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第12話:オルディアの救出と事後評価

 ガレナ王国軍に事情を説明したあと、アレンたちは瞬間移動の魔法を使い、オルディアに転移した。

 転移前にガレナ王国軍の指揮官は、常識的な範囲の休息や補給を提案したが、アレンは「急いでいるから」という理由で、すべて断った。

 その早急な決断に対し、俺は勇者パーティの無謀さや無計画性を感じた。

 しかし、オルディア到着後の活躍を見ていると、アレンたちの選択は妥当に思えた。


 休息や補給を行わなくとも、勇者たちは充分な戦力だった。

 食料も水も移動しながら入手したし、休息はそもそも不要だった。

 エンジュの説明によると、勇者が保有する神の加護の一つとして、『勇者の周囲で勇者と共に戦う者は、疲労と眠気から解放される』というものがあるらしい。

 かなりチートな効果だと思ったが、魔王も魔族に対して似た効果を与えるそうだから、この辺はバランスをとっているのだろう。


 戦場においても、勇者パーティの存在感は圧倒的だった。

 ギャリックが剣を振ればケンタウロスに似た魔族が消し飛び、エリザが放出した炎や氷の弾はガーゴイルタイプの魔族に致命傷を与えた。

 アレンも充分に強かったが、やはり周囲を巻き込む効果が白眉だった。

 勇者の姿を目にした人間は、その後二十四時間にわたり、士気と身体能力を限界まで高められるそうだ。


 ギャリックの入れ知恵で、アレンたち三人は意図的に多くの戦場を巡った。

 何匹も馬を乗り換え、約二日間でオルディアの半分の地域を走破した。

 到着した先では休むことなく、多くの人間にその身を晒した。

 士気と身体能力を高めたオルディア王国軍は、それまでと比較にならないほど強くなり、各地で勝利を収め始めた。

 次第に魔族は劣勢となり、海岸部まで押し返された結果、全軍で撤退することとなった。

 どうやら、『突然の勇者の出現』という想定外の事態に対し、無駄な消耗は控えるべきという合理的な判断を下したようだった。


 いずれにせよ、こうしてオルディアの危機は救われたのだ。


 瞬間移動から三日目に、アレンたちは瞬間移動のペナルティに従い、三年間の眠りについた。

 まるで突然意識を失ったかのように、三人ともバタリと倒れたのだ。

 事前に話を聞いていたオルディア王家は、アレンたち三人の身体を城に運び入れ、地下深くの部屋に安置した。

 次に目覚めるときまで、三人の身の安全を確保する目的だった。


 オルディアの人々は再び戻った平和を喜び、勇者に感謝し、神様に感謝した。

 しばらく、オルディアの信仰心は高止まりし、エンジュもセラフィムも他の天使たちも満足した様子だった。

 だから俺だけなのだ。

 俺だけが満足できなかった。


 魔族の一部が殺され、撤退する様子を見ているとき、俺の頭の中では一つの条文が浮かび上がった。

 具体的には、日本国憲法の第15条第2項の「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」だ。


 神様の仕事が、世界のバランスをとることであれば、神は『公務員』に近く、人間と魔族と天使の三種は『全体』に該当するのではないか?

 人間という一部に奉仕した俺は、神様の代行者として間違っていたのではないか?

 そんな風に考えたとき、エンジュに言われた言葉が別の意味を持ち始めた。


「なぜあなたは、人間のためにそこまでするのですか?」


 人間は大事だ。

 その気持ちはこれからも変わらないだろう。

 ただ、『人間を救うために魔族を殺す』という判断も、神様という役職においては、たぶん違うような気がした。


 いまはなんの解決策もないが、いつか人間と魔族と天使の三種で完璧な調和を目指さなければいけない。


 ……そんな風に俺は思った。

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