獣王国に到着!
吹雪の中……僕達を乗せた馬車は順調に山を登っていく。魔法による暖房効果で馬の歩くペースもより軽やかになっていた。
「そろそろかな〜」
「レベッカ、何がそろそろなの?」
レベッカが急に緊張感を漂わせるものだから気になって聞いてみることにした。
「魔獣スノーベアが出るんよ……大漁に…」
「大漁って……こっちの大量だろ!?」
スノーベアは極寒の地にのみ生息していてる。
凶暴な性格と肉食に加えて頑丈な体は剣を通さないらしい。別名……血まみれベアちゃん?
別名はさて置き……そんなのが住処にしているとなると安全には進めないじゃないよね……?
「レベッカ様、スノーベア数体が現れました!」
気になって見てみると僕は驚愕した……想像していた見た目を超えていたからだ。
「なんて……カワイイんだ!?」
血まみれベアちゃん……ベアちゃんだった。
「見た目に騙されたらアカンよ!」
「カワイイだけのマスコットじゃないの?」
小熊の大きさで目はまん丸のクリクリ……歩き方もヨチヨチな感じを見せられ……何を警戒しろと?
「愛くるしい表情を見せながら近づいて……」
「近づいて……ゴクリ」
話をしていると勇敢な兵士がスノーベアに近づいていくと手前で足を止めた。
「アカン……あの子はもう……」
「助けに行かないと!」
「ノル…行ったらイカンよ。見てみ……」
レベッカが彼を指指すとスノーベアを抱き抱えながら戯れていた。だが、彼はスノーベアの爪が原因で血だらけになっていた。
「な、なんだと……」
「恐ろしいやろ。やつらは馬車をあぁやって止めるねん……それで構ってもらう為にポーズを取るんや」
「クッ…僕も触ってみたい……できることならお持ち帰りしたい……モフモフなでなでしたい!」
「それは禁忌やで?戻れへんごとなるで?」
スノーベアの見た目に反して爪と牙は鋭くて戯れていても危険かもしれない……でもこの可愛さに僕は……人類は抗えれるのか?否……無理!
僕は馬車から降りてスノーベアに近づく、するとルシアとエリーナも降りてきて側で見守っていた。
「カワイイですわ……」
「カワイイ……です♡」
「だよね?カワイイんだよ!」
その結果……2時間も足止めしてしまった。
「さよなら……ベアちゃん。僕は忘れないよ!」
「メチャクチャ大袈裟やな〜ノル」
「だって〜生き物好きなんだもん……」
(ノルがまさか動物好きだとはうかつだったかもしれへん……引き離すのに苦労したわー)
「目的忘れたらアカンよ?ほら、獣王国は直ぐやからさっさと向かいましょ!」
「うん、分かってるよ」
「ノル…帰りにまた愛でましょう♡」
「私も…触りたいです……ノル様」
二人とも上機嫌になったところで僕達の本来の目的でもある獣王国へ馬車を進めた。
あれから30分ほどで獣王国の入り口に辿り着くと門兵とレベッカが話をしていた。
「ほな、父上に言伝を頼んだで?」
「はい、レベッカ様!国王に伝えて参ります!」
門兵の一人を伝令役として国王に訪問のことを伝えたらしい。心なしかレベッカから緊張感が薄らいでいる様に見えた。
だって自分の国なんだからそうなるか!
僕らは案内されるまま獣王国を歩いて国王が待つ王城へと向かったのだった。