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プロローグ

初投稿です。文章に拙い部分もあるかと思いますが、お手柔らかにお願いします。

 暗い夜道を一人の少女が歩いていた。制服を身に着け肩にカバンをかけている少女は、帰宅の途中らしい。

 周囲に誰もいないことを確認した少女は、少しばかり大きくため息をついた。


(もっと早く終わると思っていたんですけど・・・)


 帰宅が遅くなった原因———居残りでの勉強会が、ちらほらと星が見え始める時間まで続くとは思ってもみなかった少女は、わずかに体を震わせ足を止めた。


(さすがにこの時間は寒いですね・・・)


 時刻は7時を過ぎており、冷たい風が少女の髪をかすかに揺らしていた。

 昼は過ごしやすいくらいに暖かかったのだが、今は熱を発しない月に不満を感じる程度には気温が下がっていた。


(こんなことなら、ちゃんと勉強しておけばよかったですね)


 今まで(いく)()となく考えたことをまた繰り返しながら、少女は再び歩き始めた。

 考えていてもできないから放課後に居残りをすることになったわけなのだ。それに、面倒くさがりの自分には「ちゃんと勉強」などできないだろうとも思っていた。


(それにしても暗いですね・・・。こんなに街灯って少なかったんですね)


 しなくてもいい発見をしたものだ、と少女は思う。普段はもっと明るい時間に帰るし、一度家に入ったらほとんど外に出ることはないので、家から学校までの道がこんなに暗くなるとは知らなかったのである。

 しかし、現在は大通りから離れた道を歩いているため、反対側はもう少し明るいのかもしれない、と赤い縁の眼鏡を押し上げながら少女は考えた。


(明日からは懐中電灯でもカバンの中に入れておきましょうかね)


 今日の勉強会は完全に不意打ちだった。またいつこのようなことがあるかわからないし、そうなるとまた暗い道を歩かなければならない。

 いい大きさの懐中電灯がないか、帰ったら探してみようと思った少女は、勉強会に参加しなくてもいいように普段から勉強をするという結論は除外してしまったようだった。


(もっと月明かりがあればよかったんですけどね)


 学校を出た時にはいくつかの星が見えていた空も、少し前から雲が出てきて月を隠してしまっていた。隙間から星でも見えないものか、と空を見上げてみても、これから雨でも降らせるつもりなのか厚い雲が完全に空を覆ってしまっていた。

 今日は運がない日なんだな、と思いながら視線を前に戻した少女は、道の先を見て足を止めた。



 先に見える空間の一部分だけが、(もや)がかかったように黒くぼやけていたのである。



 自分の目がおかしくなったのかと思い視線を外してみても、その空間から動かなかった。目の異常ではなかったことに安心するも、つまりその黒い何かがそこにあるものだと証明してしまったわけで安心などできない状況だと気付いた。

 靄の向こう側の景色を見ようと思ってどれだけ目を凝らしても、見えるはずの景色は見えてこなかった。

 靄の中にはなぜか赤い二つの光が浮いているのだが、周囲を照らしている様子はない。むしろ、それのせいで周囲を暗くしてしまっているようにも感じた。


(何でしょうか、あれは・・・)


 初めて見る、と少女は思った。自然現象に興味があるわけでもなく、好奇心旺盛というわけでもない少女でも、目の前の光景には多少の興味を覚えた。

 しかし、それだけである。興奮して写真を撮るようなこともなく、誰かに電話して自分が見ているものを伝えるようなこともしない。

 今一番問題なのは、自分が通ろうとしている道にそれがあることであり、かつそれが見たことも聞いたこともないものである以上安全なのか危険なのかという判断ができないでいることだった。


(あれは()けたほうがいいんですかね)


 適当にそう考えた少女は、別の道から帰宅するために止めた足を動かし始めた。

 余計なことには首を突っ込まない。それが見たことも聞いたこともないものならなおさらだ、と考えた少女はすぐにまた足を止めることになった。

 近くから声が聞こえた気がするのだ。

 もちろん周囲に人の気配などなく、辺りを見回してみても誰もいない。気のせいだろうか、と思い再び歩き出そうとすると、今度は先程よりもはっきりと声が聞こえた。


「ここだよ、ここ。もっと下」


 その言葉の通りに視線を下げると、少女の足元に一匹の蛇がいた。が、そこにいたのは明らかに普通の蛇ではなかった。

 体が黒い。一部分だけではなく、全身が黒で覆われてしまっていた。それなのに周囲が暗い現在の状況でもしっかりとその姿を確認することができる。

 そして、通常なら目があるのであろう位置からは赤い光を発していたのである。その二つの光は自分のほうを見ているはずなのに、まったく眩しくない。

 前方に見える靄をそのまま蛇の形にしたみたいだ。そんなことを考えながら、自分を呼び止めたのであろう黒い蛇を見る少女は、ひどく無表情だった。

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