17話 日常から非日常へ
side佐藤太樹
僕は、佐藤太樹。歳は16歳で容姿も普通で成績も普通。どこにでもいる高校生だ。
ただ、いわゆるオタクと言われる人種だ。
アニメやライトノベルや漫画が好きで、よく読んでいる。
クラスでは、オタクだということを隠している。
学校では、普通に過ごしている。友達と時々アニメの話をしたりするが、少しかじっただけのような話に合わせている。
学校にいつも通り、ホームルームが始まる前に到着する。
友達の1人が手をあげて挨拶してくる。
「おっはよ〜太樹〜」
「おはよ!健太」
挨拶をし、自分の席に行く。
周りを見ると、グループが何個かある。
クラスの中心人物でイケメンであり成績も上位に入る、一之瀬光輝。楽しく笑い合っている。
クラスで、いや、学校で二大美少女と言われている、橋川香奈と篠宮雫。
「そう言えば昨日のテレビ見たか?」
「ん?あ〜お笑いのやつか!あのコンビ面白いよなぁ!はははは!」
大声で笑っているのは、大西健。友達の1人だ。
そうだね〜と適当に相槌を打ちながら、話半分で聞いていると、ホームルームのチャイムが鳴った。
いつもは、すぐに先生が来て「静か」にと注意をするはずだ。
なのに、5分経ってもこない。
「おい!た〜い〜が〜く〜ん〜。先生呼んでこいよ!」
「え……う、うん……」
不良から命じられて先生を呼びに行けと言われてビビりながらも呼びに行こうとする。
大雅が扉を開けようと、手をかけた。
が、びくともしない。
「おいおい何やってんだよっ」
不良の東郷和樹が笑いながら、何やっているのか聞いている。
実際に、たいして力を入れずに開けれる扉を本気になって開けているだけでも笑い者だろう。
でも、それが俺には、わざとやっているようには見えない。
「あ、開かないんだっ……」
「あ?何言ってんの?そんなわけねぇだろ」
「そうだ!遊んでんじゃねぇぞ」
そうだそうだと言いながら周りも笑っている。
なのに何故か僕は、嫌な予感がしてきた。
その時、床が光り教室を包んだ。
光が収まり目を開けると、目の前に綺麗な、そう、今まで見たこともないような女性がいた。
お姫様としか言いようがない雰囲気だ。
「はぁはぁ、ついに成功しました!勇者様この世界をお救いください!」
「おいおい!ここはどこなんだよ!?」
その言葉に周りを見ると、石造りで日本とは思えない装飾だ。それに、何故今まで気づかなかったとしか思えないが、鎧を着て剣を腰に差した騎士と言える人たちが僕たちを囲んでいる。
「とりあえず話を聞いていただけませんか?」
息も絶え絶えになっていたお姫様?から話を聞くように言われる。
それまで騒いでいたみんなが静かになり、やはり、一之瀬光輝が前に一歩出て、口を開いた。
「えーと、とりあえず。俺は、一之瀬光輝と言います。ここはどこでしょうか?」
「そうですよね。私は、ブランド王国の第一王女、アイリス・アル・フィスト・ブラントと言います。ここは、あなた方から見ると異世界ということになります」
「はあ?そんなことあるわけないだろっ!」
「そんなことより家に帰せよ!!」
口々に「家に帰せ!」だったり、「ここはどこだっ」とかうるさく叫んでいる。
僕は、最初は戸惑ったがよくある、ライトノベルなどにある異世界転生だと思った。いや、異世界転移になるのか。その中でもクラスの集団転移となると勇者召喚くらいだとすぐに分かった。
小さくガッツポーズをし、光輝が話しているのを聞く。
「では、お父様、陛下から詳しくお話があります」
「儂は、ラルド・アル・フィスト・ブランド、国王だ。まずは、無理やり召喚したことを詫びよう。すまなかった」
そう言い頭を下げた。そのことに周りの兵士がどよめいた。
「それより俺たちは帰れるのか?」
「すまない。帰すことはできないんだ」
聞きたくなかった答えを聞き、ほぼ全員が嘆いた。ほぼというのは、一部の男子が喜んでいたからだ。
「君たちを召喚するほど切羽詰まっていたことを理解してほしい。我々では対処出来ない問題なのだ。この世界には、魔物というモンスターがいる。そして、魔族がいてその王が魔王と呼ばれている。魔王の圧倒的な力の前に我々は無力だった。そのために、勇者召喚をするしかなかった。勇者には、強いスキルに成長速度が速い」
「俺たちには特別な力があると?」
「そういうことだ。ステータスと言って欲しい。それで、自分のステータスが分かる」
そう言われ、「ステータス」と呟いた。