プロローグ・誰も知らない始まりの話
ちょっとSFな裏設定
昔むかしの、ひみつの話。
今はもう、誰も知らない物語。
何万年も前、彼らは違う星からやってきた。
試みられたテラフォーミング。
大気圏が創られ、気温は上昇した。
熱源となったのは、宇宙船の炉。
やがて星内部の氷が溶け出し、星は潤った。
けれどもまだ、彼らは宇宙船を離れられなかった。
太陽のない世界で、植物はほとんど育たない。気温も思うように上がらない。
樹木は無い。
動物がいなかった星に、石油は無い。
植物がいなかった星に、石炭は無い。
水力、風力というささやかなエネルギーを利用しながら、彼らは船の蓄えを切り崩すようにして暮らしていくしかなかった。
原子炉を造る事もできなかった。
不幸な計算違い。
この星には、金属がほとんど無かった。
莫大な労力を使い、鉱脈を枯らしたとしても。
何もかも。
圧倒的に、何もかもが足りない。
水と岩石だけの、冷たい星。
彼らはこの星を捨て、再び決死の旅に出るかの決断を迫られる。
だが、他愛ない遊び⋯⋯この星に降りて初めて彼らに顕れた“色を付ける魔法”が、奇跡をもたらした。
誰かが、“色”が混ぜられる事に気が付いた。
誰かが、混ざった“色”が光を放つと気が付いた。
誰かが、“魔力”は温かいと気が付いた。
混ざり。合わさり。強く、強く、強くなった“色”は、星を照らす光となる。
ささやかな、偽物の太陽。
それでも。
緑の草が、葉を開いた。
小さな木に、花が咲いた。
動物が、虫が、魚が、鳥が、ようやく外に放たれた。
今はもう誰も知らない、この世界の始まり。
ただ再現する術のない故郷の技術だけが、永遠に失われた。
昔むかしの、本当の話。
秘密ひみつの内緒事。
注・本編は日常系異世界ファンタジーです。




