↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

9.『日没』



 ポーッ⋯⋯と。

 遠い笛の音が、灯台守たちが集う部屋に響いた。


 銀髪の青年が身を翻し、窓のような形で設けられた軽石の戸を開ける。


 ポーッと、もう一度。


 今度はより鮮明に届いた笛の音に、灯台守たちは立ち上がり、一斉にフードを下ろした。

 それを確認し、一つ頷くと、銀髪の青年は石笛を取り出す。


 ピィイ、と。

 吹き鳴らされた笛の音が、灯台にこだました。


 戸の外――内壁と外壁の狭間の、遥か下まで続く薄闇に、笛の音は吸い込まれていく。

 そうして、わずかな静寂の後。

 ポーッと、また一音。その底深くから、笛の音が返って来る。

 銀髪の青年は戸を閉めると、灯台守たちへと向き直った。


「始めてください」


 その一連の動作の間に、灯台守たちは幾つもある柱の突起へと、革紐を結わえ付けていた。

 その端を掴み、等間隔に並んで柱を囲むと、順に一音を唱えていく。


「ダー」


「エル」


「リー」


「ワズ」


「トー」


「メヴ」


「スー」


 隣から隣へ、音を受け渡していくように。

 一際高く、七人の声が重なる。



「「「「「「「ダー」」」」」」」



 揃えた声の余韻が消える頃。分厚い掌が、おもむろに革紐を引いた。



 ―――星は巡りて 陽が沈む

 ―――来たれ 黄昏 星の空



 低音が刻むリズムに合わせて、ゆっくりと歩が進められる。

 革紐がピンと張り⋯⋯ゆっくりと、柱が軋んだ。



 ―――巡れ 我らの星の灯よ

 ―――瞬く星から 露が降る



 六色の歌声がそれを追い掛け、一つに唱和する。

 それぞれの歩みもまた続き、太い柱がじわりと動き出した。



 ―――露を受けて 地は潤い

 ―――輝く星影 夢を見る


 ―――眠れ 我らの星の灯よ

 ―――夜告(よるつ)げ星(ぼし)が沈むまで



 微かに軋みを上げながら、柱が回る。

 その物々しさに慄き、うろうろしている白い幼子に気が付いて。

 手早く距離を詰めた銀髪の青年は、ふわついていた幼子のフードを強く引き下ろした。


「び!?」

「静かに。大丈夫だ、大人しくしていろ」


 腕をばたつかせて離れようとした幼子の背後で、柱が燦然と輝き出す。

 正確に言えば、ずっと七色の光を投げ掛けていた、透明な結晶体が。これまでとは比べものにならない強さで光を放つ。

 押されるように、白い幼子は青年にしがみ付いた。

 銀髪の青年はじっと佇み、ただ一人目隠しで覆った眼で、輝く円柱と、巡る灯台守たちを見つめている。


 繰り返される、唄と、歩み。

 回る柱。

 光は強まり続け、徐々に室温が上がっていく。


 やがて、カチン⋯⋯と何かが噛み合う音がして、円柱の回転が止まった。

 床の跳ね上げ戸が開かれ、灯台守たちが次々に飛び込んでいく。

 きょとんとそれを眺めていた白い幼子は、そちらへ向かう銀髪の青年につられて歩き出した。

 銀髪の青年は下を確認すると、一声かける。


「インディゴ様」

「んお?」


 銀髪の青年は迷わず、白い幼子をつまんで落とした。



「⋯⋯みょー!?!?」



 勿論、下にいた男性がしっかりと受け止めるが。

 憤慨した白い幼子の威嚇の声は、当分止みそうにもなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。