまた別にあったことだろう。
「頭が狂っているのは事実ですが、強いのもまた事実です。軍隊を一人で滅ぼすことくらいは容易でしょう。無双で、レべマ使い込みキャラを使用して、難易度難しいで序盤ステージをプレイするくらい容易です」
細かく指定したからには、本当にそれくらい容易なのだろう。
舞姫はその例えが、どうして慶喜に伝わると思えたのだか、彼も大概意味不明だと思うが。
ちなみに無双は、戦国よりも三国派だ。
「普段の頭のおかしさと同じくらい強い、そういえばわかります?」
伝わっていないのがちゃんとわかった舞姫は、例えを変えた。
「そんなにですか?」
「二人揃って俺をなんだと思ってやがる!」
声を盗み聞いていた吉宗の声。は届かなーい。
舞姫は最初から、慶喜もかなり前から、吉宗遮断モードに切り替えていた。
だから叫んだとしても無意味。防音じゃないのに防音状態だ。
「そんなにもお強いのなら、任せてみるのも悪くありません。わたしは優しさを見せて、さも素晴らしい将軍かのように演じます。ですから強さという、わたしには演じられないものをお願い致します」
話が纏まったところで、二人が部屋から出ると、その瞬間に吉宗が飛び付いた。
何かと思えば、左手では舞姫の口に指を入れ、右手では慶喜の首を絞めていた。
二人とも呼吸困難で死ぬわ阿保!
そう思ったのだが、苦しさにジタバタしつつ、見事に舞姫が吉宗を蹴り飛ばす。
「どうやら勝手に人の会話をお聞きだったご様子ですから、説明はしなくてもわかっておりますよね? おえっ、うがいをしたいので、だれかご案内頂けませんか?」
倒れる吉宗に冷たい視線を向けて、舞姫は去っていってしまう。
「お任せしましたからね。江戸で、京で、直接長州や薩摩まで行ってしまっても構いません。さあ、行ってらっしゃい」
続いて慶喜は去っていく。
だけでなくて彼は、吉宗を城の外まで送って差し上げるようにと命令した。
親切なようでいて、追いだしただけである。
そりゃまあ、首を絞められているから仕方がないかな。
「お一人で向かうと、行く先々で迷惑になりそうですから、お供してあげましょう」
優しいのは、ツンデレしながらでも舞姫が一緒に行ってあげること。
冷たいようでもあるけれど、慎重な慶喜が重要な役割を任せるほど、信頼を寄せたということ。
「ありがとう。お前が隣にいてくれたら、ヤル気も上がるし、かっこいいとこ見せようと思って、更に強くなれるかも」
「惚れてしまうくらい、魅力的に戦うのですよ。勝利の暁には、口吸いくらいは許しますから」
恥ずかしそうにしながらも、舞姫は美しい微笑みで告げた。
その誘惑には耐えかねて、勝手に吉宗は唇を奪ってしまうわけであるが。
「なっ、何を、何をしているのですか。勝利したらといっているのに、聞いてなかったんですかっ?」
顔を真っ赤にして、文句をいうけれど恥ずかしさが先で、自然と舞姫は早歩きになる。
本気で愛してくれている、吉宗の本気の顔にときめいてしまったのだ。
だからこそ恥ずかしさでいっぱいになり、瞳に涙まで溜めてしまう。
だって唇を重ねただけなのに、舞姫は興奮を示してしまっていたから。
「ごめんって。謝るから、これからはもっと頑張って我慢するから、怒らないでって」
慌てて後を追って吉宗が肩を掴めば、振り向いた舞姫の涙が目に入る。
「え、泣いて……、本当にごめん」
怒っていると思ったので、泣いているというのは予想外で、吉宗は戸惑いつつも瞳に溜まった涙を拭ってやる。
自分の行為がそれほど舞姫を傷付けたと思ったらしい。
言葉を探すが正解がわからず、ただ舞姫の頬を大きな手で包み、優しく撫でていた。
「戦いで惚れさせてっていいましたのに」
やっとそこで、吉宗は舞姫のオトコの部分が反応していることに気付く。
喜びで自分も同じ形で応えながらも、顔だけは紳士的な笑みを浮かべる。
「俺が背負っていくよ。そんな薄着じゃ、女にはないはずのもの、周りにも感じられちゃうから」
「でもくっついていては、治まるものも治まりません……。その、できるだけ、刺激しないよう負ぶってもらえますか?」
本当に恥ずかしそうに、舞姫は吉宗に背負われた。
最後が百年以上前なものだから、どうやら二人とも溜まっているらしい。




