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『異世界はやっぱり異世界だった』

 グレイの家は全く変わっていなかった。だけどグレイ自身は少し元気になっていた。私は少し安心する。

 



「それで、畑を作らないかと?」


 グレイの質問に緊張しながら私は頷く。


 あの後、家の前に立っていた私達はグレイに発見され、アレクを私が紹介した後に家の中へ案内された。

 家族だと言うまでグレイからアレクを警戒してます感が漂っていたから、気を利かせてみたのだ。


 とういうか流石スラムの子供。紹介したからか少し和らいだが、まだ警戒はしてるらしい。

 私だったら知り合いが一緒にいる時点ですぐ家に入れちゃうな。

 私がそんな風に感心していると、一階の食卓に連れて行かれ、向き合うようにして座る事に。

 そこで私がパナセ?とかいうお菓子を渡す渡さないで一悶着あったが、アレクの仲介で四つだけ渡すという事で丸く収まった。まあ元はアレクのものだから、アレクの判断次第なのは当たり前だが。


 で、その後例の件の話も終わり、現在はそれに対する返事を緊張しながら待っている状態である。

  

「一つ質問しても?」


 グレイの言葉に私は頷く。

 アレクは私に任せるスタンスらしく、口出ししてこない。普通なら自分より小さい女の子へ対応を任せるのはどうかと思うが、私の場合は助かる。

 アレクもそれを分かってこの対応をしてそうで少し怖いが。

 

「畑と言っても、土地も働き手もありません。助けてもらった手前、その提案を受け入れたいのですが、この問題点がある限りは無理です。」


 私はグレイの真っ当な意見に少し驚く。

 土地と労働力、この二つは私も危惧していたものだ。だから解決策は持ってきている。

 でも中身大人な私と違って、グレイは見た目まんまの少年。その子が私の提案をしっかり理解して、問題点まで指摘するなんて凄すぎる。

 もしかしなくても、グレイはアレクと同種?というか何で敬語?これ、私も敬語じゃないとだめなの?


 私はそんな事を考えながらも、表情には少しも出さないよう気をつけて話を進める。

 よく考えると、これが一番大変かもしれない。


「そうですね。でもその二つは解決済みです。どちらもアレクくんが用意してくれました。さて、少し場所を移動しましょうか。」


 私がそう言うと、アレクが先に立ち上がる。そして何故か私を抱き上げて歩き出した。


(え?なんで!?what!?)


 さっきまで落ち着いていたはずの私の心は、この一瞬で大混乱だ。

 何時もしないような行動を取るアレクに、頭の中で疑問を浮かべながらも大人しくされるがままになる。


 少し顔をずらして後ろを向くと、グレイは驚いた表情ながらも付いてきているのが確認できた。

 私はアレクに降ろしてくれるよう頼んだが、華麗にスルーされたので諦める事にした。

 いい機会なので、私は今までゆっくりと見ることのなかったスラムを観察する。


 するとやっぱり前世とは違う点をいくつか見つけた。

 まず私が地球のスラムで存在を知っているのはそんなに多くない。しかしそのどれともここは違うように感じる。


 確かに建物こそ倒壊寸前のものも結構あるし、変な匂いも少しする。痩せ細った人達も結構いる。それでも見える範囲にゴミが全くない。それに何より、物乞いがいないのだ。酷いのは人間の様子だけで、衛生環境は良さそうに見える。水路の水も澄んだきれいな色だし。

 他にもある。

 地球のスラムで言うストリートチルドレンというのは、大体が男の子で、地域によっては女の子はほとんどいなかった。

 何故なら犯罪に巻き込まれる確率が高いから、国が保護するか、もしくはいたとしても男装しているのがほとんどだったからだ。しかしここは子供は男女どちらも同じくらいいる。代わりに大人の女性がいない。

 前世では体を売っている女性がスラムにはいると聞いたことがあるのに、ここには大人の女性が一人もいない。不気味だ。


 あと、衛生環境がいいからか、治安も良さそうに見える。犯罪都市特有の暗い雰囲気がないのだ。

 まあこの点に関して言えば、私はスラムなんて記事とかでしか知らないから、本当のスラムの雰囲気なんてものは分からないのだが。


 それでもここが私の知っているスラムとは一線を画しているのは分かる。



 不思議に思ったときは、知っていそうな人に聞くのが一番だ。なので私は今私を抱き上げて歩いているアレクに聞いてみることにした。



 さて、話を聞いてみて分かったことは、前に知ったアレクの勤め先であるスラム自警団によって、ゴミを道に捨てる事は禁止されているらしい。

 あと、女の子は大人(ここでは成人の16歳)になると、スラムを出て行く規則がある。でもここのスラムの女性が、一人で普通の人間の生活とかできるわけないので、大体はスラム自警団の人間、もしくは風の都の住人と所帯を持つ。一部は旅に出る女性もいるが、それは例外らしい。


 これには勿論理由があって、なんでも昔、水路の水が原因で疫病が広まり、それが風の都の首都にまで広がりかけたらしい。だから衛生環境だけは整えた、と。

 それと同じ理由で女性の性売買により、女性にだけ感染する疫病が流行った。経路は飛沫感染とも発覚している。

 なので女性の性売買をなくすために、成人を迎えた女性はスラムを出て行く決まりができた。勿論、成人以下でも性売買をする人は一定数いる。そういう人は見つかれば死刑らしい。


 ちょっと怖いが、仕方ないとも思う。

 というか、前世では性売買で女性だけに流行る病気とか聞いたことないんですけど。しかも飛沫感染って。ありえなさ過ぎて笑っちゃうんですけど。

 


 私は異世界のなんでもあり感にため息をつきたい気持ちになる。まあ実際にしたら、アレクから突っ込まれそうだからしないけど。


 私が頭の片隅でそんな事を考えていると、目的地が見えてきた。

 

 私は今は目の前の問題に取り組もうと、そこで思考を切り替える。


 さて、これで成功すればいいのだけれど。そんな事を考えながら。



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